【子どものけいれん】約8人に1人が発症「けいれんしたら口にタオル」は危険!「けいれんの正しい対処法」〔医師が解説〕

令和の「子どもホームケア」#6~けいれんの対処法~

小児科専門医:森戸 やすみ

元気だった子が突然けいれんを起こすことも

子どもに見られる心配な症状のひとつ、けいれん(ひきつけ)。昔はよく、子どもがけいれんを起こしたとき「舌を嚙まないように口の中にタオルを入れるといい」と言われていたのをご存知のママパパも多いのでは? 中には「親の指や腕を嚙ませる」「割り箸を入れる」という説もあったようです。

こうした対処法は正しいのか、森戸やすみ先生に伺いました。
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けいれんとは、全身、または体の一部に力が入り、自分の意思とは関係なく勝手に動いてしまう症状のこと。子どもにいちばん多いのは、38度以上の発熱を伴う発作性の「熱性けいれん」です。

『熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023』によると、熱性けいれんとは、髄膜炎などの中枢神経感染症や代謝異常といった、明らかな発作の原因となる病気がないもので、てんかんの既往歴がある場合は除かれます

『熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023』/日本小児神経学会

生後6ヵ月から5歳までに多く、ある統計では約8%、最大で9%の子どもが熱性けいれんを起こすとされています。成長発達に影響はなく、脳障害などの後遺症も残りません。

熱性けいれんの中でも重篤ではないものを「単純型」といい、①全身のけいれん ②15分以内におさまる ③24時間以内に1回のみ などの特徴があります。

熱性けいれんの場合、60%以上の子どもは一生のうちに一度しか発作を起こしませんが、有病率8~9%と子どもに多く見られる病気です。遺伝することがあるため、両親が熱性けいれんを起こしたことがある場合、子どももけいれんを起こす可能性が高くなります。

また、さっきまで元気にしていたのに急に顔色が悪くなり、突然けいれんを起こすので、子育て中の親御さんは正しい対処法を知っておくと安心ですね。

口には何も入れず横向きに寝かせる

お子さんが舌を嚙まないか心配になる気持ちはわかりますが、けいれんを起こしたとき、子どもの口の中に何かを入れる対処法は実は間違いです。

けいれんは嘔吐を伴うことがよくあり、口の中に物があると嘔吐物を飲み込んでしまい、気管に入って窒息の原因になります。こうした誤嚥(ごえん)による窒息は、1分1秒を争います。大変危険なので絶対にやめてください。

けいれんには、体が硬くなったり勝手に動いたりするほか、意識がない、呼びかけても反応がない、目が合わない、呼吸が不規則・不安定になる、顔色が悪くなるなどの症状が見られます。けいれんは数秒から数十分間続き、いつもそばにいる親御さんなら「おかしい」「ただごとではない」と、一目でわかるはずです。

子どもがけいれんを起こしたら、まずは親御さんが落ち着いて、お子さんを安全な場所に横向きに寝かせます。仰向けだと吐いたとき嘔吐物を誤嚥しやすいため、横向きです。親御さんにはとても長く感じると思いますが、けいれんが何分続いているか、時間を正確に測ってください。

熱性けいれんの多くは5分以内に自然とおさまるので、5分を超えてもけいれんが続くなら、発作が長く続く「熱性けいれん重積状態」、また「髄膜炎」や「脳炎」「脳症」といった重篤な病気の可能性もあります。緊急事態と捉えて救急車を呼び、医療機関を受診してください。発作が起きている最中の動画をスマホなどで撮っておくと、医師に症状がうまく伝わります。

けいれんがすぐにおさまり、普段と変わらない様子ならすぐに受診する必要はありませんが、特に初めての発作であれば、翌日には小児科に相談するといいですね。

お子さんの様子を見て「けいれんなのかな」と迷うようであれば、おそらくけいれんではないでしょう。子どもは熱のせいで意識が朦朧(もうろう)とすることがよくありますし、手足が一瞬ビクッと震えるのは、けいれんではなく振戦(しんせん)と呼ばれる体の震えです。

何かしら意思疎通がとれる反応があったり、目が合ったりするのなら、しばらく様子を見ても大丈夫だと思いますが、心配なときは小児科を受診してください。

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