デジタル教材と子どもの教育|要注目「デジタル教材」の活用ヒントを専門家が解説

子育てとデジタル教材 「進化系図鑑」「マイクラ」「プログラミング教育」などの活用法

写真:アフロ

デジタル教材(デジタル教科書)とは?

デジタル教材、もしくはデジタル教科書とは、タブレットやPCで利用することを前提とした教材・教科書のことです。たとえば、紙の教科書をそのままPDFなどにしたものが典型例ですが、ほかにもプログラミング教育で使用されるアプリや動画を利用した図鑑、さらにはコンピューターゲームのなかにもデジタル教材と呼べるものがあります。

文部科学省のGIGAスクール構想で、児童生徒すべてに一人一台のICT端末が配布されるいま、デジタル教材の活用は学校教育においても、そして家庭でも必要不可欠です。ですが、子育て世代のなかには、こうした「教材」に不安を持つ人もいることでしょう。

この記事では過去の取材を振り返りながら、最近注目されているデジタル教材の紹介や、デジタル教材の活用をめぐる不安や疑問に対する専門家のアドバイスを紹介していきます。

子育て世代が知らない“進化系図鑑”の世界 図鑑マニアがブームを徹底解説!

ひとくちにデジタル教材といっても種類はさまざまです。たとえば近年ブームになっている「図鑑」にもデジタル教材は存在します。「図鑑の世界の案内人」としてテレビ出演の経験もある千葉県立中央博物館 分館海の博物館分館長の斎木健一先生が、そうした図鑑を紹介してくれました。

斎木先生が挙げるデジタル教材の図鑑は、DVDが付属する図鑑やアプリと連携する図鑑などです。たとえばDVD付きの図鑑は、2011年に発売された講談社の『MOVE』をはじめ数多くあります。また学研の『LIVE』は、専用アプリをダウンロードしたスマホやタブレットを図鑑にかざすことで、3D映像や動画を見ることができます。

「マイクラ」で子どもが次世代を生きるための必須能力が身につく

「ゲームエデュケーション」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ゲームを通じての学習、といった意味の言葉ですが、まさにこの「ゲームエデュケーション」にぴったりのゲームが「マインクラフト(マイクラ)」です。

マイクラとは、仮想空間でものづくりや冒険を楽しめるコンピューターゲーム。世界中で人気のマイクラには「教育版」も用意されていて、実際にプログラム教育や情報教育、共同教育などのデジタル教材として利用されています。

アジア初プロマインクラフター、そしてマイクロソフト認定教育イノベーターのタツナミシュウイチさんによると、マイクラの魅力は「好奇心」を刺激する仕掛けがいたるところに用意されていること。仮想空間内に登場する動物や自然界の物質は、現実世界のものとリンクしているため、マイクラでの遊びを通して、気づくことや謎が深まることがたくさんあります。

「そうすると子どもたちの心の中に、「もっと知りたい」という好奇心が芽生えるんです」(タツナミさん)

3歳児から大人まで遊べるというマイクラの魅力とは。そして、タツナミさんが考える、今の時代だからこそ「ゲームエデュケーション」が必要な理由とは何でしょうか。

「プログラミング教育」はコワくない パパママに教える小学校の事情

プログラミング教育では、一般にプログラミング用のアプリがデジタル教材として利用されています。とはいえ、デジタル教材がなければプログラミング教育ができないわけではありません。

プログラミング教育の専門家、茨城大学准教授の小林祐紀先生によると、プログラミング教育の狙いのひとつは、「論理的に考えてゴールを達成する」プログラミング的思考を身に付けさせることです。

このような思考トレーニングは、ホワイトボードにマグネットのカードと言ったアナログな教材でも行えます。各地の教育現場では各学校や先生たちが工夫をこらしながら、指導方法を模索しているのが現状です。

コロナ禍で子どもの認知能力が低下? 脳科学的な家庭環境づくりとは?

デジタル教材を利用するには、PCやタブレット、そして通信ネットワークなどの機器やインフラが必要です。ですが、すべての学校や家庭がこれらを備えているわけではありません。

たとえば、コロナ禍ではオンラインで授業を行う学校が増えましたが、まだオンライン授業に対応できない学校もあります。また先生や保護者の中にもICT機器の扱いが得意な人もいれば、不得意な人もいます。

こうした学習環境の差が、子どもたちに「発達の差」をもたらしている可能性があると指摘するのは、脳科学者の細田千尋先生です。

「ワークやデジタル教材について、どう考えたらいいでしょうか?」 子育て相談 モンテッソーリで考えよう

一方、モンテッソーリ教育を実践する保護者のなかには、子どもたちにデジタル教材を使わせることの是非を気にする方もおられます。モンテッソーリ教育の専門家・田中昌子さんの意見は「そうした教材には子どもの高い知的要求に応えるようなものはほとんどない」というものです。

「早く正しい答えを出すという効率的なことばかりを求める教材では、感動や幅広い体験を得ることはできない」と語る田中さん。加えて、タブレットやパソコンなどが持つ「依存性」にも注意喚起をしています。

デジタル時代の子育て術 授乳中のスマホの影響とは?

乳幼児と接するときにも注意が必要です。臨床心理士の帆足暁子さんによると、たとえばママやパパがスマホを見ながら授乳させるようなケースでは、赤ちゃんの「アイコンタクト機能が衰える」可能性があるといいます。

デジタル教材ってなに? まとめ

デジタル教材(デジタル教科書)は、現代の学校教育において欠かせないものとなりつつあります。GIGAスクール構想で一人一台の端末が配布された後は、これらの機器でどのデジタル教材を、どのように活用するかが重要になってきます。

とはいえデジタル教材についてはさまざまな意見があり、活用上の注意点もあります。専門家のアドバイスも参考にしつつ、子どもたちの将来にとって役に立つ方法を多面的に考えて向き合っていきましょう。