【地震・震災】マンション住民は避難所に入れない!  子育て家庭が気づかない「在宅避難」の落とし穴と対策

マンションで見落とされがちな地震リスク

NPO法人・かながわ311ネットワークの代表理事を務める伊藤朋子さんは、マンション特有の危険性についてこう教えてくれました。

伊藤さん

「マンションの便利さは、電気や管理サービスなどに支えられています。ひとたび地震が起きると一気に不便になり、困ってしまうケースが多いのです」

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マンション被災のリスク例
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・電気機器がすべて使えなくなり、火災報知器も停止

・インターホンやオートロック、自動ドアが停止

・エアコンなどの冷暖房家電が使えなくなり、熱中症や低体温症の危険性が

・停電・断水によりキッチン・トイレ・風呂場など水回りの使用ができなくなる

・エレベーターが停止。照明が使えず、真っ暗な階段を登り降りすることに

・物資が手に入っても、階段しか使えないため、運ぶのが困難に

・テレビ・固定電話が使えず、情報が入らない

・管理人やコンシェルジュによるサービスが停止

・コールセンターなどのサポートも使えなくなる可能性
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【注:5階建て以下ぐらいのポンプを使わず自然圧で給水しているマンションは、停電時でも水が出る場合がある。ただし、断水はどのような設備でも起こる可能性がある】

同団体理事の石田真実さんも、マンションで在宅避難する際の大変さを強調します。

石田さん

「電気・水道・ガスが止まってしまうと、冷暖房もトイレも使えない状況の中、親子で何日も過ごすことに。親御さんが不安になると、お子さんも敏感に察します」

管理人室やコールセンターなどの機能が停止するのも大きなリスク。自宅で孤立する恐れにつながります。

マンションならではのメリットが、被災時には失われてしまう。

ショッキングですが、その現実を知っておくことが防災の第一歩となるのです。

わが家の備え、まずはチェックリストで確認しよう

災害時に慌てないためには、「わが家はどうか」を具体的に考えることが大切。

かながわ311ネットワークでは、「自助の備えチェックリスト」を公開しています。

現状、私たちはどれくらい備えができているのでしょうか。以下のポイントをチェックしてみましょう。

(参考:かながわ311ネットワーク/「自助の備えチェックリスト」)

1.住んでいる地域の災害リスク

1-(1)自分が住んでいる地域のハザードマップを確認したことが
□ある
□ない

1-(2)自分の家は、ハザードマップで「リスクあり」とされていないので
□安心だ
□必ずしも安心とは言えない

石田さん

「ほとんどの自治体では、インターネット上でハザードマップを公開しています。『自治体名 ハザードマップ』で検索すると、お住いの地域の災害リスクが分かるはずなので、一度見てみることをおすすめします」

伊藤さん

「ハザードマップ上リスクがあっても、免震・制震構造がしっかりしていたり、備蓄倉庫が上層階にもあったりなど、適正な対策がなされているマンションであれば影響は大きくありません。最近はマンションの災害対策を自治体が評価する動きも増えてきました。不動産仲介業者に聞くと情報を得られる場合もありますので、住んでいるマンションの災害対策についても調べてみましょう」

2.自宅の地震リスク

2-(1)家具・家電の転倒防止を
□している
□しているが十分とは言えない
□していない

2-(2) ガラスの飛散防止を
□している
(□窓・□食器棚)
□していない

2-(3) ベッドや布団のそばに足を守る履物と停電しても使える灯りを
□備えている
(□履物・□灯り)
□備えていない

2-(4)
① 消火器を
□設置している
□設置していない

② 感震ブレーカーを
□設置している
□ 設置していない

3.在宅避難の備え

① 停電しても使えるラジオ
□備えている
□備えていない

② 乾電池、蓄電池など
□備えている
□備えていない

③ 非常用トイレパック(5回×人数×最低3日分)
□備えている
□十分とは言えない
□備えていない

④ 水(飲料用+調理用)
3L×人数×最低3日分を
□備えている
□十分とは言えない
□備えていない

⑤ 食料(最低3日分)
□備えている
□十分とは言えない
□備えていない

⑥ 停電しても使える調理器具
・カセットコンロ 
□備えている
□備えていない

・ガスボンベ 
□備えている
□十分とは言えない
□備えていない

・カセットコンロで使える鍋 
□備えている
□備えてない

・耐熱ポリ袋(湯煎調理や食品の保存等に使用) 
□備えている
□備えてない

・皿
□備えている
□備えてない

伊藤さん

「カセットコンロがあれば、常備しているお米やパスタが料理できるのでとても便利です。一方、明かりには決して火を使わないで。LEDランタンや、両手が空くヘッドランプなどがおすすめです」

4.家族との連絡手段

4-(1) 家族と連絡方法を話し合って
□複数の連絡方法を決めている
□一つは決めている
□決めていない

4-(2) 災害用伝言ダイヤル「171」やWeb171を
□使ったことがある
□使ったことがない

石田さん

「共働きなど、昼間は家族がバラバラの場所にいるケースも多いことでしょう。いざというときに備え、『子どものお迎えは誰がするか』『お互いに連絡がつかなかったときはどうするか』を決めておくと良いですね」

伊藤さん

「大切なのは、離れた場所にいても『元気でいる』という情報が互いに得られる体制を事前に作っておくこと。不安が軽減され、冷静な判断に繋がります」

「備えていない」「決めていない」などにチェックが付いた項目は、対策が必要です。

とはいえ、「子育てで忙しい中、すべて準備するなんて無理」という方も多いのではないでしょうか。後編では、子育て中の私たちでも手軽に始められる、具体的な防災への備えを解説します。

※後編記事は、8月29日(金)に配信予定
(↓後編記事へのリンクは8月29日より有効です)

「自宅の地震リスク・在宅避難の備え」リストで確認を

家族で確認! チェックリスト一覧
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