小学4・5・6年生【算数のつまずき】 最難関は「2桁の数でわるわり算の筆算」 ポイントと親の教え方を〔元小学校教諭の教育評論家〕が伝授

子どもがすっきりわかる「算数」の解き方・教え方 #3

教育評論家:親野 智可等

5年生 覚えにくい公式は図にすることがコツ

『あるサッカーチームに子どもが20人います。そのうち7人が5年生です。5年生はチーム全体の何%ですか?』

5年生のつまずき単元のひとつといえば「割合」だと親野先生はいいます。

「割合の勉強では前述のような問題を出発点に、次のような問題にも取り組み、これが子どもたちをおおいに悩ませます」(親野先生)

『あるサッカーチームに子どもが20人います。そのうち35%が5年生です。5年生は何人ですか?』

『あるサッカーチームに5年生は7人います。それは全体の35%です。チーム全体は何人ですか?』

「子どもたちは、どれが比べる量(部分)で、どれがもとにする量(全体の量)か理解するのにも手間取りますが、これがわかったとしても公式をしっかり覚えていなくて、問題が解けないことがあります。

割合の勉強につまずいている場合は、べる量ともとにする量がどれなのか教えることと、図を使って公式の『くもわ』を教えるといいでしょう」(親野先生)

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求めたい部分を指で隠すと、わり算とかけ算のどちらで解けばいいのかがすぐにわかります。たとえば、図内の「わ」の部分=割合を指で隠せば、「比べる量/もとにする量」という分数が残るので、わり算の問題になることがわかります。

あるいは比べる量を指で隠せば、「もとにする量×割合」のかけ算だとわかります。テストで割合の問題が出たら、余白部分にこの図を描くことも教えるといいでしょう

6年生 「みはじ」の図で速さの問題は攻略できる!

『4時間で180km走る車と、5時間で255km走る電車では、どちらのほうが速いですか?』

「6年生の難関は、前述のような速さの単元です。

この単元でつまずく子には、公式をしっかりと覚えさせましょう。『みはじ』の図を使うと公式を思い出しやすくなります」(親野先生)

答えを導き出すには、1時間あたりの道のりをそれぞれ求めることが必要ですから、2つの式が必要になることもフォローしてあげましょう。

「算数に暗記教科のイメージはありませんが、算数といえども公式の暗記は必要不可欠です。小学校で学ぶ公式は割合や速さのほかに、面積や体積の公式など、少なくとも20種類はあります。こればかりはどれも覚えないと勉強は前に進みません。

また、図を使って公式を覚えることを思考力がなくなるとの理由で嫌う研究者がいるものの、算数が苦手な子にはわかりやすくて有効です。公式を覚え、解き方を理解するためのきっかけとして教えるといいでしょう」(親野先生)

子どもが算数が苦手な場合は、子どもの目線に立って、子どもがやりやすい方法をとってあげることが何よりも大切です。また、学年、年齢が上がれば上がるほど勉強は難しくなるので、できるだけ早い段階でサポートしてあげましょう。

問題を解いている子どもを見て、かけ算、わり算にケアレスミスが多ければ、前の学年に戻って再勉強することをおすすめしますが、我が子の理解度や進度に合わせて学習する無学年方式を用いて、子どもの学力に応じた通信教材などを活用するのも効果的です。

勉強を𠮟る材料にせず、我が子に寄り添ってあげることが、子どもの算数への意識を変えます。それが算数力アップにつながるでしょう。

取材・文/梶原知恵

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◆親野 智可等(おやの ちから)
教育評論家
長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。

【子どもがすっきりわかる「算数」の解き方・教え方】の連載は、全3回。
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おやの ちから

親野 智可等

Chikara Oyano
教育評論家

長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。 教育評論家・親野智可等ホームページ 「親力(おやりょく)」

長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。 教育評論家・親野智可等ホームページ 「親力(おやりょく)」

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。