「わが子が怪しい…スマホ見てもよい?」と迷う親 小中学生の交際♡の見守り方を専門家が回答

ソーシャルワーカー・鴻巣麻里香さんに聞く「小中学生の恋愛バウンダリー」【2/4】~子どもに伝えるべきこと~

精神保健福祉士・スクールソーシャルワーカー:鴻巣 麻里香

SNS時代ならではの恋愛トラブルに警戒を

スマホなどのデジタルデバイスの影響で、子どもたちはプライバシーがあまりない生活を送っていると鴻巣さん。家に帰った後も、SNSを通じて、学校でのおしゃべりが家の中まで入ってきてしまうのです。

「最近の子どもは一人になって、『本当はどうしたいんだろう』と、自分と対話する時間が圧倒的に少ないんですね。SNSなどテキストベースのコミュニケーションで起きたことが、リアルなやりとりよりも優位になることもよく起こります。

いじめもSNSでのやり取りがきっかけになりますし、恋愛もSNSやオンラインゲームで知り合った『顔の見えない誰か』が相手になることもある。実際に会いに行ってトラブルになった、または性的な関係をもっちゃった、という問題も起きていますね」

そういった事態を未然に防ぐためには、やはり日ごろからちゃんと話せる関係性を築くことが大事。それ以外、防ぐ方法はないそうだ。

「繰り返しになりますが、子どもが原因でトラブルが起きても、『子どもが悪い!』と怒ってしまう前に、苦しいときに話してもらえなかったことを見つめましょう。

ただ、それとトラブルシューティングとはまた別の話。例えば性暴力やいじめなど深刻なトラブルが起きたら、まず『あなたの気持ちを置き去りにしちゃうかもしれないけれど、守らなきゃいけないものがあるから、ちょっと行動させてもらうね』と、関係各所と連携して行動する必要があります」

子どものスマホを勝手に見るのは重大なプライバシーの侵害

最近、子どもの様子がおかしい。でも「何かあった?」と聞いても、「別に」としか返ってこない……。子どもが思春期にさしかかると、よくこんな状況になるものです。心配のあまり、子どものスマホをこっそり見てしまう人もいるかもしれません。

「そこでいじめや不適切な交際のほか、犯罪に巻き込まれていた、詐欺にあっていたなどの問題が発覚することがあります。でも子どものスマホを勝手に見るという『ルール違反をしたこと』と、『トラブルを察知できたこと』は、分けて考える必要があるんです。

まずは子どもに、『あなたに聞いても答えてもらえなくてついつい、心配からプライバシーを侵害してしまった。これについては申し訳ない』と謝罪することが大事。『そうしなければ、トラブルがわからなかったじゃない!』と、開き直ってはダメですよ」

子どもと向き合う際には、大人同士の対等性のある関係とは、また別の配慮が必要です。

「親は親権という名のもとに、子どものプライバシーを侵してもいい、コントロールしていい、と間違いがちなんです。子どもには権利(人権)があり、プライバシーの保護は本来保障されるべきもの。ですから危険を守るためだったとはいえ、まず大人がバウンダリー(境界線)を踏み越えたことを謝る必要があります。

『不適切な手段で発見したことについては、申し訳ない。でも、できれば不適切な手段を私が取る前に、相談してほしかったな。きっと、言えない何かがあったんだよね』というスタンスが大事です。

そして時間をかけて、何が子どもの口を封じていたのかを探りながら、子どもとコミュニケーションをとっていく必要があります」

──次回は、「恋愛におけるバウンダリーの定義とその役割」を伺います──

取材・文/萩原はるな

10代の生きづらさとその解決策をリアルなエピソードとともに紹介した『わたしはわたし。あなたじゃない。10代の心を守る境界線「バウンダリー」』(出版:リトルモア)。2024年9月発売から1ヵ月弱で重版に。
すべての画像を見る(全4枚)
この記事の画像をもっと見る(全4枚)
22 件
こうのす まりか

鴻巣 麻里香

Marika Kohnosu
精神保健福祉士、スクールソーシャルワーカー

KAKECOMI代表、精神保健福祉士、スクールソーシャルワーカー。 1979年生まれ。子ども時代には外国にルーツがあることを理由に差別やいじめを経験する。ソーシャルワーカーとして精神科医療機関に勤務し、東日本大震災の被災者・避難者支援を経て、2015年非営利団体KAKECOMIを立ち上げ、こども食堂とシェアハウス(シェルター)を運営している。著作に『思春期のしんどさってなんだろう? あなたと考えたいあなたを苦しめる社会の問題』(2023年、平凡社)、共編著に『ソーシャルアクション! あなたが社会を変えよう!』(2019年、ミネルヴァ書房)、『わたしはわたし。あなたじゃない。 10代の心を守る境界線「バウンダリー」の引き方』(リトル・モア)がある。

KAKECOMI代表、精神保健福祉士、スクールソーシャルワーカー。 1979年生まれ。子ども時代には外国にルーツがあることを理由に差別やいじめを経験する。ソーシャルワーカーとして精神科医療機関に勤務し、東日本大震災の被災者・避難者支援を経て、2015年非営利団体KAKECOMIを立ち上げ、こども食堂とシェアハウス(シェルター)を運営している。著作に『思春期のしんどさってなんだろう? あなたと考えたいあなたを苦しめる社会の問題』(2023年、平凡社)、共編著に『ソーシャルアクション! あなたが社会を変えよう!』(2019年、ミネルヴァ書房)、『わたしはわたし。あなたじゃない。 10代の心を守る境界線「バウンダリー」の引き方』(リトル・モア)がある。

はぎわら はるな

萩原 はるな

ライター

情報誌『TOKYO★1週間』の創刊スタッフとして参加後、フリーのエディター・ライターとなる。現在は書籍とムックの編集及び執筆、女性誌やグルメ誌などで、グルメ、恋愛&結婚、美容、生活実用、インタビュー記事のライティング、ノベライズなどを手がける。主な著作は『50回目のファーストキス』『ハピゴラッキョ!』など。長女(2009年生まれ)、長男(2012年生まれ)のママ。

情報誌『TOKYO★1週間』の創刊スタッフとして参加後、フリーのエディター・ライターとなる。現在は書籍とムックの編集及び執筆、女性誌やグルメ誌などで、グルメ、恋愛&結婚、美容、生活実用、インタビュー記事のライティング、ノベライズなどを手がける。主な著作は『50回目のファーストキス』『ハピゴラッキョ!』など。長女(2009年生まれ)、長男(2012年生まれ)のママ。