教育に「探究」が求められるワケ 好奇心を再起動する「Feel度Walk」で親子関係に変化が! 

【今こそ学力観のアップデートをするとき】親子で探究実践#3「Feel度Walkの効果」

大人こそ「好奇心の再起動」が必要

そして、好奇心の再起動が必要なのは子どもだけではない、と市川さんは話します。
「そもそも、なぜ教育に探究が登場したかといえば、先の読めない時代になり、『既存の知識を覚えて終わり』といったこれまでの学習が、通用しなくなっているからですよね。

僕は、探究を『見えないなりゆきを追いかける』と定義しています。探究的な学びを通じて、あらかじめゴールが決まっていない課題に取り組み、見えないなりゆきを追いかけながら試行錯誤を繰り返す。そして、臨機応変に変わっていく力を育む。一つの決まった正解がない中で、新しい社会課題に取り組んでいくためには、こうした力が必要なわけです。

でもよく考えると、これってむしろ大人にとって必要な力じゃないですか。この不安定な世界を生き抜いていかなきゃならないのはみんな同じなんだから、大人だって探究しなくちゃいけないんですよ! むしろ、変化するのは大人のほうが苦手だから、『Feel度Walk』のような場所で、子どもに刺激を受けながら少しずつその感度を高め合っていくことが大切だと思っています」(市川さん)

「Feel度Walk」で親子が「研究仲間」になる

子どもと大人が一緒に「Feel度Walk」すると、その関係性も変わっていきます。

子どもと大人がともに「Feel度Walk」して、知図を作成している様子。  写真:市川力

「『Feel度Walk』でいろいろな『ちょっと気になる』ことを集めていると、子どもと大人がそれを語り合うようになっていくんですよ。

例えば、親子で取り組むと、自然と見つけたものについてシェアするようになります。『最近○○について気になっていて、今日も見たんだけど……』と親が話すと、『ああ、僕も○○は最近よく見かけるよ、でも僕は△△がさ……』と子どももそれに応えて語り始めます。

そういう日々の雑談の積み重ねが、『実は、全然関係ないと思っていた○○と××はつながっているのかも……』といった気づきにつながります。

これって実は、大学の研究室の環境なんですよ! レベルの高い研究室こそ、コーヒーなんかを飲みながら、直接、追いかけているテーマ以外のことを雑談して、そこからヒントを得ているんですよね。『最近こんなことが気になるんだけど、これはどう思いますか』『いや、待ってください。もしかしたらそれは、今の課題の□□につながるかもしれませんよ』なんていう会話は、研究室でよく聞くものです!

『Feel度Walk』によって、大人と子どもが『研究仲間』のようになっていく。上下ではなく横並びの、フラットな関係になっていけることも、その良さの一つだと思っています」(市川さん)

第4回は、学校に『Feel度Walk』が取り入れられる理由、子どもたちの変化などについてうかがいます。

取材・文 川崎ちづる

市川 力(イチカワ チカラ)
一般社団法人みつかる+わかる代表理事/慶應義塾大学SFC研究所上席所員
2004年~2017年まで、東京コミュニティスクールの初代校長として、小学生を対象に探究力を育む学びを研究・実践。現在は、全国各地の学校に赴き探究学習の支援をするとともに、地域の多様な人たちがともに好奇心を発揮できるような、学ぶ場所づくりを行っている。主な著書は『探究する力』(知の探究社)、井庭崇編『クリエイティブ・ラーニング 創造社会の学びと教育』(慶應義塾大学出版会)、『ジェネレーター 学びと活動の生成』(井庭崇氏との共著/学事出版)

『【今こそ学力観のアップデートをするとき】親子で探究実践』の連載は全5回。
#1 Feel度Walkとは?を読む。
#2 Feel度Walkレポートを読む。
#4 学校にも広がるFeel度Walkを読む。
#5 問題解決に役立つFeel度Walkを読む。
※公開日まではリンク無効

25 件
かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。