2022.02.04

ブックマーク

読み聞かせを大切にされた雅子さまが伝える「親子三代にわたる絵本への想い」

愛子さまご成人 今あらためて知りたい天皇陛下と雅子さまの子育て

皇室ジャーナリスト:渡邉 みどり

成人となられた愛子さま。写真提供/宮内庁

2021年12月5日、愛子さまは、女性皇族の中では最高位の勲章「宝冠大綬章」を天皇陛下から授与され、ローブデコルテに勲章とティアラを身につけた正装でお出ましになりました。勲章をつけるオレンジ色のリボンは「綬」といいます。写真提供/宮内庁

60年以上にわたって皇室の取材を続けてきた、皇室ジャーナリストの渡邉みどりさんによる寄稿第2回は、雅子さまが愛子さまと絵本を読んで過ごすひとときについてです。

以下の本文、キャプションでは、敬称・名称・地名・施設名・大会名・催し物名などは、その当時のものを使用しています。

読み聞かせをされているうち、すっかり絵本の内容を覚えてしまった愛子さま

2002年10月はじめての母娘だけでの外出は、東京・銀座の書店、教文館でした。「藤城清治影絵展」を鑑賞される雅子さまと愛子さま。写真/読売新聞/アフロ

2004年、2歳8ヵ月の愛子さまのかわいらしいビデオが公開されました。7月に皇太子さまと宮内庁職員が撮影したものです。
ピンク色のTシャツ姿の愛子さまが、皇太子さまとお話をしながら絵本をめくっています。絵本は『うずらちゃんのかくれんぼ』(作:きもとももこ 福音館書店)。

絵本をめくる途中で、愛子さまは撮影をする皇太子さまに、
「パパー」
と呼びかけたりしています。

愛子さまは、絵本をめくるときに、
「もういいかい、まあだだよ」
「うずらちゃんはどこにかくれているのかなー」
などとおしゃべりしています。

ところがです、おやおや、絵本は上下が逆さまです!
愛子さまはお父さまに逆さまのページを見せながら、まるで読んでいるかのようにお話しされているのです。

日ごろから、雅子さまが愛子さまに読み聞かせをされているのはよく知られていました。きっと何度も読み聞かせをしてもらっているうちに、愛子さまは内容をすっかり覚えてしまったのでしょう。なんともかわいらしいご様子でした。

『フランダースの犬』を母に読んでもらっては涙ぐむ、小さな雅子さん

6歳の雅子さん(左)。双子の妹たちと。アメリカ合衆国ニューヨークの自宅にて。写真提供/宮内庁

絵本は、雅子さんが小さいころに、母の小和田優美子さんからさかんに読んでいただいたものでした。

雅子さんは、外交官である父の恆(ひさし)さんの転勤に伴って、海外生活を長く続けていました。1歳8ヵ月でモスクワへ引っ越し、4歳7ヵ月からはニューヨークへ。日本に帰国したのは小学生になってからでした。

海外生活の間、小和田家では毎晩、読み聞かせの時間がありました。日本にいるおばあさまたちから送られてきた絵本や童話を優美子さんが開くと、雅子さんと2人の妹たちが集まってきます。子どもたちは床に車座になって、母の読み聞かせを楽しむのです。子どもたちは毎日、それぞれが好きな本を順々に読んでもらうのでした。

雅子さんがとりわけ好きだったのは『フランダースの犬』でした。ネロ少年とパトラッシュが死ぬクライマックスでは涙ぐんでいたといいます。
「お気に入りの『フランダースの犬』は、何度も何度も繰り返して読んでもらって、そのたびに涙ぐんでいるのです。心の優しいお子さんでした」
と、赴任地で小和田家のお世話係をしていた井上道子さんは語ってくれました。

昼間、保育園ではその国の子どもたちにまざって、不自由なく外国語を話している雅子さん。寝言もロシア語で言っていたと伺いました。両親は、家庭では日本語で話すようにつとめていたといいます。母が日本の言葉で語る絵本や童話で、雅子さんは感動する心を育んでいったのです。

小和田家の教育方針は、父が海外へ転勤しても必ず家族全員で赴任地で生活するというものでした。たとえ転校というハンデがあっても、原則として子どもは親と一緒に暮らすのです。

