子ども用の「防災リュック」で避難所でも困らない! 防災士・どろだんご先生が教える作り方とは?

防災士・どろだんご先生に聞く、「子どもの防災」 後編 ~子ども防災リュックの作り方~

防災士・砂場研究家:どろだんご先生

子ども用の防災リュックには、何を入れるといいのでしょうか?
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防災士・どろだんご先生に教えてもらう、「子ども防災」。今回は、子ども用の防災リュックについてです。

家族用の防災リュックは用意していても、子どものための防災リュックを常備している家庭は少ないのではないでしょうか。

「身体にフィットするリュックを選ぶこと、避難所で快適に過ごせるアイテムを入れておくのがポイントです」と、どろだんご先生。

では、子ども用の防災リュックの作り方を詳しく教えてもらいましょう。

(全2回の後編。前編を読む

防災リュックは家族それぞれ作る

──防災リュックは、家庭でどのように準備するのがよいでしょうか?

どろだんご先生:お父さん、お母さん、子ども、それぞれに必要なものを入れたリュックを作るといいですね。

防災リュックは市販品もありますが、基本的に「多くの人が必要とする、可能性の高いアイテム」をピックアップして構成しているので、個人のニーズに完璧にフィットすることはなかなか難しいんです。

生活に必要なものは人それぞれ違いますから、防災用リュックには、自分が使いやすいもの、使い慣れているものを入れておくことが大事です。

また、市販のリュックは、体の形にフィットしない可能性もあります。とくにお子さんの場合は、自身のお古のリュックを防災リュックにするのがおすすめです。体に馴染んでいますし、ポケットがどこにあるかなども分かっています。災害時は、慣れたものがストレスなく使えていいですよ。

最低3日間の備蓄を

どろだんご先生:日本では一般的には最低3日間の備蓄品を用意するとよいと言われています。

必ずしも3日間分あれば問題がないという訳ではありませんが、災害発生後、72時間(3日間)を越えると生存率が大幅に下がると言われているため、災害発生後72時間は、人命救助が優先されます。そのため、まずは各自でこの3日間を生きて乗り切るための備蓄が必要です。

もちろん避難所での生活はいろいろと大変ですが、そんな環境下でもできるだけ快適に過ごすために子どもには何が必要か、考えていきましょう。

子どものリュックに入れたいもの

──子どものリュックに入れておくとよいものを教えてください。

どろだんご先生:子どものリュックは大人用に比べて容量が少ないので、内容を厳選したいところ。まずは500mlの水を1本。飲料用にも食事用にも使えるシェラカップ(写真下)。これはキャンプグッズですが、取っ手がついていてとても便利です。

シェラカップ。写真はどろだんご先生の愛用品。

どろだんご先生:それから、お箸やスプーンなどのカトラリー類を1~2セット。小銭が入ったコインケース。子ども用軍手。缶入りおやつやカンパンなど、手をかけずに食べられる食料も入れておきましょう。

リュックには、防災ホイッスルやキーホルダータイプの小さな懐中電灯をつけておくといいですよ。

市販の子ども用防災リュックに入っているセットの一例。これにプラスして、何が必要かを家族で考えるひと手間が大切。

どろだんご先生:あとは、汗かきの子どもであれば、おもちゃよりも着替えのTシャツを優先したほうがいいですし、本人に合わせてリュックの内容をカスタマイズするのはとても大事なこと。

子どもの防災リュックに入れるアイテムは、ぜひ一度、家族で相談してみてください。

電気不用・音が鳴らない遊び道具を

どろだんご先生:また避難所という慣れない環境でしばらく過ごすにあたっては、心をゆるめられる娯楽もあるといいですね。

たとえば、塗り絵や謎解き本、ミニ図鑑、UNOやトランプなどのカードゲーム、折り紙、知恵の輪など、電気をあまり使わず、音が鳴らず、静かに遊べるものを子ども用防災リュックに入れておきましょう。

こういったアイテムは大人の気分転換にも活躍してくれますから、大人用リュックにも入れておいて損なしです。

ピースを組み合わせてさまざまな立体を作ることがマグネットブロック(左)は、子どもの想像力をかきたてる。難度の高い知恵の輪(右)は、大人の頭の体操に。
子どもも集中して静かに遊ぶことができる、折り紙やカードゲーム。周りの子どもたちに声をかけて一緒に遊ぶという点でも役に立つ。
ミニ図鑑やシールブックは、子どもが今まで読んだことのないものを入れておけば、子どもがしばらく飽きずに楽しめるはず。

どろだんご先生:「子どものために、絵本をリュックに入れよう」と考える親御さんも多いと思いますが、そのときはぜひ、読み終わった絵本を入れるのではなく、“読んだことのない絵本”を入れることをおすすめします。

物語を知っていると子どもの興味も半減してしまい、1冊で長く持たせることがなかなか難しいのです。

飲料は家族で分担して入れておく

──食料や飲料は、子ども用リュックにも入れておいたほうがいいですか?

