大人気イラストレーターが描く摩訶不思議な”ゆらゆら”に癒される人続出!

伝えたかったのは、”がんばっていれば、だれかが見てくれている”ということ【読み聞かせ動画あり】

イラストレーター・絵本作家:北澤 平祐

アフタヌンティーのコラボや、洋菓子のフランセのパッケージなどで大人気の北澤平祐さん。イラストレーターをはじめたころからずっといっしょにいたという不思議な”ゆらゆら”が主人公のお話が絵本の形になりました。

可愛すぎる”ゆらゆら”と、ちょっぴりせつなくて、最後はほっと幸せな気持ちになれるお話に”癒される”という人続出! 

北澤平祐さん、”ゆらゆら”について、もっと教えてください!
はじめての作品集が発売になったばかり。めくるだけでうっとりのカラフルワールドです。

『The Current 北澤平祐作品集』
玄光社
 
――はじめての作品集に、小説『ぼくとねこのすれちがい日記』、そして、絵本『ゆらゆら』と、ご自身の新刊が続きましたね。

北澤「ありがとうございます。作品集はもちろん、『ぼくねこ』は長年の連載をまとめたものだし、『ゆらゆら』は構想からもう10年以上たっていて。どの本も、思い入れが深いです」

――連載をまとめたと言いつつ、「ぼくねこ」は本にするときには、文章も絵も、ぜんぶ書きなおされたってホーム社の担当の方から伺いました。

北澤「そうなんです。読みやすくしようとしたら、そのほうがいいだろうと思ってしまって。予想以上に時間がかかりました(笑)」
連載から全ページ描き直しの力作! 北澤さんが飼っていたねこちゃんがモデルのせつない物語。

『ぼくとねこのすれちがい日記』
作:北澤平祐 ホーム社
同じ日の日記なのに、【ぼく】と【ねこ】が感じていることのちがいがおかしい! 【ねことわざ】もお役立ちなのです。
『ぼくとねこのすれちがい日記』より
 
北澤
「『ゆらゆら』も、描きはじめたら思った以上に大変で。

パノラマ感のある絵本にしたいなと思って決めた形なんですが、横に長い絵って、A4サイズの絵が横並びになっているようなものなので、1枚の絵を仕上げるのに、2枚分くらいの時間がかかりました」

――それなのに、見開きごとに絵をつなげていく、という挑戦もしたんですね!

北澤「”ゆらゆら”が左から右へずっと流れていく、というのを表現したくて。

それを知ったニジノ絵本屋さんが絵を全部つなげて巻物のような動画を撮ってくれたのもうれしかったですね」

*動画はこの記事の最後で見ることができます!
左のはたにいる、黄色い子が「ゆらゆら」。
ページをめくると、ゆらゆらがずっと、流れていくように描かれています。

『ゆらゆら』より
『ゆらゆら』は、デジタルで下絵を描き、それをトーレス台ですかして主線を描き、カラーインクで仕上げていくスタイル。

「このカリグラフィーペンはずいぶん長い間使っていて、だいぶ線が太くなってきました。ペン先がだめになって変えたら、絵もずいぶん変わるだろうなあ」と北澤さん。
「”ゆらゆら”は意外と描くのが難しいんです。何度描いても、同じ子が描けない」と北澤さん。「カリグラフィーペンを使うと生まれる、偶然の線を大切にしたい」とも。
同じ下絵から、何枚も描いて、納得がいったものを絵本に使っています。

「”ゆらゆら”は、10年以上前からぼくのなかにいました」

北澤「2007年にアメリカのホテルの内装を描いたことがありまして。そのときの写真をみたらすでにゆらゆらの原形がいました」

――素敵な内装! この白いのが”ゆらゆら”なんですね!
サンフランシスコにあるHotel Tomo (San Francisco)の内装デザイン。白いゆらゆらが! いまでも見ることができるそうです。
北澤「このころは、『これ、なに?』って聞かれたら、適当に『なにものでもなくて すべてである』ってこたえていました。

だから、ゆらゆらは、なんにでもなれるので、『流れ星のゆらゆら』とか『おばけのゆらゆら』とか、いろんな”ゆらゆら”で10冊くらい絵本が作れたらいいなって思っています。

2011年のころ、絵本の作り方を教えてもらえる塾に通ってみたことがあって。そこで描いた作品も、”ゆらゆら”だったんです。このときは、色々うまくいかなくて」

――そうなんですね! でも、もうできあがってるみたいに、きれいですね。

北澤「ありがとうございます。でも、昔の絵は下手すぎて、自分ではもう見たくないかな(笑) もともと、描いてしまった作品はあまり見返さないほうなんです」
絵本塾に通っていたときに仕上げた作品の最後のページ。
「あ、最後、”ゆらゆら”が流れ星になってる!」
北澤さん、ひさしぶりに作品を見返してみて大発見。

なんでもつながっている

北澤「その後、お仕事で『みさき食堂にようこそ』という児童書の挿絵を描いたときに、絵本は描かないんですか、って担当の編集者さんとデザイナーさんに言われたんです。

でも、その編集さんは絵本を出す部署ではなかったみたいで、ほかの会社の編集さんをわざわざ紹介してくださったんです」

――おもしろいですね!

