『若草物語』“ジョーのいちごクリーム”を作ろう
読んで楽しい、作っておいしいエッセー&レシピ 児童文学キッチン#03
2022.04.08
3回目は、『若草物語』から。ジョーは失敗してしまったけれど、福田里香さんのマジックでおいしいレシピになった“ジョーのすっぱいいちごクリーム”です。(「児童文学キッチン」のほかの記事を読む)
すっぱいクリームの、だけどおいしい赤いいちごの一皿 〜四姉妹の次女ジョーに寄せて(福田里香)
<でも、期待をかけていたのはイチゴだ。たっぷり砂糖をふりかけておいたし、こってりしたクリームをそえている。
きれいなガラス皿がみんなにまわされると、白いクリームの中にバラ色の島々がうかんでいるようなデザートを見て、みんなは目を輝かせた。
最初に食べたのはクロッカーさんだった。だが、すぐにうっと顔をしかめ、あわてて水を飲んだ。あせってローリーを見ると、必死で食べているけれど、くちびるがいささかゆがんでいるではないか。
デザート大好きのエイミーはひと口食べたとたん、ナプキンで顔をおおい、テーブルを立ってしまった。
「どっ、どうしたの?」
ジョーはうろたえた。>
『若草物語 Ⅰ』より
それはよりによって、大嫌いなミス・クロッカーと、悪友ともよべるお隣のローリー。
料理を担当したジョーは、前菜から主菜、パンに至るまで大失敗。最後の頼みの綱は、いちごのデザート。
しかし、ここにも思わぬ落とし穴が待ち受けていました。ジョーが何をどう間違えたのかは、ぜひ本を読んでみてください。
ここでは「クリームがすっぱくてもおいしいデザート」を作ってみました。ヨーグルトを水切りすると、おいしいすっぱいクリームに仕上がります。 (福田里香)
100年以上たってもリアルなガールズストーリー(小林深雪)
<「魔法のインクを使って、すごい小説を書くんだ。わたしが死んだあとものこるようなもの。いつか、みんなをびっくりさせてあげる。お金持ちになって、有名になりたい。」>
『若草物語 Ⅰ』より
「本を書きたい。」
「ピアノを弾きたい。」
「絵を描きたい。」
若草物語の四人姉妹のそれぞれの夢は、世界中の女の子たちの夢です。
温和で美しい長女のメグ、男の子のようにはっきりした性格の次女ジョー、だれよりも心優しい病弱な三女ベス、おしゃまで少し生意気な末娘エイミー。
だれがいちばんということはなくて、ひとりひとり、個性が違うからこそ、魅力的です。そして、それぞれに、やはり欠点もあって、失敗したり、悩んだりする。
見栄っ張りのメグは、過剰なおしゃれをして失敗するし、ベスは内気すぎて家族以外の人間とコミュニケーションがとれません。短気なジョーとわがままなエイミーの大げんかは深刻な事態を招きます。
百数十年前のアメリカで書かれた物語なのに、姉妹たちの悩みや暮らしの工夫は、いまの時代のわたしたちと重なります。
食事やデザート、ファッション(いかにお金をかけずにおしゃれするか!)、ガーデニング、クリスマスなどのさまざまなイベント、郵便局や新聞社ごっこ。日々の楽しみや工夫のディテールが細かく書いてあって、それを読むのがとても楽しい。そして、家族や友だちのこと。もちろん、となりの家に住む男の子、ローリーのことも。
日々の生活を大切に考え、自分自身と向き合い、少しでもいいから自分の夢に近づこうと手をのばす四人の女の子たちはリアルです。それが、こんなにも長く読み継がれてきた、いちばんの理由だと思います。
人生は選択の連続です。
四人姉妹を見ていると、自分が選ばなかったものを持っている人をうらやむのではなく、自分が選んだもの、持っているものを大切にしたいと思えて、前を向いて歩く勇気をもらえるのです。
子ども時代、友だちと会えなくてさみしいときは、本を開いて友だちに会いにいっていました。
いまでも、本を開けば、いつでも昔の友だちと再会できます。メグが、ジョーが、ベスが、エイミーが、そして、子ども時代のわたしも、いつでもそこにいるのです。(小林深雪)
おいしい、すっぱいクリームの秘密は、ヨーグルト(福田里香)
プレーンヨーグルト 1パック(400g)
いちご 1/2パック(150g)
粉糖 適量
市販のメレンゲ(あれば) 数個
1 フロマージュフレを作る。マグカップの上に、ペーパーフィルターを敷いたコーヒードリッパー(またはガーゼを敷いたざる)をセットし、そこにヨーグルトを入れる(写真参照)。これを冷蔵庫に一晩入れて、水切りをする。
3 1をスプーンですくって、皿に盛りつける。その上に2をのせて、茶こしでたっぷり粉糖をふるう。あれば、メレンゲをのせる。
『若草物語』ってどんなお話?(小林深雪)
23作品のお菓子がレシピ付きでかんたんに作れる!
福田 里香
福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。
福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。
小林 深雪
埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。
埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。