国際法の世界的権威であり、ハーバード大学の客員教授も務めた父の恆さんは、のちに記者会見で、家族を連れて海外で生活する理由をこのように話しています。
「子どもは親の背を見て成長することが大切だからです。伸びやかな精神と優しい心を持った子に成長してほしかったのです」

父の赴任先の国々で、優美子さんが、娘の雅子さんが日本を忘れないようにと払った努力は並大抵のものではなかったでしょう。海外であっても、お正月やひな祭り、七夕といった日本の年中行事は欠かさず行ったといいます。おばあさまの小和田静さんと江頭寿々子さん(優美子さんの実母)も孫たちに浴衣や童話の本、人形などを送り続けたのです。

リズムの美しさや言葉の感覚を大事にされた美智子さま

絵本を手に軽井沢へ向かわれるご一家。1964年9月。写真提供/JMPA

愛子さまの父、天皇陛下のご幼少時代も、母の美智子さまが読み聞かせをなさっておいででした。

私が日本テレビ放送網に勤務していたころのことです。ご養育係を務めていた濱尾実東宮侍従にお願いして、浩宮さま(今の天皇陛下)のお部屋に入らせていただいたことがありました。

学習院初等科に通っていらっしゃる浩宮さまのお部屋の本棚には、その年ごろらしい『昆虫図鑑』『日本昔話』、浜田廣介の『ニゲタカメノコ』などの本と一緒に、藤田ミツさんの『カミサマノオハナシ』上下二巻が、途中まで読まれていたのか、無造作に差し込まれていたのです。

昭和15年度版の『カミサマノオハナシ』は私の疎開荷物の中にも入っておりました。

この本は、美智子さまがお子さま方に読んでお聞かせになったもので、もともとは、皇太子(今の上皇さま)が幼少のころにご自分でお読みになっていた本でもありました。わんぱくな次男坊礼宮さま(今の秋篠宮さま)は「東宮のスサノオ」を呼ばれていました。

美智子さまが、お子さま方と努めてご一緒になさろうとしていたのが読み聞かせだったのです。とりわけ日本の古典や英語の詩の朗読をされていたといいます。一つひとつの意味を理解するよりも、美智子さまはリズムの美しさや言葉の感覚を感じてほしいと思われたそうです。

そして、浩宮さまが少し元気がないように思われたときには、言葉もリズムも面白くして、言葉遊びのように口ずさまれることもありました。

ご自分たちが子どものころに親しんだ読み聞かせを、娘の愛子さまになさっていた天皇陛下と雅子さま。お父さまとお母さまとごいっしょに本と親しみながら育たれた愛子さまは、文章を書くのがとてもお上手だといわれています。
それは、親から子に伝えられた読み聞かせのたまものといえるでしょう。


(構成・編集協力 高木香織)

愛子さまがお読みになる映像が公開され大人気となった絵本

『うずらちゃんのかくれんぼ』
作:きもとももこ 福音館書店

うずらちゃんとひよこちゃんがかくれんぼを始めました。色と形を上手に使って、花に隠れたり、ひょうたんに隠れたり……。うずらちゃんと一緒に、楽しいかくれんぼ遊びのできる絵本です。

80年ぶりに復刻。美智子さまが新天皇に読み聞かせをした、おさない子どものための『古事記』

『かみさまのおはなし』
原作:藤田ミツ 
復刻提案:渡邉みどり 構成:高木香織 講談社

平成の皇后・美智子さまが新天皇に読み聞かせをした、おさない子どもたちのための『古事記』を2019年に復刊。
巻末には、皇室の読書教育について解説した「美智子さまと子どもたちの本棚」を掲載。美智子さまが子ども部屋の書棚に置いた書籍のラインナップとともに、知られざる皇室の子育て秘話をご紹介しています。

わたなべ みどり

渡邉 みどり

Midori Watanabe
皇室ジャーナリスト

皇室ジャーナリスト、文化学園大学客員教授。早稲田大学卒業後、日本テレビ放送網に入社し報道情報系番組を担当する。1989年の昭和天皇崩御...

たかぎ かおり

高木 香織

Kaori Takagi
編集者・文筆業

出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言...

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