【こども基本法・お悩み相談】法律が「子どもをわがままにする」って本当?​

教育学者・末冨芳先生の「こども基本法お悩み相談」~子を守り、親を救う答えとは?~#1「こども基本法でわがままになる?」

教育学者・日本大学文理学部教育学科教授:末冨 芳

子どもと異なる親の意見は対話で交渉

さて、子どもの権利を尊重しているわが家の子どもたち、「親の顔色を読まない、正直な子ども」が育っています。

「家族旅行で、観光をしっかりするか、土地の名物料理を行列に並んでも食べるか」、子どもたちに聞いてみたところ「土地の名物料理を食べる」ということを伝えてくれました。

先日、「参観日にこないで」と言われたときには、ちょっとショックでした。

しかし、子どもが、正直な気持ちを伝えてくれることは、親を信頼し、「自己決定」ができ、意見表明権も行使できている素晴らしいことでもあります。

ただ、親だって、どうしても見に行きたい参観日があります。

子ども向けの回答に記しましたが、権利とは、自分の権利も「すべての人」の権利も、大切にするルールです。

「お母さんは、参観日の発表会にむけて、今までキミとグループの子どもが頑張ってきたのを知ってるから、とても見に行きたいのだけど」

親も意見表明する権利があり、参観日を見に行く権利があります。子どもの意見と、食い違ったときこそ、対話することが大切です。

「恥ずかしいから参観日にきてほしくないけど、発表会は見にきていいよ」

対話の結果、気持ちを理解してもらえて、参観日の発表会を見に行くことができました。

このように、権利を正しく理解していれば、子どもの権利で「子どもがわがままになる」などと心配しなくてよくなります。

子ども自身が、幸せになる力を育てるために、子どもの権利、とくに意見表明権や「自己決定」する権利を、認めていくことの意味も大切さもご理解いただけたのではないでしょうか。

【脚注】
※1=所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査(神戸大学)

※2=そのランドセル、本当に“君が”好きな色ですか? 「泣いた」の声続出のCM、生まれた理由をメーカーに聞いた(BuzzFeed)

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すえとみ かおり

末冨 芳

教育学者・日本大学文理学部教育学科教授

日本大学文理学部教育学科教授。京都大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術・神戸大学大学院)。専門は教育行政学、教育財政学。 子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。現在、文部科学省・中央教育審議会臨時委員もつとめる。 教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、子どもの権利・利益の推進、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。二児の母。 主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店)、『一斉休校 そのとき教育委員会・学校はどう動いたか』(明石書店)など。

日本大学文理学部教育学科教授。京都大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術・神戸大学大学院)。専門は教育行政学、教育財政学。 子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。現在、文部科学省・中央教育審議会臨時委員もつとめる。 教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、子どもの権利・利益の推進、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。二児の母。 主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店)、『一斉休校 そのとき教育委員会・学校はどう動いたか』(明石書店)など。