タブレット純 “みんな同じ”になじめなかった小中学時代「学校でうまくやれなくても生きてればいい」

シリーズ「不登校のキミとその親へ」#9‐3 歌手・お笑いタレント タブレット純さん~ぼくを救ったもの~

歌手・お笑いタレント:タブレット純

本で世界が広がり大きな助けになった

イジメはぼくも相当つらかったし、たしかに深刻な問題です。でも、イジメのほかにも子どもを苦しめる要素は山のようにある。親子関係や先生との関係に悩んでいる子もいるし、友だち関係や何かしらのコンプレックスに苦しんでいる子もいるでしょう。

つらい時期って、狭いところに閉じこめられて、逃げ場がない気持ちになっちゃうんですよね。特に小中学生ぐらいにとっては、学校だったり家族だったり、今いる環境が世界のすべてになってしまう。

もっといろんな世界があるんだ、いろんな人がいていろんな価値観があるんだと知ることは、大きな助けになってくれるんじゃないかとぼくは思います。

世界を広げてくれるのは、やっぱり本がいちばんじゃないかな。若い世代だとスマホをちょこちょこっといじって、ネット上の情報を拾い読みすることで「わかった」ような気になっているかもしれない。自分もネットで情報を得ることはありますけど、対話がないというか、表面的になぞるだけで自分の中にしみ込んでこないんですよね。

中学時代に「カス」とあだ名を付けられたこともあると語るタブレット純さん。  写真:日下部真紀、撮影協力:ラジオ日本
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ぼくは10代のころから、中島らもさんの本に助けられてきました。1980年代から活躍され、2004年にお亡くなりになるまで、たくさんの小説やエッセイを残した方です。

世の中の常識とか規範とかがまったく当てはまらない人で、自分の身体もまったく大事にしていない。アルコール依存症やうつ病になった自分自身も、面白がりながら作品の題材にしていました。

自殺願望の話もちょくちょく出てくるんですけど、「もう死のう」と思ったときに、表から石焼き芋屋さんのアナウンスが聞こえてきて、なんだかバカらしくなってやめたそうなんです。人の生き死にっていうのはそんなもんなんだって淡々と書いてある。そんなことを言ってくれる大人は、自分のまわりには絶対にいませんよね。

あんな人はもう二度と出てこないでしょう。変なことをしているけど地位を築いた大人の姿にぼくはあこがれました。若い人のほとんどは、作品を読んだことがないどころか、名前を聞いたのも初めてかもしれない。だからこそ、あえてオススメします。興味があったら調べてみてください。そういう意味では、便利な世の中になりました。

苦しいとき前向きな言葉は聞きたくなかった

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