
【子どもの口のケガ】 治療後のホームケアと回復の目安 予防法を〔小児歯科専門医指導医〕がわかりやすく解説
子どもの口のケガ〔宮新美智世先生〕#3
2025.08.14
日本外傷歯学会副理事長:宮新 美智世
口内の清潔を保つ食事術は「食物繊維」を食べること
──口のケガ後の口内ケア次第で治りが早くなることはありますか?
宮新先生:ポイントは「清潔を保つこと」です。
口内は湿った環境で、細菌が増えやすい場所。特にケガをしているときは、細菌が増えることで傷の治りが遅くなったり、感染を引き起こしたりするリスクが高まります。
また、清潔を保つという意味では「食物繊維の豊富な食品」をおすすめします。
例えば、リンゴのようなシャリシャリした食感の果物や海藻、のり、野菜、キノコなどに含まれる食物繊維は、天然歯ブラシとして口腔内を清潔に保つのに役立ちます。
そもそも、口の中は甘いものを食べてから、むし歯菌、歯周病菌などの悪玉菌が増えるわけではありません。私たちは歯垢という歯の汚れの塊の中に住み込みの悪玉菌を飼っていて、好物の甘いものが口に入ると、この菌が「待ってました」とばかりに増殖します。
ですから、歯垢を溜めないように歯科を定期受診して、自分では除去できない歯垢を定期的なプロフェッショナルケアで徹底除去してもらう習慣を身に着けることを、世界中の歯科学研究者が推奨しています。
ケガ防止の基本は安全な環境づくり
──子どもの口のケガを予防するためには、どんなことに気をつければよいでしょうか?
宮新先生:「安全な環境づくり」が基本です。これは一般的なケガ予防と同じで、成長段階に応じた対策が必要です。
●生後半年以内:ベッドやソファーからの転落を防ぐため、高い場所には寝かせないこと。
●ハイハイ期:階段には安全柵を設置し、家具の角にクッションテープを巻く。
●1歳以降:行動範囲が広がるので、ベランダや風呂場など危険な場所への侵入を防ぐ対策を。
※6歳以下の子どもには、大人がそばについて目を離さず、危険を未然に察知して行動することが大切です。
●共通:手の届く場所に危険なものを置かない。コンセントや電化製品なども油断せず、日頃から環境を見直す。
──確かに、成長とともに危険な場所も増えますね。
宮新先生:はい、さらに「手に持たせるもの」にも目を配る必要があります。
例えば、歯ブラシや、棒付きのお菓子。これらを口に入れたり、手に持ったまま走り回ったり、友だちとふざけたりすると非常に危険です。
転倒などで口や喉さらに脳にまで刺さる事故が発生するため、ながら歯磨きなどをさせず、椅子に座って間食を取る習慣づけ、子ども本人に危険な行動について教えておくなどが必要です。