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マンジャロを使う子どもも! 子どもの摂食障害をふせぐための親の寄り添い方とは[専門医が解説]
#3子どもの摂食障害「神経性やせ症」~家庭での対応と予防策~
2025.08.11
内科医・一般社団法人日本摂食障害協会理事長:鈴木 眞理
子どもたちを守るため大人と社会ができること
──最近では、糖尿病治療の注射薬「マンジャロ」をめぐる問題も耳にします。どのような懸念があるのでしょうか?
鈴木先生:マンジャロは嘔気、下痢、食欲不振を起こすことで、減量効果があり、BMI:35以上、あるいは、BMI:27以上で肥満に関連する合併症がある場合に肥満治療薬として使われます。日本では、肥満治療目的ではまだ保険適用が認められていませんが、自由診療で処方・販売するクリニックがあります。
SNSなどで“やせ薬”として拡散され、子どもが安易に使用するケースも出てきており、実際に保護者の方から、「子供部屋で注射器を見つけました」という相談を受けたこともあります。
マンジャロは、本来医師の診断と管理のもとで使われるべき薬です。低血糖、急性膵炎、アナフィラキシーなど重症の副作用が起こることがあります。成長途中の子どもが自己判断で使用すれば、重篤な健康被害につながる恐れがあります。
──今後、子どもの神経性やせ症を減らすためにはどうしたらよいのでしょうか。
鈴木先生:子どもが受けているストレスを減らす、子どものストレス・マネジメント力を向上させる教育が重要です。また、挫折感を抱いた子どもが、「やせると自信が持てる」という間違った認識を持たないように、社会全体の「やせているほうが美しい」「細ければ細いほど良い」といった価値観を見つめ直す必要があります。
また、神経性やせ症になりやすいとされる“完璧主義”や“努力家”といった特性は、本来は“その子のよさ”でもあります。ただ、大人が完璧主義を奨励、賞賛するばかりでなく、中庸(ちゅうよう)や柔軟性のよさを伝えることも重要です。
そして、健康志向の行き過ぎで、やせを礼賛する傾向があるのは子どもだけではありません。実は親御さんも「やせ=美しい」という価値観が無意識に染みついていて、つい「少しやせたほうがいいんじゃない?」と子どもに言ってしまうことがあります。
繰り返しになりますが、成長期の子どもにとっては、栄養をしっかりとって身体を作ることが何より大切です。大人も自分の価値観を見直し、意識的に変わっていくことが求められています。
多様な生き方を認める社会を、私たち大人が率先してつくっていくこと。それこそが、神経性やせ症から子どもたちを守るために、今、私たちに課された大きな責任です。
────◆────◆────
「やせたい」という言葉の奥に隠された本当の気持ちに、私たち大人はどれだけ気づけているでしょうか。神経性やせ症の子どもたちは、静かに“苦しみのサイン”を出しています。
そんなとき、「そのままで大丈夫だよ」「あなたはあなたのままで、十分素敵だよ」とあたたかく伝えてあげられる大人が必要なのかもしれません。
もし気になる変化があれば、ひとりで抱え込まず、医療機関に早めに相談してみてください。
取材・文/牧野未衣菜
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鈴木眞理先生の監修『摂食障害がわかる本 思春期の拒食症、過食症に向き合う』(講談社)。思春期に多い拒食症や過食症について、原因から治療、家族や学校の対応までをイラストとともにやさしく解説。摂食障害が「心の問題が食に現れた病気」であることを軸に、本人の心理や回復のプロセス、家族ができる関わり方を丁寧に紹介しています。「もしかして……」と感じたとき、周囲の理解と支援の第一歩となる一冊です。

●鈴木眞理(すずき まり)PROFILE
内科医・医学博士。長崎大学卒業後、元・跡見学園女子大学心理学部臨床心理学科特任教授。政策研究大学院大学名誉教授。現在、一般社団法人日本摂食障害協会理事長。
連載は全3回

牧野 未衣菜
1992年生まれ、千葉県出身。子育てや教育関係を中心に、フリーランスライターとして活動中。 また、教育NPOでユーススタッフとして子どもの支援活動にも携わる。現在は二児(姉妹)の母として、育児にも奮闘中。
1992年生まれ、千葉県出身。子育てや教育関係を中心に、フリーランスライターとして活動中。 また、教育NPOでユーススタッフとして子どもの支援活動にも携わる。現在は二児(姉妹)の母として、育児にも奮闘中。
鈴木 眞理
医学博士。長崎大学卒業後、東京女子医科大学、米ソーク研究所などで臨床・研究に従事し、1987年に摂食障害の専門外来を開設。治療実績は1500例を超える。 政策研究大学院大学教授を経て名誉教授。跡見学園女子大学心理学部臨床心理学科特任教授を歴任。現在は一般社団法人日本摂食障害協会理事長として、治療・研究・啓発・家族支援に取り組む。 『摂食障害がわかる本』(講談社)を監修、著書に『乙女心と拒食症』(インターメディカル)など。 ・一般社団法人日本摂食障害協会
医学博士。長崎大学卒業後、東京女子医科大学、米ソーク研究所などで臨床・研究に従事し、1987年に摂食障害の専門外来を開設。治療実績は1500例を超える。 政策研究大学院大学教授を経て名誉教授。跡見学園女子大学心理学部臨床心理学科特任教授を歴任。現在は一般社団法人日本摂食障害協会理事長として、治療・研究・啓発・家族支援に取り組む。 『摂食障害がわかる本』(講談社)を監修、著書に『乙女心と拒食症』(インターメディカル)など。 ・一般社団法人日本摂食障害協会