2021.02.22

「文字や数は何歳から教えるべきでしょうか?」子育て相談 モンテッソーリで考えよう!

第10回

著者:田中 昌子

子育て中は、日々、悩みや困りごとがありますね。そこで、「モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所」所長で、たくさんのお母さま、お父さまの相談にのってこられた田中昌子先生にお話をお伺いしました。ちょっとした工夫で、子どもたちに大きな変化が起こるモンテッソーリの考え方は、目からうろこが落ちることがいっぱいです。子育て中の人、必読です!

※この記事は、講談社絵本通信掲載の企画を再構成したものです。

文字や数は何歳から教えるべきでしょうか?

2歳10ヵ月の女の子です。まだ早いと思っていたのですが、3歳になったら文字や数を教え始めるのが良いと先輩のお母さんに言われました。同じくらいの年齢の子どもたちを見ても、そうしたお教室や習い事を始める人が多く、九九を言える子がいたりすると、少し焦ってしまいます。もちろん将来的に賢い子どもにしたい、と思う気持ちもあります。その一方で文字や数は小学校まで教える必要はない、という考えも根強くあるようで、何が子どもにとって良いのかわからず、悩んでいます。

うちの子の幼稚園では教えてもらっていませんが、幼稚園や保育園でも積極的にドリルやワークを導入しているところもあるようです。モンテッソーリ教育でも、文字や数を幼児期から教えると聞きました。こうした知的教育は、早ければ早いほどいいのでしょうか?

早いうちから知的な習い事をさせておく方が、将来、役に立つのではないか、文字や数を小学校入学前に教えておかないと、ついていけなくなってしまうのではないか。そんなお気持ちは、親御さんとしては当然のことだと思います。3歳どころか1~2歳からのプリント教材も出ていますし、ひらがなばかりでなく漢字まで教える、計算の速さを競わせる、といった幼稚園も人気があると聞いています。身近にそういったお子さんがいると、よけいに焦ってしまいますね。

一方で、文字や数は小学校に入ってからちゃんと教わるのだから、幼児期には一切教える必要はない、先取りすることで、小学校での授業に関心が持てなくなる、といった早期教育反対論を唱える人も少なくありません。早くから教えると、変な鉛筆の持ち方やめちゃめちゃな書き順が身についてしまい、かえって修正が大変になる、それよりもじっと座っていられるような癖をつけておいてもらいたい、という小学校の先生方のご意見も聞いたことがあります。

文字に強い興味を持ち、楽しみにながら身に着ける時期

では、モンテッソーリは、文字や数についてどのように考えているのでしょうか。
第5回で「モンテッソーリ教育では、いつも子どもが出発点です。大人がやらせたいことではなく、子どもが何をやりたいのかをよく観察して準備しましょう」と書きました。文字や数についても全く同じです。いつ文字や数を学んだ方がいいのか、あるいは学ばない方がいいのかは、大人ではなく子ども自身が決めることです。ではその時期とはいつ頃なのでしょうか。

まず文字の方から考えてみましょう。実はモンテッソーリは、最初、読み書きを教えるのはできるだけ遅い方がいい、という先入観にとらわれて6歳になるまでは教えないつもりでいました。しかし、その先入観を捨て、客観的に多くの子どもを観察した結果、子どもが自然のプログラムに従って成長していく中で、文字に強い興味を持ち、楽しみながら身につけてしまう時期があることを発見しました。それが以前にも触れた「敏感期」で、「言語の敏感期」と呼ばれています。
言語は大きく分けて話し言葉(音声)と書き言葉(文字)に分けられます。話し言葉の敏感期については、第6回​でも少し触れましたし、今回のご質問は文字についてですから、書き言葉、特に文字を書くことについて、モンテッソーリが発見したこと、文字に対する教育がどのように準備されているのかをお伝えしましょう。

書くという行為は運動のメカニズムと深く結びついている

モンテッソーリは多くの子どもを観察するうちに、書くという行為が運動のメカニズムと深く結びついていることに気づきました。書くときには3本指で筆記具を持ち、それを保持しながらも軽く決まった方向に動かすことが必要になります。そうした手の動きができないうちは、いくら文字を書かせようとしてもうまくいきません。逆にそうした運動の調整を喜びに満ち溢れておこなえる時期(運動の敏感期)を過ぎてしまってからでは、書くという行為が苦痛になってしまいます。

では、手が柔軟に動くようになり、しかも自ら動きを調整したがっている時期はいつかといいますと、個人差はありますが、モンテッソーリはおおよそ4歳前後と述べています。モンテッソーリ教育においては、言語教育の前段階として、日常生活の練習と感覚教育があり、そこでしっかりと手の準備ができるようにしています。

たとえば、家事には日常生活の練習ができる要素がたくさんあります。薄く切ったバナナや茹でて細く切ったにんじんを指でつまみ上げるには、繊細な動きが必要になります。本連載でもたびたび家事をおすすめしているのは、こうした効果もあるからです。

モンテッソーリ教育には、とても精密に作られた独特の感覚教具があります。長くなるので詳しい説明はできませんが、感覚的な刺激を受けるだけではなく、それらを3本指でつまんだり、軽く触れたり、枠をなぞったりすることが、書くための手の準備を助けるようになっています。

モンテッソーリの感覚教具は、手の準備にもなっている

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