『だれも知らない小さな国』のおちび先生のサンドイッチを作ろう
読んで楽しい、作っておいしいエッセー&レシピ 児童文学キッチン#06
2022.04.29
第6回目は、小林深雪さんが愛してやまない、佐藤さとるの『だれもしらない小さな国』から。いまでこそサンドイッチはあたりまえのものですが、このお話は、第二次世界大戦後まもなくのころ。当時はめずらしかったであろう、乙女ごころがつまったサンドイッチを福田里香さんがイメージゆたかに再現してくれました。(「児童文学キッチン」のほかの記事を読む)
三角平地でセイタカサンがご馳走になった、 おちび先生のサンドイッチ (福田里香)
<「いいえ、きょうは、わたし、おべんとう持ってきたの。」
おちび先生は、たのしそうに、ふろしきづつみをひろげた。ぼくの分まで用意してきたとみえて、サンドイッチがたっぷりあった。
「あの人たちも、ここへこないかしら。」
落ち葉の上にすわりこみながら、そうつぶやいて小屋を見あげた。>
『だれも知らない小さな国』より
このあと、セイタカサンとおちび先生の三角平地でのサンドイッチランチには、三人のヒコたちにおハギちゃん、ヒコ老人も加わり、食事を囲んだ七人には堅い絆が生まれます。
時代は、第二次世界大戦後まもなくの頃。
お弁当におにぎりじゃなく、当時珍しかったサンドイッチをたっぷり作ってきたおちび先生。
それはセイタカサンへのお礼の気持ちだけでなく、乙女心もたっぷりこもっていたはず。どんな具だったのかしら? と想像を巡らし、昭和なサンドイッチを作ってみました。
その後のふたりの進展は、続編で読めますから、ぜひどうぞ。(福田里香)
その「小さな国」は 五感で覚えている 大切な場所(小林深雪)
<ぼくたちの国は、世の中のほんのかたすみで、ひっそりと静かな日を送っていた。こんなところに、大きなひみつがかくされていることなど、だれも気がついていなかった。>
『だれも知らない小さな国』より
そこは、峠の向こうです。
大きな杉林を抜けて、小山を越えると、その向こうには、透きとおった美しい泉がある、三角形の平地に出ます。そこには不思議なもの、まだ誰も見たことのないものが、隠れています。
わたしはいまでも、ときどき、ふっと日常を離れて、その秘密の場所に行きたくなります。だから、子どものときから、この本は、いつでも手の届くところに置いてあるのです。
コロボックルは、姿を見せる人を選びます。優しくて、自然の不思議を素直に信じられる純粋さをもっていて、さらに、秘密と大切なものを守れる忍耐力と強さがなくては、いけません。
主人公のセイタカサンは、少年時代から大人になるまで、長い時間をかけて、コツコツと真面目に小人のことを調べて、ついに秘密を知ります。
けれど、おちび先生はその軽やかさとカンのよさだけで、小人の秘密にたどりつきます。その違いが楽しく面白いのです。
だから、最後に、ふたりが秘密を共有するシーンは圧倒的です。
おちび先生が、靴を川に流して「さあ、とってきて!」と叫ぶ。
「そうか。そうだったのか!」
セイタカさんの感動は、そのまま自分のものになり、その瞬間、わっと感動が押し寄せてきて、胸が熱くなります。
わたしが、この本をはじめて読んだのは、小学校五年生のときです。
泉からあふれて落ちる水の音。ふきの葉の香り。目にしみるような冬の椿の赤い色。
すべてを五感で、いまでもリアルに思い出せます。
あのとき、たしかに、わたしは、あの場所にいて、セイタカサンとおちび先生とコロボックルたちを、そっと見ていた。幼い日に、家族で出かけた旅の風景のように、胸の中に鮮やかに残る記憶。
本は、ひとりで読むものですが、そのとき、決して孤独ではないのです。
(小林深雪)
おちび先生の乙女のサンドイッチを作りましょう(福田里香)
薄切り食パン 8枚
*白いパン、茶色のパン、両方あるととってもかわいいけれど、どちらかだけでもOK
<フルーツサンド>
生クリーム 50 ml
砂糖 小さじ1
いちご 3粒
<卵サンド>
ゆで卵 1個
マヨネーズ 大さじ1
塩、こしょう 適量
<ハムとチーズのサンド>
ハム 1枚
薄切りチーズ 1枚
サラダ菜 2枚
マヨネーズ 大さじ1
練りからし 少々
<コロッケサンド>
市販のコロッケ 1個
トンカツソース 大さじ1
マヨネーズ 大さじ1
1 フルーツサンドを作る。生クリームに砂糖を加え、8分立てにしたものを、パン2枚の真ん中にこんもり塗る。へたを取り、縦2つに切ったいちごをのせ、2枚ではさむ。
2 卵サンドを作る。ボウルにゆで卵を粗くつぶして、マヨネーズを混ぜて、塩、こしょうで味をととのえる。パン1枚の真ん中にこんもりのせ、もう1枚ではさむ。
3 ハムとチーズのサンドを作る。マヨネーズをパン2枚の一面に塗る(パンの湿り止めになる)。好みでからしも塗る。ハム、チーズ、サラダ菜をパンにこんもりのせ、はさむ。
4 コロッケサンドを作る。コロッケの両面にトンカツソースとマヨネーズを塗る。コロッケをパンの真ん中にのせ、はさむ。
5 1~4をラップで包み、冷蔵庫に30分入れて、パンと具をなじませる。ラップをはずし、よく切れる包丁でパンを半分に切る。
『だれも知らない小さな国』についてあれこれ(小林深雪)
お話から生まれた23のかわいいお菓子がレシピ付きで作れる!
福田 里香
福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。
福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。
小林 深雪
埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。
埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。