子どもの「勉強しない」に潜む原因は? 親が変われば子どもも変わる
【今こそ学力観のアップデートをするとき】子どもの好奇心が爆発する親の接し方#3 「探究ナビ講座」で変わる大人の意識
2024.02.14
子どもが「やらない理由」を決めつけないことが大事
探究ナビ講座のロールプレイングやディスカッションで扱う事例は、どれもラーンネットや家庭などで実際に起こったことを題材にしています。先ほどの宿題の事例以外にも、テーマ学習や国語の音読に積極的に取り組まない子など、大人にとっては「やる気がない」ように見える子が登場します。
「子どもが何かをやらないとき、嫌がるときは、その背景に必ず何かしらの『その子なりの理由』があることを、実例を通して知ってほしいんです。
大人は、やらないのは苦手だから、つまり、能力が足りないからと決めつけてしまいがちですよね。でも、理由は多種多様ですし、その中でも比較的多いのが『過去のネガティブな経験』です。否定されたり、マイナスな言葉をかけられたりしたことが原因で、意欲が出なくなってしまうのです」(炭谷氏)
たとえば、絵を描くのが嫌いに見える子は、以前『◯◯ちゃんの絵は何を描いているのかわからない』などと笑われたことで、前向きな気持ちを失っている可能性があります。
その子特有の理由や原因をよく知ろうとせずに、「絵を描くことが苦手なんだ(難しいんだ)」と考えてナビゲートしてしまうと、描き方を細かくレクチャーするなど的外れな方向に進めてしまいます。
また、やる気がないのではなく、やり方が合わないケースもよくあるといいます。
「特に教科学習では、子どもによって学習方法の合う・合わないが顕著に出てきます。声に出して読むのが好きではない子、繰り返し書くのが苦痛な子もいるんです。そういう子でも、異なる方法を選べれば前向きに学習に取り組むようになります。
あとは、小学校低学年の子は、単に不慣れでうまくできないことがよくありますから、得意なことから取り組んで、自信をつけてあげることも大切ですね。だんだんと慣れてくれば、苦手に見えていたことも自然とできるようになります」(炭谷氏)
講座では、そのほかにも子どもの学習モチベーションについても学び、タイプ別にどのようなときに意欲が高まりやすいのか、反対に下がりやすいのかを知るディスカッションなども行います。「やる気がない」「苦手だから」と大人が勝手にやらない理由を決めつけず、さまざまな角度から子どもを知ろうとする体験を通して、より良いナビゲーションとは何かを学んでいきます。
変わるのは子どもではない
ロールプレイングをはじめとした「実感」を伴う学びにより、受講者の考え方や行動は確実に変化していきます。
「程度の差はあるものの、最初は『子どもを変えたい』という気持ちで講座に参加する人がほとんどです。でも、対話やロールプレイングを繰り返すうちに、『変わるのは子どもではない、自分なんだ』と実感されるようです。
講座の中で、私やスタッフが『大人が変わりましょう』などと直接的なコメントをするわけではないのですが、自然とみなさんそうした気づきを得ていきます」(炭谷氏)
大人が自分の意識を変え、子どもと向き合うことで、子どももまた変わっていきます。
第4回は、講座受講者のさらなる変化、「ナビゲーション」を受けて育った子どもたちの現在などを紹介します。
【炭谷俊樹 プロフィール】
ラーンネット・グローバルスクール代表。神戸情報大学院大学学長。1960年神戸市生まれ。マッキンゼーにて10年間日本及び北欧企業のコンサルティングに携わる。新人コンサルタント採用・研修の責任者も担当。デンマークの社会や教育に感銘したことがきっかけとなり、1996年に神戸で子どもの個性を活かす「ラーンネット・グローバルスクール」を開校。1997年、大前研一氏とともに企業のビジネスリーダー育成事業を創業、2005年よりビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科教授(2010年より客員教授)。2010年に神戸情報大学院大学学長に就任。3歳の幼児から企業のエグゼクティブまで幅広い年齢対象で、探究型の教育を実践している。東京大学大学院理学系研究科修士(物理学専攻)。著書に『第3の教育』(角川書店)『ゼロからはじめる社会起業』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。学びを探究するメディア『Q』責任編集。
取材・文 川崎ちづる
【子どもの好奇心が爆発する親の接し方】の連載は、全4回。
第1回を読む。
第2回を読む。
第4回を読む。
※公開日までリンク無効
川崎 ちづる
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。