子どもの成長「乳幼児期〜学童期〜思春期」に合わせた部屋割り大公開 2LDKに5人家族でも「パーソナルスペース」ができる〔一級建築士が伝授〕

「家が狭い!」ファミリーを救う“間取り改造”計画【3/3】~部屋作りの実践~

一級建築士、模様替えアドバイザー:しかま のりこ

●【実例②B家 3LDKに夫婦+子ども4人の6人家族】の場合

3LDK(リビングダイニング 10.1畳+リビング隣の洋室A 6.1畳+洋室B 7.3畳+洋室C 5.3畳)に、夫婦と子ども4人の計6人で暮らしているB家のケース。

「年齢差がある4人きょうだいは、第1子が思春期に入ったときにパーソナルスペースを設けるのをおすすめします」と、しかまさん。

[1]乳幼児期〜学童期が混在
子ども4人が乳幼児期から学童期(小学生)まで混在する時期は、少しきゅうくつですが、家族6人で洋室B(7.3畳)に布団を並べ寝室に。

学童期の子はリビング隣の洋室A(6.1畳)を勉強部屋に。そして残りの洋室C(5.3畳)は、親の仕事部屋として確保できます。

乳幼児期〜学童期が混在する間取り(3LDKに6人家族)
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[2]学童期(小学校以上)
「子どもたちの年齢が近ければ、末っ子が小学校に上がった時点で子ども用の寝室を洋室B(7.3畳)にしても。その場合、親の仕事部屋にしていた洋室C(5.3畳)を親の寝室に変え、仕事スペースはリビング内に移動するのも手です。

子どもたちの年齢が離れている場合は、上の子たち2人だけ洋室C(5.3畳)を寝室にし、下の子たち2人と親は引き続き一緒に洋室B(7.3畳)を寝室として使ってもいいでしょう」

子ども3人が学童期の間取り(3LDKに6人家族)

[3]思春期
そして子どもが思春期に入ったら──。
「思春期は、完全な一人部屋を求める子もいます。そこで、思春期に入った子に洋室C(5.3畳)の個室を与え、残りの子3人と親で共有する2部屋を用意。

共有部屋の洋室A(6.1畳)は2つに分けて、子1人(A)と親1人(D)で共有します。親1人分の就寝スペース(D)と、子ども部屋(A)を突っ張りパーテーションで仕切りをつけて作ります。

洋室B(7.3畳)は子2人で共有し、2段ベッドと机を設置。子どもたちの共有部屋(B)は、机の間に突っ張り型のカーテンをつけることで個室っぽい雰囲気に」

思春期の間取り(3LDKに6人家族)
子ども2人の共有部屋(B)。机と机の間に突っ張り型のカーテンを挟むことで、個室のような空間ができあがる。

もう一人の親は、リビングの一角に仕事兼就寝スペースを作り、夜はソファベッドをベッドの形にして就寝します。これで、両親ともパーソナルスペースをもつことができます。

いかがでしょうか。A家・B家ともに、数回の模様替えで買い足したのは机やベッドくらいで、そのほかは同じものを移動したり形を変えたりして上手に使いまわしたそうです。

「数年先を見すえ、どの部屋でも使い回しがきく家具を買っておくと、経済的ですよ」と、しかまさん。

限られた資金は「住居費より教育費」に

最後に、しかまさんは改めて、「狭くてもいい。広さばかりにとらわれないで」と話します。

「以前当社でアンケート調査をした際、2DKの団地に4人家族、5人家族で住んでいて、自分の居場所がほとんどなかったという子が何人かいました。そうした中でも、現役で国立大学の医学部に入った子もいます。

このことからいえるのは、無理して完璧な環境を整えなくてもいい。それより大切なのは、子どもと向き合い、その子の成長・発達や性格に応じて、メンタルが安定するよう、大きさにとらわれずにパーソナルスペースも作ってあげることです。

そうやって住居費を最低限におさえながら、教育費の比重を増やして子どもの未来の可能性を伸ばしてあげたほうがいいと、私は思います。1人1部屋の個室を与えられる広めの家を買ったけれど、住宅ローンに圧迫され、その結果子どもが奨学金の返済で泣いている……というケースもよく聞きますから。

『○○を整えれば○○な子に育つ』という正解の法則はないし、『狭い=ダメ』ではない。狭い家でも立派に育った子はいっぱいいます。きょうだいが一緒の部屋で過ごしたことで絆が深まり、協調性が育まれていくケースも多々あります」

─・─・─・─・


わが子が全員巣立つまであと何年? もし10年以内なら、今の家でわずかながらもパーソナルスペースを作り、浮いた住居費を教育費に充てたほうが建設的──そんな、しかまさんの言葉に、ほっと胸をなでおろすファミリー層は少なくないはず。

分譲・賃貸住宅ともに高騰し続ける今、“部屋作りの工夫”が大きな助けになりそうです。

●しかまのりこPROFILE
COLLINO一級建築士事務所主宰。一級建築士、模様替えアドバイザー、建築基準適合判定資格者、耐震診断士。ゼネコン建築設計部等で設計・検査・審査など携わった住戸数はのべ5000件以上。独自のメソッドで、500件の問題を解決してきた。

取材・文/桜田容子

しかまさんがさまざまな家族構成と間取りの実例を紹介し役立つヒント満載の『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)
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しかま のりこ

Noriko Shikama
一級建築士、模様替えアドバイザー

COLLINO(コリーノ)一級建築士事務所主宰。一級建築士、模様替えアドバイザー、建築基準適合判定資格者、耐震診断士。 ゼネコン建築設計部等で設計・検査・審査に携わった住戸数はのべ5000件以上にのぼる。現在は独立し、機能的でおしゃれな部屋作りを専門に行うCOLLINO一級建築士事務所を設立。部屋を「空間分け」「動線」「収納」の観点でつくる独自のメソッドで、500件の問題を解決してきた。 近著に『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)がある。 ●COLLINO一級建築士事務所HP

COLLINO(コリーノ)一級建築士事務所主宰。一級建築士、模様替えアドバイザー、建築基準適合判定資格者、耐震診断士。 ゼネコン建築設計部等で設計・検査・審査に携わった住戸数はのべ5000件以上にのぼる。現在は独立し、機能的でおしゃれな部屋作りを専門に行うCOLLINO一級建築士事務所を設立。部屋を「空間分け」「動線」「収納」の観点でつくる独自のメソッドで、500件の問題を解決してきた。 近著に『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)がある。 ●COLLINO一級建築士事務所HP

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。