25万人のダブルケア(育児&介護)を救う? 改正「介護休業法」を使いこなす条件
改正育児・介護休業法4月開始! 子育て世代が知っておくべき基礎知識#3〜介護休業法の基本のキ編〜
2022.04.27
一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事:和氣 美枝
育児と介護が重なり合う「ダブルケア」。晩婚化や出産年齢の高齢化を背景に、ダブルケアに直面する人が今後、ますます増えることが予測されています。
“パパ育休”が取得しやすく大改正されたと話題の「育児・介護休業法」は、仕事と介護の両立を支援する法律でもあります。
ダブルケアをうまく乗り切るためにぜひとも知っておきたい「育児・介護休業法」の基本について、一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事の和氣美枝さんに聞きました。
介護休業法は介護しつつ働きたい人をサポート
子育て世代なら誰しも直面する可能性があるのが、育児と介護が同時期に重なる「ダブルケア」。男女共同参画局がまとめた調査報告書(※1)によると、ダブルケアの推計人口は約25万人(女性約17万人、男性約8万人)。30~40代が多く、男女ともにダブルケアを行っている人の約8割を占めているとされます。
※1=育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書
このダブルケアを乗り切るうえで重要なのが、育児・介護休業法を理解しておくこと。育児休業だけではなく、介護休業にもしっかりと目を向ける必要があります。
2022年4月から改正育児・介護休業法がスタートし、男性の育休取得を促すさまざまな施策が注目を集めていますが、この法律は「仕事と介護の両立」を支える法律でもあるのです。
「介護休業には、さまざまな誤解があります。『うちの会社は零細企業なので、介護休業制度がありません』というのも、そのひとつ。法律で決められていることですから、企業規模を問わず、労働者がいる会社にはすべて適用されます。
企業によっては法律によって定められた以上の制度を設けているところもあります。一方、本来であれば介護休業制度について就業規則に盛り込むべきところを未だに記載がないという企業もあります。ここで重要なのは、法で定める条件に達しない規定は無効だという点です。
例えば、企業が『介護休業の取得を分割不可にする』『配偶者の両親は対象外とする』『有期契約労働者は制度利用を不可とする』といった規定を独自に作ったとしても、法律の規定が優先されます」(一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事・和氣美枝さん)
また、介護休業は「仕事を休んで介護に専念するための制度」というのも、間違ったイメージのひとつだと和氣さんは指摘します。
「育児・介護休業法の目的は『福祉の推進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資すること』(第1章第1条)と明記されています。つまり、介護があっても働きたいと望む従業員に対して、どうしたら働き続けられるかを一緒に考え、企業の生産性の維持向上を目指すのが大原則です。
介護休業を『働く人が休みをもらって、介護に専念するための法律』ととらえると、本来の目的からはズレてしまいます。あくまでも主眼は『介護がありながらも、働き続けること』にあるのです」(和氣さん)
介護休業は事実婚もOK 『要介護状態』と「要介護認定」は違う
介護休業制度を利用するには「労働者の家族が要介護状態にあること」が前提になります。ここでいう「家族」の範囲は、申請者を基準にその両親、祖父母、兄弟姉妹、子ども、孫に加えて、配偶者がいる場合には配偶者及び配偶者の両親(つまり、義父母)と法律で定められています。同居や扶養の条件はありません。また、配偶者には「事実婚」も含まれます。
では、ここでいう「要介護状態にある」というのは、どのような状態をさすのでしょうか。
「育児介護休業法における『要介護状態』は、『負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり、常時介護を必要とする状態』と法律で決められています。
判断基準としては厚生労働省が資料(※2)を出しています。『座位保持』『歩行』『移譲』『水分・食事摂取』『排泄』など12項目について参照しながら、判断することになります。ただし、この基準に厳密に従うことにとらわれ、介護休業の取得が制限されないよう、企業は個々の事情にあわせて柔軟に対応することが求められています。
なお、要介護認定を受けていなければ、介護休業制度は使えないというのは、よくある誤解のひとつ。要介護認定を受けていなくとも、『常時介護を必要とする状態で、かつ、その状態が継続する』と見られる場合には、介護休業制度が利用できます。
介護保険の要介護認定の結果通知書や、医師の診断書の提出を制度利用の条件とすることもできません」(和氣さん)
※2=育児介護休業法のあらまし