小児性被害「プライベートゾーン」以外の口や背中も狙われる ふらいと先生の警告

小児科医・ふらいと先生 親が知っておきたい「小児性被害」 #2 子どもが性被害にあったときの対処法について

新生児科医・小児科医:今西 洋介

ふらいと先生は「プライベートゾーン以外も性被害の対象」と言います。その理由とは。  写真:アフロ ※写真はイメージです。

X(旧Twitter)では、「ふらいと先生」の名でフォロワー13万人超えの新生児科医・小児科医の今西洋介先生。現役医師として、医療現場での話や、子どもを持つ保護者へ向けての投稿をされています。

その今西先生に「小児性被害」についてお話しいただく連載2回目。前回では、「グルーミング」という、信頼できる関係からわいせつ行為に発展する、小児性被害ならではの背景についてお話しいただきました。

今回は、「なぜ小児性被害が表に出にくいのか」また、「子どもが性被害に遭ったらどう対処するべきか」についてお聞きしました。

(全3回の2回目。1回目を読む

今西洋介(いまにし・ようすけ)
新生児科医・小児科医、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会問題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。X(旧Twitter)ではふらいと先生(@doctor_nw)としてフォロワー数は13.6万人。

プライベートゾーン以外も触られたら嫌だと言う

──前回では、子どもが生活する上で、身近な人から性被害を受けることが、小児性被害の特徴である、ということをお話しいただきました。これは、子どもにとって「嫌なことをされた」と口に出すことが、なかなか難しいのではないでしょうか。

今西洋介先生(以下、今西先生):小児性被害は、初犯から発覚までに12年かかるというデータがあります。発覚が遅くなる原因のひとつは、1回目に話した「グルーミング」です。信頼をしている人からの性暴力だからこそ、子どもは「性被害を受けた」と最初は認識していないんです。

警視庁が公表している事例がわかりやすいかもしれません。ある子どもがお母さんに「お父さんと毒キノコを食べるのが嫌だ」とずっと言っていたと言います。でもお母さんは、お父さんと「白雪姫」の物語のようなごっこ遊び的なことかと思い込んでいて、子どもの訴えを受け流していました。しかし、子どもが思春期に入り、自身が性暴力を受けていたことに気がついた、ということがありました。

また、もうひとつ。「プライベートゾーン」という考え方が、僕は発覚を遅らせている側面があるように思います。

──子どもへの性教育のひとつとして、「水着で隠れる場所は自分にとって大事な場所」と教える内容ですよね。どうしてそれが小児性被害の発覚を遅らせるのでしょうか?

今西先生:「プライベートゾーン」の範囲に入っていない「口」や、「男の子の胸」などもわいせつ行為の対象の場所です。口腔性交などをされた場合、“口はプライベートゾーンじゃない”と思い込んでしまい、大人に伝えにくくなるということもあるでしょう。先ほどの事例もそのひとつですよね。

子どもにはプライベートゾーンに加えて、口、また背中や男の子の胸なども大切な場所と教えてあげることが大事です。

さらにいうと、知らない人だけではなく、お父さんも含めて親戚の人でも、自分が大事だと思っているパーツを触られて嫌だと思ったら「『嫌だ』と言う」という教育が必要だと思います。

「自分の体は自分のものなんだ」、ということを、子どもたちに教えないといけないのです。

教えてくれたときは子どもを決して責めず、「よく話してくれたね」と

──子どもに自分の体の大切さを教えてあげること、そして子どもが「嫌だ」と発しているメッセージを親や大人がきちんと受け取らなくてはいけないということですね。

とはいえ、先ほどの例えで伺ったように、子どもの「嫌だ」を「性被害」として受け止められない場合もあるかもしれません。子どもからのシグナルを逃さないために、大人はどうしたら良いのでしょうか?

今西先生:子どもは「痴漢をされた」など、直接的に言うよりは、ぽつぽつとそれらしいことを発信します。そして、そういうことを敏感に受け取ることができるのは、やっぱりお母さんなのかな、と僕は思います。

残念な話ですが、女性はやはり被害を受けやすいジェンダーです。でも、だからこそ子どもたちの「なんとなく嫌だ」という気持ちを理解しやすい傾向にあると思います。

そして、子どもが話をしてくれたら、それに対して「よく話してくれたね」という言葉をかけてあげてほしい。

性被害に遭うと、子どもはもちろん、大人も約7割の人が恐怖のあまり固まってしまうといわれています。逃げたくても逃げられないのに、「なんで逃げなかったの」とか、「なぜあんな格好をして出かけたの」などと責められると、子どもは被害にあったとしても、次からは話してくれなくなります。特に、グルーミングの中で起きた場合、お母さんの気持ちや、信頼をしていた加害者のことも頭をよぎってしまい、被害についてさらに話しにくくなってしまいます。

そして、子どもの話を聞いたら、小さな女の子が被害にあった場合は、すぐに産婦人科へ行ってください。小児科へ行くことを考えられることもあるでしょうが、小児科だと膣の中の診察ができなかったり、粘膜の中に残ったものを培養することができない可能性もあります。ですから、まずは産婦人科へ行き、身体を診てもらいながら警察へ報告するという対応をしてください。

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被害の発覚が遅くなるからこそ、ひとりで性被害に苦しむ時間が長くなってしまう小児性被害。こういう苦しみを子どもが受けないためにも、親がどうやって小児性被害を防いであげることができるのか。次回3回目は、被害の予防について具体的に今西先生に伺います。

取材・文/知野美紀子

今西先生の小児性被害連載は全3回。
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3回目を読む。
(3回目は2023年8月28日公開。公開日までリンク無効)

いまにし ようすけ

今西 洋介

小児科医・新生児科医

小児科医・新生児科医、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師を...