『あしながおじさん』“女子寮のキャンデー・パーティー風トフィ”を作ろう
読んで楽しい、作っておいしいエッセー&レシピ 児童文学キッチン#04
2022.04.15
女子大寮のキャンデー・パーティー風 チョコレート・アーモンド・トフィ ~ジュディが書いたジョン・スミス氏への手紙から (福田里香)
<みんなはならんで、エプロンのまま、手に手にフォークやフライパンをもって職員室に行進しました。>
『あしながおじさん』より
ここでいうキャンデーとは、飴玉ではなく、砂糖を煮詰めた菓子の総称……キャラメルやトフィ、ファッジなども指します。
二十世紀初めアメリカでは、女子が集まってキャンデーを作るのは、ポピュラーな遊びで、それぞれ秘伝のレシピを持っていたみたいです。ジュディたちが作ったのは、今では古典的なレシピとして知られる、チョコとアーモンド入りトフィあたりでしょうか。
あしながおじさんへの手紙に添えるジュディの挿絵はいつも最高ですが、特に「できばえのよくないキャンデーを捧げて職員室へ行進する女子大生」の絵は傑作。本でぜひ見てみてくださいね。
だれかを夢中にさせる手紙やメールの書き方、教えます!(小林深雪)
<あしながおじさま
かりに、体育館のプールに、レモンゼリーがいっぱいになっていたら、泳ぐ人は、浮いていられるでしょうか、しずんでしまうでしょうか。サリーは泳げるといいますが、わたくしは、どんなにじょうずな人でもしずんでしまうと思います。レモンゼリーの中でおぼれるなんて、おもしろいではありませんか。>
『あしながおじさん』より
でも、その人の本名は明かされず、返事も期待してはいけません。ジュディは、「あしながおじさん」とあだ名をつけ、月一回といわず、月になんども、返事の来ない手紙を書き続けます。
ずっと孤児院で育ったジュディにとっては、大学の寄宿舎生活のなにもかもが新鮮です。「一分一秒がとても幸せ」で、「まるで物語のヒロインみたいな気がします。」
そんなジュディがはじめて見る世界は、すべてが、きらきら輝いています。
「自分のうちや、お友だちや、本にめぐまれている少女たちがしぜんに知っていることがらを、わたくしはぜんぜん知らないんです。」
だから、ジュディは勉強したくてたまらないのです。
ジュディは、もうぜんと読書をします。『不思議の国のアリス』や『若草物語』。
わたしは自分が二十世紀はじめのアメリカの女の子と同じ本を読んでいることがうれしく、すぐに友だちになれそうです。
そして、わたしが、ジュディを好きなのは、正直なところ。失敗も、自分のうそも、悪いところも包み隠さず、なんでも手紙に書いてしまうところがすごい。
子ども時代は、ひとりぼっちで、陰気で反抗心ばかりだった。だって、孤児院では想像力のきざしが見えると踏みつぶされてしまう。ほめられるのは義務だけ。でも、だれにでもいちばん必要な性質は想像力じゃない? これがあると、ほかの人の身になって考えることができるでしょ?
いまの時代なら、ジュディは、大人気ブロガーになっているかもしれません。
そして、もうひとつ、ジュディの恋の進展にも、どきどきさせられます。この本は「わたくしはもうけっして、一秒だって、あなたを悲しませはいたしません。」という素敵なラブレターで終わります。
ああ、ほんとうによかった! わたしは、心の中で、ジュディと握手したのです。(小林深雪)
20世紀の女の子たちのように、みんなでキャンデー作りを楽しむ気分で(福田里香)
a
グラニュー糖 100g
水 大さじ3
水飴 小さじ2
無塩バター 110g
ホールアーモンド 50g
板ビターチョコレート 120g(約2枚)
下準備:型にクッキングシートを敷いておく。チョコレートは細かくきざんでおく。
1 アーモンドは、弱火のフライパンで、カリッとするまでからいりする。
*150℃のオーブンで10分焼いてもいい。
2 1が冷えたら、包丁で細かくきざむ。
3 鍋にaを入れ、弱火にかける。木べらで混ぜながら、煮詰め、キャラメル色になったら、型に流す(写真参照)。
5 4の上に、2を一面にちらす。スプーンの背などで軽く押さえてチョコになじませる。廊下などの寒いところに置く。
6 5が完全に固まったら、型から出して、2.5㎝角に切り分ける。1個ずつ、ワックスペーパーなどで包む。
『あしながおじさん』についてのあれこれ(小林深雪)
お話から生まれた23のかわいいお菓子がレシピ付きで作れる!
福田 里香
福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。
福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。
小林 深雪
埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。
埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。