子どもの「スマホ依存・ゲーム依存・ネット依存」 小5息子の依存で自信を失ったママパパの「回復策」
公認心理師・スクールカウンセラーが語る 子どものスマホ依存 #3 長く続く治療を親子で乗り越えるために
2024.01.18
公認心理師:中井 ようこ
スクールカウンセラーとして、コロナ禍で800件以上の相談を受けた公認心理師・中井ようこさんが解説する「子どものスマホ依存」。
スマホ依存は治癒までには数年かかることも。大きな試練を親子で乗り越えるためにはどうすればよいのでしょうか?
3回目では、子どものスマホ依存に悩んでいたママパパが、解決への一歩を踏み出した実例を紹介します。
公認心理師・中井ようこ
小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。
はじまりはオンラインゲームから
(プライバシー保護の原則にのっとり、事実を基に構成しています)
寒くて手先が凍える12月の夕方5時ごろ、公園の片隅に子どもたちが集まっていました。それぞれゲーム機を握りしめ、対戦ゲームに熱中しています。
その中に小学校4年生のA君がいました。前年のクリスマスに買ってもらったゲーム機がマイブーム。放課後は友達とのゲームが習慣となっていました。
5年生になると、まわりの友達がスマホを持ちはじめました。クラスにLINEグループができ、その中で盛り上がった会話をクラス内で話す子も。オンラインゲームもできると聞き、A君はスマホが欲しくなり両親に頼みました。
すぐにスマホを買ってもらえたA君は、さっそく友達数人とオンラインゲームをするように。みるみるうちに夢中になっていきました。
Wi-Fi環境がないとスマホを使うのが不便なため、公園に行くことはもうありません。家にいながら友達とつながることができるスマホ。画期的なアイテムを手に入れて、A君は楽しく放課後を過ごしているように見えました。
スマホ依存の症状があらわれ不登校に
スマホの使用頻度がどんどん上がっていったA君。次第に今まで見られなかった様子が表れはじめた5年生の2学期。A君の両親は、担任からの紹介でスクールカウンセラーのもとをはじめて訪れました。
スクールカウンセラー・ヨウコ(以下、スクールカウンセラー):担任の先生より、息子さんのことで悩んでいるとお聞きしました。
A君ママ:はい。昼夜逆転していて、朝起きられない状態です。最初は遅刻しながら行っていましたが、夏休みが明けてからはほとんど通えていません。
スクールカウンセラー:それは大変でしたね。原因として何か思い当たることはありますか?
A君ママ:(しばらく言葉に詰まって)……スマホです。5年生になってから買い与えました。朝から晩までスマホを見ています。ゲームをしたり、インスタグラムを見ていたり。
スクールカウンセラー:そうなんですね。スマホから離れる時間はありますか?
A君ママ:いいえ。お風呂場やトイレにも持っていきます。最近では食事の時間に呼んでも来なくなり、外出も嫌がるようになりました。外食に行こうと誘っても「今、友達とゲームしている」と。家族の時間よりもスマホが大事なのかと……。(涙ぐむ)
スクールカウンセラー:それはとてもつらい状況ですね。息子さんとスマホについて話し合いはできそうですか?
A君パパ:話をするのは……、とても難しいです。ついこの前も、息子が食卓の上にスマホを置き、LINEで通話しながらパンを食べていたので「いい加減にしなさい」と𠮟りました。
それから、スマホを取り上げようとすると、息子が激高して私に暴言を吐いてきたんです。スマホを取り返そうと暴力もふるってきて……。
A君ママ:「ご飯をしっかり食べなさい」と言っても、スマホに夢中でちゃんと食べません。夜中もずっと起きているので、朝方に寝落ちしてしまうんです。
「頭が痛い」といつもイライラしていて親や兄弟に暴言を吐きます。兄弟のフォローも必要だし、私たちも精神的につらくて……。親としての自信もありません。(涙が止まらない)
A君パパ:実は、息子がスマホアプリで高額な課金をしていたことが分かりました。妻のクレジットカード番号を入力したようです。正直、とても情けなくなってしまい、息子のことも信じられなくなってきました。
こんなことは担任の先生にも話せないし、どうしたらよいのか分からなくて……。何か方法はあるのでしょうか?
スクールカウンセラー:つらい状況をよく話してくださいましたね。今のお話だと、息子さんは「スマホ依存」の可能性があるかもしれません。スマホ依存は早めに治療が必要ですので、息子さんに合った方法を一緒に考えていきましょう。