児童養護施設出身モデル・田中れいか “18歳の壁”を越え雑誌の表紙を飾るまで

児童養護施設出身モデル・田中れいかさんに聞く「なりたい自分になる」 #3~短大&社会人編~

モデル:田中 れいか

YouTube「社会的養護専門 たすけあいch」の撮影中の田中れいかさん(右)。人気動画となり19万回再生を突破した。  写真提供:田中れいか

「生い立ち関係なく誰でもなりたい自分になれる!」をスローガンに、社会的養護の情報を発信し続ける児童養護施設出身のモデルの田中れいかさん(26)。

モデルの仕事と社会活動が認められ、超メジャー誌『Forbes JAPAN』の表紙を飾るなど、幅広く活躍しています。

高校3年生で自立を余儀なくされ、幾重もの試練をどのように乗り越えたのでしょうか。
今の彼女を突き動かす原動力を伺いました。

※第3回(#1#2を読む)

田中れいかPROFILE
7歳から18歳までの11年間、東京都世田谷区の児童養護施設で暮らす。短期大学卒業後、モデルの道に。ミス・ユニバース2018茨城県大会準グランプリ・特別賞受賞。モデル業のかたわら、自らの経験をもとに、親元を離れて暮らす「社会的養護」の子どもたちへの理解の輪を広げる講演活動や情報発信をしている。

「なりたい自分になる」と信じて目指したモデルへの道

児童養護施設出身のモデルの田中れいかさん(26)は高校時代、がむしゃらに働いて貯めたバイト代60万円を元手に、保育士を目指す短大生として一人暮らしがスタート。

現行の児童福祉法では、児童養護施設や里親もとで育つ若者の自立支援は原則18歳(最長22歳)までと定められ、自立後に困窮、孤立する若者が後を絶たず、「18歳の壁」と指摘されてきました。2022年、児童福祉法が改正(2024年4月施行)され、自立支援の上限年齢が撤廃。施設や自治体が自立できると判断するまで継続できるようになりました。

そして田中さんもまた、「18歳の壁」を感じた1人でした。

部屋にぽつんと1人。7歳で児童養護施設に入所してから、たくさんの人の中で暮らしていたので、静まり返った部屋で寂しさに襲われました。

「無音が耐えられなかったです。天井を見上げて毎晩、泣きながら寝てました」と振り返ります。

通学とバイトの日々。短大の友人はそれなりに好きなことをして遊んでいるのに、田中さんは生活費を稼ぐため遊ぶ余裕はありませんでした。

次第に疎外感を覚えるようになりました。誰を頼っていいかも分からず、短大から足が遠のいていきました。11年間暮らしていた「おうち」である施設は、いったん退所すると気軽に頼りづらい存在に感じてしまい、心の拠り所が見つかりませんでした。

「一度だけ、仲の良かった先生に話を聞いてもらいたくて、施設の部屋に電話を掛けたことがあります。でも話したかった先生は不在で……。

仕方のないことだとはわかっていましたが、『今話したかったのに』という気持ちになり、そのタイミングで『もういいや』ってすぱっと糸が切れた感覚になって施設を頼るのはあきらめました」

“頼れるのは自分だけ”と実感した出来事でした。短大は留年が決まり、経済的にもギリギリの状態でしたが、自分が自分を裏切ってはダメだと退学を踏みとどまりました。

在学を決断できたもう一つの理由は、世田谷区の事業「せたがや若者フェアスタート事業」の存在でした。退所後の若者の自立を応援する事業で、経済的支援を得られることになったのです。田中さんの家賃負担額は1万円になり、生活に少し余裕ができました。

短大時代に友達との身体表現発表会の打ち上げにて。  写真提供:田中れいか
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