春に流行する「おたふくかぜ」と低年齢化する「花粉症」への対処法

春にかかりやすい子どもの病気#3「おたふくかぜ」「花粉症」

小児科医:渋谷 紀子

耳の下にある耳下腺が腫れて頬が膨らむ「お多福」顔になることから「おたふくかぜ」と呼ばれる。 写真:アフロ

新型コロナウイルス感染症以外にも気をつけたい、「春にかかりやすい子どもの病気」があります。

2〜3月ごろから発症がみられるのが「おたふくかぜ」と「花粉症」です。「おたふくかぜ」は正式には「流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)」といい、耳の下にある耳下腺が腫れ、頬が膨れて「お多福」のような様子になるためそう呼ばれています。

一方、花粉症は近年、発症年齢が低下しているアレルギー疾患です。どちらも季節性の強い病気です。

第3回目は「おたふくかぜ」「花粉症」について、愛育クリニック小児科・母子保健科部長の渋谷紀子先生に解説していただきました。

耳下あたりがプクーッと腫れる「おたふくかぜ」

1)おたふくかぜってどんな病気なの?

「ムンプスウイルスに感染することで起こる感染症です。3歳〜6歳がかかりやすい年齢で、ウイルスを含んだ咳やくしゃみなどを吸い込むことで感染する飛沫感染と、手にウイルスがつき、その手で口や鼻を触って粘膜から感染する接触感染が主な感染経路です。

2〜3週間の潜伏期間を経て発症し、耳の下にある耳下腺や顎の下にある顎下腺が腫れて、痛みがあるのが症状の特徴です。腫れは片側だけのこともありますし、両側が腫れることもあります。

腫れと同時に発熱もみられます。ただし、感染しても症状が現れない不顕性感染となる人が3割くらいいることが知られています」(渋谷先生)

2)おうちでの応急処置と病院での対処法

「耳の下あたりを痛がったあとに、その部位が腫れて熱が出てきます。熱や痛みは、市販の解熱剤を飲ませたり、局所を冷やしたりして対応します。また、頬のあたりが腫れて口が開けにくくなるため、喉越しの良いスープなどの食事で栄養を与えることも大切です。

おたふくかぜは特効薬がなく、病院からは鎮痛解熱剤が主な治療薬として処方されます。数日で熱は下がり、頬のあたりの腫れは1〜2週間でひいてきます」(渋谷先生)

3)集団生活への復帰タイミングとは?

「腫れが出てから5日経過し、熱が下がって全身状態が良好であれば登園・登校が可能です。登園許可証を求められている場合は、再度、受診して判断を仰ぎましょう」(渋谷先生)

4)合併症について

「おたふくかぜの主な合併症は2つあります。

1つ目は『髄膜炎』です。ムンプスウイルスそのものの影響で、おたふくかぜの症状と同時期にみられる病気です。主な症状は頭痛や吐き気で、細菌でかかる一般的な髄膜炎に比べて比較的軽症で、自然に治る場合が多いとされています。経過中に髄膜炎を疑う症状が出た場合は、病院を受診しましょう。

2つ目は『難聴』です。発症率は数百から数千人に1人といわれていますが、治療法がないため注意が必要です。おたふくかぜにかかったあと、テレビの音など聞こえにくい様子が子どもにみられた場合は、医師に相談しましょう」(渋谷先生)

その他に思春期以降にみられる睾丸炎(こうがんえん)や膵臓に炎症を起こす膵炎(すいえん)もおたふくかぜの合併症として覚えておくといいと渋谷先生は話します。

おたふくかぜは、任意接種ですがワクチンが用意されています。ワクチンの効果は高く、接種により90%以上で有効な抗体価が得られるとされています。日本小児科学会では、おたふくかぜについてもMRワクチン(麻しん風疹混合ワクチン)や水痘ワクチンと同様に2回の接種を推奨しています。

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