どろだんご先生:家族全員が揃って、同じ場所に避難できるとはかぎりません。ですからリュックは一人1個作り、“チーム・家族”として必要なアイテムを分担して、それぞれ持つということがポイントです。

食料や飲料に関しては賞味期限があるので、定期的に点検しましょう。“ローリングストック”という考え方で、賞味期限が迫っているものは新しいものに入れ替え、古くなっているものは食べて消費していきます。

ちなみに私は毎年3月1日と9月1日の年2回、賞味期限も含めてリュックの中身の見直しをしています。

備蓄品は実際に食べておこう

どろだんご先生:備蓄用の食料は、実際に食べて味を知っておくこともとても大切です。大人は食べたことのない食料も頑張って食べることができますが、子どもにとって知らない味を食べるのは、とっても勇気のいること。

特に、災害時に避難先で、食べ慣れていないものを食べるのは精神的負担が大きいので、平時のうちに一度食べておくと、「僕(私)、これ食べたことある!」とハードルがグンと下がります。

大人の防災リュックに入れたいアイテム

──大人の防災リュックにも入れておいたほうがいいアイテムを教えてください。

どろだんご先生:大人用リュックには500mlの水2本とおやつのほか、軍手、マスクや薬、歯ブラシなどの衛生用品、携帯用トイレ1~2回分。ラップ類やアルミホイル、トイレットペーパー、粘着テープは、避難所生活で大いに役立ちます。

また不慣れな場でなるべく睡眠をとるために、アイマスクや耳栓もリュックに入れておくと安心です。

女性の場合は、アロマの香りが付いたボディシート、スキンケアコスメの試供品などを用意しておくと、リフレッシュできていいと思います。

どろだんご先生が防災バッグの中に入れているおすすめアイテム。「ギンビス×IZAMESHI 厚焼きたべっ子どうぶつ」475円(税込)は、賞味期限製造より5年(左)。シェラカップは、取っ手がついており、熱い食べ物や飲み物も食べやすい(中)。『wash-U』は洗浄・消臭・除菌の3機能を備えたスーパーアルカリイオン水のスプレー(右)。
専用の袋の中に水と洗剤、洗濯物を入れて洗い、注ぎ口から排水すれば洗濯ができるキット。防災リュックの中にたたんで入れておけば、コンパクトに収納できる。

防災グッズは一度必ず使ってみる

どろだんご先生:前編でお話ししましたが、地震が起きた場合は家庭のトイレが使えなくなるので、すぐに簡易トイレを設置する必要があります。

しかし災害が起きたときに、初めてだと、準備に手間取る可能性が高く、なかなか大変です。平時のうちに、簡易トイレで一度、用を足してみるという経験をしておきましょう。買ったことで満足、安心せず、ぜひ実際に使って、使い方を確認するところまでやってもらいたいと思います。

「自分だけの防災リュックを作る」
「自分のことは、自分で守る」

この意識を家族全員がそれぞれ持ち、みんなで少しずつ負担するということが、防災においては大切なポイントです。

子どももまた“チーム・家族”の重要な一員であるということを認識し、年齢にもよりますが、親が全部を背負い込むのではなく、任せられるところは委ねていいと思います。

家族全員元気で助け合い、できるだけ心地よく過ごして、まずは72時間を乗り越えることができれば安心です。避難生活は長くなる可能性もありますから、親も子どもも一人で抱えすぎず、頑張りすぎずにいられるといいですね。

────◆───◆────

どろだんご先生は、「防災とは、災害から自分を守ること」だといいます。自分の周りでは、災害は起こらないと思わず、「自分で自分を守れるよう準備をしていくことが大切」だと、しっかり子どもたちへ伝えていきたいと思いました。

そしてなにより災害が起きたときも、まずは自分が元気でいること。そのためにも、自分だけの防災リュックを準備しておきましょう。

撮影/安田光優
取材・文/木下千寿

前編を読む

『いないいないばあっ!! シールいっぱい!ブック』(講談社)
『おかあさんといっしょ けけちゃま はって トモダチ! シールブック』(講談社)
『こども百科ミニ しんかんせん』(講談社)
『講談社の動く図鑑MOVE mini 恐竜』(講談社)
『講談社の動く図鑑MOVE mini 宇宙』(講談社)
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どろだんごせんせい

どろだんご先生

Drodangosensei
防災士・砂場研究家

2011年の東日本大震災時、災害救助で被災地に入り、災害に向けて各人が日頃から備えることの重要性を実感。防災士の資格を取得し、防災・減災に関するさまざまな活動を行っている。 また、世界2700ヵ所以上の砂場を巡り、砂場を安心して誰もが遊べる場所にするためのアドバイスやプロデュースを行いながら、砂の粒子、設計、水場、衛生管理、清掃方法など、さまざまな角度から砂場の研究をする砂場研究家。 土や砂にふれる楽しさをもっと知ってもらいたいという思いから、「ピカピカのどろだんごづくり」のワークショップを全国で開催中。 これまでのワークショップへの参加人数は子どもから大人まで、合わせて3000人超。子どもたちから呼ばれているあだ名は「ドロシー」。 https://sunaba-inc.com/

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2011年の東日本大震災時、災害救助で被災地に入り、災害に向けて各人が日頃から備えることの重要性を実感。防災士の資格を取得し、防災・減災に関するさまざまな活動を行っている。 また、世界2700ヵ所以上の砂場を巡り、砂場を安心して誰もが遊べる場所にするためのアドバイスやプロデュースを行いながら、砂の粒子、設計、水場、衛生管理、清掃方法など、さまざまな角度から砂場の研究をする砂場研究家。 土や砂にふれる楽しさをもっと知ってもらいたいという思いから、「ピカピカのどろだんごづくり」のワークショップを全国で開催中。 これまでのワークショップへの参加人数は子どもから大人まで、合わせて3000人超。子どもたちから呼ばれているあだ名は「ドロシー」。 https://sunaba-inc.com/

きのした ちず

木下 千寿

ライター

福岡県出身。大学卒業後、情報誌の編集アシスタントを経てフリーとなる。各種インタビューを中心に、ドラマや映画、舞台などのエンターテイメント、ライフスタイルをテーマに広く執筆。趣味は舞台鑑賞。

福岡県出身。大学卒業後、情報誌の編集アシスタントを経てフリーとなる。各種インタビューを中心に、ドラマや映画、舞台などのエンターテイメント、ライフスタイルをテーマに広く執筆。趣味は舞台鑑賞。