認知度8割・実践4%のワーケーションを「子連れ」でやった賢い工夫

親子deワーケーション主宰・児玉真悠子さん「子連れワーケーションのはじめ方」#1

ワーケーションコンシェルジュ:児玉 真悠子

児玉さんが初めて本格的に子連れワーケーションにトライした山口県萩市。江戸時代の史跡や幕末の偉人ゆかりのスポットが多く残る。 写真提供:児玉真悠子
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2020年以降、コロナ禍の影響を受けてリモートワークが急速に拡大。この流れにともなって今、注目を集めているのが「ワーケーション」です。

これは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語で、その名の通り旅先などで休暇をとりながら働くこと。実は、この新しい働き方には、親子ともどもにメリットがいっぱいです。

とはいえ、観光庁の調査(※1)によると、ワーケーションの認知度は約80%と高いものの、その実施率は4.3%ととても低いのが現実。
※1=ワーケーション、ブレジャーの活用実態に関する調査

また、「ワーケーション導入において受入地域や施設に整備してほしいこと」の問では22.2%が子育て支援を希望しています。

子連れワーケーションを企画・推進するために起業し、一般社団法人日本ワーケーション協会公認のワーケーションコンシェルジュを務める児玉真悠子さんのケーススタディから、子連れワーケーションを成功させるためのポイントを紹介していきます。

子どもの相手を満足にできず働いていることにどこか罪悪感を覚えているパパママ、「子連れだから」とワーケーションをあきらめているパパママは必見です。
※全3回の1回目

株式会社ソトエ代表の児玉真悠子さん。 写真提供:児玉真悠子

命を削るように仕事と育児をこなした会社員時代

もともとは出版社で書籍の編集をしていた児玉さん。2人目出産後の2014年に退社し、フリーランスの編集者・ライターとして独立しました。当時、長男は4歳、長女は0歳で、仕事と育児の両立に限界を感じたことがその理由です。

「会社員時代は、平日は完全にワンオペなうえ夫の出張も多く、『命を削って働いている!』といった感じで体力的にもキツかったです。夫との喧嘩も増え、どちらかが働き方を変えなければ、家族が幸せではないと感じました。

しかし、具体的にどこを変えていいのか分からず、時短勤務に戻してみたり、家事代行を利用してみたり。試行錯誤した結果、自分が独立するという道を選びました」(児玉さん)

親にいろいろな場所に連れて行ってもらい、思いっきり遊んでいた自身の子ども時代と、長期休暇もそれほど取れず保育園と自宅を往復する長男との日々を比べ、「罪悪感も抱えていました」と児玉さんは振り返ります。

「保育園には感謝しかありませんが、もっといろんな場所へ連れて行ってあげたり、いろんな世界を見せてあげたいという気持ちが強かったですね」(児玉さん)

独立をして場所にとらわれない働き方が可能になったことで、子連れでの旅先で「休暇を取りながら仕事をする」というスタイルが児玉さんの中で自然と定着していきます。

振り返れば独身の頃から、スノーボード板とパソコンをかついでカナダに行ったりと、自覚せずしてワーケーションを実践していたという児玉さんですが、そうしたスタイルを「働き方として公言してもいいんだ」と気が付いたのは、山口県萩市での仕事がきっかけでした。

古民家で子連れワーケーションを実証実験

2019年夏、山口県萩市から、「自らワーケーションを実践して、その魅力をまとめた冊子を作ってほしい」との依頼が舞い込んできます。「子連れなら行けます」と返答したところ萩市が快諾。

当時はまだワーケーションの認知度も低く、ましてや子連れで実践している人はほとんどいませんでしたが、夏休み中だった小学5年生の長男と、1年生の長女を連れて10日間滞在しました。

児玉さんの実体験をもとに制作した萩市のワーケーションに関する冊子。 写真提供:児玉真悠子

城下町の佇まいが残る萩市には、西郷隆盛、大久保利通と並び「維新の三傑」と称された木戸孝允(きどたかよし)の旧宅や、吉田松陰(よしだしょういん)が教えていた松下村塾など、幕末の志士ゆかりのスポットが点在しています。

「かつて時代を大きく動かした人々の存在を肌で感じました。『場のもつ力』に刺激され、私はこれから何をしていきたいのかと、自分の生き方を内省できる場所でもありました」(児玉さん)

児玉さんが宿泊したのは、長州藩の武具方御用達商人の旧宅を改修した「梅屋七兵衛旧宅」。以前は重要文化財として一般公開されていましたが、現在は萩市での暮らしを体験できる「お試し暮らし住宅」、愛称「#梅ちゃんち」として安価で貸し出されています。

3DKの広々とした住宅内はWi-Fi完備、個室で仕切られたワーキングスペースもあり、仕事をする環境は申し分なし。

日中は、公園や児童館など子どもたちが遊べる場所をメインに訪れ、同時に仕事もできるかどうかを実証実験。また、子どもたちが寝ている早朝や、宿題中のすきま時間を活用して仕事をしました。

図書館に隣接された児童館内のスペースでタブレットを使ってメールチェック。 写真提供:児玉真悠子
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