子どもの「乗り物酔い」の原因は? 幼児に起こりにくく小学生~中学生ごろがピークの理由 専門医が解説

耳鼻咽喉科専門医・細野研二先生に聞く「子どもの乗り物酔い」 #1 ~原因とメカニズム編~

ほその耳鼻咽喉科 院長:細野 研二

進行を予防することが肝心

乗り物酔いの症状には、「むかつき」「冷や汗」「生あくび」「顔面蒼白」「嘔吐」などがあります。これらは交感神経と副交感神経からなる自律神経の症状だと細野先生は言います。

「空間認知の混乱が起こることで、自律神経のバランスも乱れてしまいます。自律神経は、体中を巡っているので、体のさまざまな部分に影響が出てしまうのです。多少の個人差はありますが、症状の表れ方は以下の流れになります。

ふらついているような感覚や、なんとなく気分が悪い

生あくびや唾液量の増加などの症状

気分の悪さがむかつきに変わる、体温調節がうまくいかない、冷や汗が出る

顔色が悪くなり、嘔吐に至る

酔ったからといって、すぐ嘔吐になるということはありません。乗り物酔いは、刺激を繰り返すことで起こりやすく、一度発症すると刺激の連続で重症化します」
(細野先生)

つまり、子どもの異変に早めに気づき、進行を予防することが重要なのです。

学童期にピークを迎える理由

「乗り物酔いのピークは、平衡感覚が発達しはじめる小学生~中学生ごろまでの学童期」と細野先生。その要因は大きく3つあるといいます。

「大人と比べて学童期の乗り物酔いが多いのは、『乗り物に乗る体験が少ないこと』『酔いにくくする対策に意識が向かないこと』『身長が低く車外が見えにくいこと』が関係していると言われています。

一方、幼児期には空間の認知力自体が未熟で混乱が生じにくいことから、乗り物酔いが起こりにくいのです」
(細野先生)

「成長すれば酔わなくなる」という話もありますが、落ち着くものでしょうか。

「はい、ほとんどの場合、中学生ごろになれば落ち着きます。『バスに乗ったときのパターン』『船に乗ったときのパターン』など、色々いろいろな乗り物に乗ってパターンを覚えると情報処理が追いついていきます。受験でいう過去問のようなイメージで、傾向がわかると対策できるようになってきますよ」(細野先生)

解決の糸口が見えると、長距離移動の不安も軽減できるかもしれません。

次回2回目では、「乗り物酔いは心理的な要因で起こるのか」を、引き続き細野先生にお伺いします。

取材・文/畑 菜穂子

乗り物酔い連載は全4回。
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ほその けんじ

細野 研二

Kenji Hosono
ほその耳鼻咽喉科 院長

ほその耳鼻咽喉科 院長。日本耳鼻咽喉科学会専門医。 奈良県立医科大学卒業。2021年よりほその耳鼻咽喉科を開院。2023年より医療法人華美会理事長も兼務。 日本耳鼻咽喉科学会認定 補聴器相談医、日本耳鼻咽喉科学会認定 騒音性難聴担当医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、厚生労働省認定 補聴器適合判定医、身体障害者福祉法第15条指定医、難病指定医。 ほその耳鼻咽喉科 https://hosono-ent.com/

ほその耳鼻咽喉科 院長。日本耳鼻咽喉科学会専門医。 奈良県立医科大学卒業。2021年よりほその耳鼻咽喉科を開院。2023年より医療法人華美会理事長も兼務。 日本耳鼻咽喉科学会認定 補聴器相談医、日本耳鼻咽喉科学会認定 騒音性難聴担当医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、厚生労働省認定 補聴器適合判定医、身体障害者福祉法第15条指定医、難病指定医。 ほその耳鼻咽喉科 https://hosono-ent.com/

はた なおこ

畑 菜穂子

ライター

1979年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーに。主にWEBメディアで活動中。子育て、性教育、グルメ、企業の採用案件などの取材・執筆を行う。多摩地域で、小学生の娘(2012年生まれ)、夫と暮らす。 Twitter @haricona

1979年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーに。主にWEBメディアで活動中。子育て、性教育、グルメ、企業の採用案件などの取材・執筆を行う。多摩地域で、小学生の娘(2012年生まれ)、夫と暮らす。 Twitter @haricona