
「円形脱毛症」患者の4分の1は15歳未満 “頭部に円形”だけではない【子どもの脱毛症】 毛の抜け方と治療方法とは[専門医が解説]
子どもの円形脱毛症#2 タイプと治療法
2025.07.30
複数、帯状、全頭…円形脱毛症の5つのタイプ
「髪の毛が生えていない箇所を見つけたけどまるくない……。これって円形脱毛症ではなく何かほかの病気なの?」 こんな不安に駆られている親御さんはいませんか。
円形脱毛症には、下記5つのタイプがあると、脱毛症の専門医である齊藤典充先生は言います。
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●単発型
円形または楕円形に毛が抜ける、円形脱毛症の中ではもっとも多くみられるタイプ。ただ必ずしも“円形”ではない。毛の抜け始めた箇所が中心となって同心円状に広がっていくイメージ。
●多発型
脱毛箇所が1つではなく、いくつも発生するタイプ。さらにそれらが結合して拡大していく場合も。また、単発型から移行するケースも見受けられる。「うちの医院で診ている患者さんの中で一番多いタイプです」(齊藤先生)
●蛇行型
耳の上あたりから後頭部の生え際に沿って、5~10cm程の幅で帯状に抜けていく。
●全頭型
頭部全体に脱毛が生じ、最終的に頭髪が完全に抜け落ちる。
●汎発型
頭部だけでなく眉毛やまつ毛、体毛など全身の毛が抜け落ちてしまう。「円形脱毛症の中でもっとも重度です」(齊藤先生)
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毛が抜けるメカニズムはどのタイプも同じです。また、子どもの円形脱毛症といえども「子ども特有の病気」ではなく、大人と同じ仕組みの「自己免疫疾患」が原因で起きているもの。そのため、治療方針も基本的には大人と同様のアプローチがとられます。
ただし、子どもならではの心身の発達段階や環境要因なども加味しながら、より丁寧な対応が求められるといえるでしょう。
円形脱毛症だと思っていたら「抜毛症」だった?
「髪が生えていない箇所がある」という共通した症状で、間違えやすいのが「抜毛症(ばつもうしょう)」です。「円形脱毛症だと思って受診されたお子さんが、実は抜毛症だった、というケースがある」と齊藤先生。
自己免疫によって毛根が攻撃されてしまう円形脱毛症に対して、抜毛症とは──。
「抜毛症は、自分で自分の髪の毛や体毛を抜くことをやめられなくなる疾患です。円形脱毛症とは原因がまったく異なるため、治療アプローチも異なります。
ただし、なかには円形脱毛症と抜毛症の両方を併発しているケースもあるため注意が必要です。
見た目で区別がつく場合もありますが、診断に悩むケースも。診察と経過観察を重ねるうちに、どちらがメインなのかが明らかになっていくので、治療もその経過にあわせて進めていきます」(齊藤先生)
抜毛症の背景には、多くの場合、ストレスや心の不安が関係していると指摘する齊藤先生。心理的なケアが治療の大きな鍵になるようです。
「皮膚や髪の問題は皮膚科医の我々で診ますが、抜毛症の問題は必要に応じてメンタルクリニックなど専門機関への相談を勧めています。
一方で、子どもを診られるメンタルケアの専門医は限られており、予約が取りづらいといった状況もあるんです。適切な専門家に早めに相談できる環境が整うことが、今後の課題のひとつともいえるでしょう」(齊藤先生)