北澤「あんまりないですよね(笑) で、その紹介してもらった編集の方と何度も打ち合わせをしたんですが、なかなか形にならなくって、そうこうするうちにその方が転職して会社が変わって。

転職先であらためて声をかけてくださってできたのが、絵本『どんどん どんどん まいご』(文:相良敦子 ブロンズ新社)なんです」

――『ゆらゆら』ではなく(笑)

北澤「そうなんです。『ゆらゆら』の担当は、3年前に『若草物語1&2』の装画でご一緒した方で、そのときお見せしたラフから”ゆらゆら"を気に入ってくださって、絵本にしましょう、と言っていただきました。

なので、『ゆらゆら』は、『若草物語1&2』のデザイナーさんと同じ、中嶋香織さんです」

「”がんばったら、きっとだれかが見ていてくれる”って思っています」

――北澤さんは、子ども時代をアメリカで生活されていたんですよね。だからアメリカのホテルのお仕事や、CDのジャケットのお仕事などもされていて。アメリカと日本で違うところはありますか。

北澤「『ゆらゆら』のお話で描きたかった、”がんばっていれば、だれかが見ていてくれる”、というのは、ぼく自身が常に思っていることなんです。

『ちゃんと食べてる?』といつも気にしてくれる取引先の人がいたり、個展をやったら?と声をかけてくれたりする友人がいて。ちゃんと手を動かしてもがいてさえいれば、それが何かしらにつながるという経験をしてきました。

アメリカでは、ドライなことが多く、一つ仕事が終わったらそれで終わりなのですが、日本って一度一緒に仕事をすると、ずっと気にかけてくれる感じがします。

だから、アメリカでずっと仕事をしていたら、”ゆらゆら”は、こんなお話にはならなかったかもしれないですね」
北澤さんのアトリエの本棚のごくごく一部。かわいくて、どこか上品、そしてイメージが広がる北澤さんの絵は、装画でも大人気。『ゆらゆら』ができるきっかけになった『若草物語1&2』も発見!

「自分のものは、ほとんど見返さないです。本を読むのも好きなのですが、ほかの方の絵に影響されてしまうのがこわいので、表紙を見なくてもよい電子書籍で読むようにしています」と、ストイック。

「『よあけ』のような絵本をいつか作れたら」

北澤さんが好きだという絵本を見せていただきました。
ここにはありませんが、お嬢さんには「『3時のおちゃにきてください』『ぐりとぐら』なんかをよく読んだかな。そうそう、『ミッケ』もほんとうによくやりました」
ひとつひとつ言葉を選びながら、丁寧にお話してくださった北澤さん。誠実なお人柄に、各界にファンが多いのがとてもよくわかります!

次はどこで、どんな作品と出会えるでしょうか。楽しみでなりません!
『ゆらゆら』
作:北澤平祐 講談社

「ねがいごとは ありませんか?」

ゆらゆらは ながれぼし。
なんだか ふにゃふにゃしているし
のんびり のろまだけれど、ねがいごとは ちゃんと かなえられる。

ゆらゆらは、だれかの願いごとをかなえてあげたいのに、あんまりのんびりしているので、だれも気づいてくれません。

だれか、ゆらゆらに気づいてあげて――
『ゆらゆら』より
『ゆらゆら』より
『ゆらゆら』より

絵本『ゆらゆら』 作:北澤平祐 / ゆらゆら絵本原画展2021 at ニジノ絵本屋 開催記念 (映像制作協力:講談社)

見開きの絵がずっとつながっている『ゆらゆら』。 つなげてみたらどんな風?というのを東京・都立大学にあるニジノ絵本屋さんが作ってみてくれました。 ぴったりのオリジナル音楽つき。ぜひ見てみてくださいね!

ニジノ絵本屋


”お店にある絵本、すべておすすめ!”という、ユニークな絵本屋さん

〒152-0032
東京都目黒区平町1-23-20(東急東横線都立大学駅より徒歩3分)

営業時間
12:00〜18:00 (火曜定休)
http://nijinoehonya.shop/
*この個展は終了いたしました

北澤平祐 個展「みちしるべ みちしるべ」

2021年12月10日~12月15日
場所:HBギャラリー(渋谷区神宮前4-5-4 原宿エノモトビル1F)

方向音痴という北澤さんが「みちしるべ」をいっぱい描いた、という楽しい個展。
「ゆらゆら」もどこかに描かれているそうなので、探してみてくださいね。
きたざわ へいすけ

北澤 平祐

Heisuke Kitazawa
イラストレーター・絵本作家

神奈川県在住。洋菓子のフランセのパッケージやアフタヌンティーとのコラボ、装画や絵本、広告や製品デザインなど、幅広いジャンルで活躍中。               

神奈川県在住。洋菓子のフランセのパッケージやアフタヌンティーとのコラボ、装画や絵本、広告や製品デザインなど、幅広いジャンルで活躍中。