2022.04.28

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他人事じゃない育児&介護のダブルケア 「介護休業法」の賢い組み合わせで乗り切る

改正育児・介護休業法4月開始! 子育て世代が知っておくべき基礎知識#4〜上手な介護休業の取り方編〜

一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事:和氣 美枝

育児と介護が重なり、同時進行する「ダブルケア」。晩産化・晩婚化を背景に増加傾向にあり、ダブルケア人口は約25万人と推計されています(内閣府「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」平成28年)。 写真:アフロ

男性の育休推進を後押しする改正内容で話題の「育児・介護休業法」が、2022年4月からスタートしました。この法律はその名のとおり、仕事と育児の両立はもちろん、「仕事と介護の両立」を支援するものもでもあります。

子育て世代にとって、育児と介護が同時期に重なる「ダブルケア」は他人事ではありません。介護休業制度をうまく活用し、ダブルケアを乗り切るため、より具体的な知恵と工夫を、一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事の和氣美枝さんに聞きました。

お話を伺った和氣美枝さん(一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事)は介護家族でもある。 Zoom取材にて

「会社への報告」が重要な理由

介護は突然、始まります。総務省が実施した調査(※1)によると「親族、友人その他の身近な人を無償で介護をしている人(ケアラー)」は全国に627万6000人いると言われています。そのうち、介護のために勤めていた会社を辞める「介護離職」をする人は年間約10万人にものぼります。そのうち、約8割を女性が占めています。
※1=総務省「平成29年就業構造基本調査」結果の概要

「職場には介護をしていることを隠している『隠れ介護』も問題になっています。『介護をしていることを知られると、今の仕事を外されるかもしれない』などの不安から言えずにいる人もいれば、『弱みを見せたくない』とあえて隠すことを選択している人もいます。

また、そもそも職場に相談するという発想がない人も少なくありません。これが産休や育休であれば、自分のことなので相談せざるを得ませんが、介護となると『家族のこと』なので、上司に相談するようなことではないと思いこんでしまうのです。

でも、仕事と介護を両立する上で『会社への報告』は非常に重要です。これができるかできないかは、介護離職しないですむかどうかの大きな分かれ道となります」(一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事・和氣美枝さん)

なぜ、会社への報告が大切なのでしょうか。和氣さんは次のように解説します。

「介護が始まると、特に初期の頃はしょっちゅう、関係各所から連絡や呼び出しが入ります。介護のことを上司や周囲に伝えていないと、就業中にしょっちゅう私用電話をしている人―“ただの勤務態度の悪い人”とみなされてしまうのです。

前もって伝えておけば、会社や上司、同僚にどこまで理解があるかはさておき、少なくともこうしたレッテルを貼られるのは避けられます。

もうひとつ、『隠さずに済む』のも重要です。隠しごとはストレスになります。介護はただでさえストレスが多いので、ひとつでも余分なストレスを減らすことが、自分の心身を守ることにつながります」(和氣さん)

介護休業制度を賢く組み合わせるコツ

介護休業というと「介護のためにまとまった休みをとる」というイメージがありますが、実際には、1日単位または時間単位で取得する「介護休暇」や短時間勤務など、さまざまな選択肢があります。

利用する制度によって対象労働者の規定が設けられています。また労使協定の締結(ていけつ)によって、さらに制限がかかっているケースもあります。

■介護休業
・対象家族1人につき、3回まで、通算93日まで取得可能
・原則として労働者が申し出た期間に取得できる
・休業期間中は無給、毎月の社会保険料は発生
※雇用保険法の規定により、介護休業給付金の支給を受けることが可能

■介護休暇
・1日単位または半日単位で取得できる
・1年度において5日、対象家族が2人以上の場合にあっては10日まで取得可能

■所定外労働時間の制限
・申請すると法律に基づき、「残業免除」を約束される制度
・1回につき、1年以内の期間において申請が可能
・介護が終わるまで何回でも申請できる

■時間外労働の制限
・法律のもと、時間外労働(残業)の上限に制限をかける制度
・申請すると、1カ月24時間、年間150時間を超える時間外労働を制限できる
・1回につき、1年以内の期間において申請が可能
・介護が終わるまで何回でも申請できる

■深夜業の制限
・申請することによって、深夜の業務を免除される
※人事異動で深夜業務を命じる場合、従業員がすでに家族介護を担っている場合は事業主に配慮が求められる

そのほか、事業主が講ずべき措置として

①短時間勤務の制度
②フレックスタイムの制度
③時差出勤の制度
④労働者が利用する介護サービス費用の助成

の4つのいずれかの措置を講じなくてはならないと決められています。

また、育児・介護休業法に定める制度の利用の申し出をしたことや、取得したことなどを理由として行う解雇その他、不利益な取り扱いの意思表示は無効であると定められています。

「『介護休業は家族一人につき、通算93日以内』、『介護休暇は1年度において5日』と数字だけ見ると、短く感じるかもしれません。

しかし、ここで思い出していただきたいのは『介護休業制度はあくまでも、介護をしながら働く環境を整えるための休み』であって、介護に専念する休みではないという点です。

介護が始まると、通院の同伴やケアマネジャーとの面談、行政手続きなど平日に動かざるを得ない場面が多々あります。こうしたシチュエーションでは介護休暇が使えば、有給休暇を自分のためにとっておくことができます。デイサービスの送迎対応などが必要な場合には、短時間勤務やフレックスタイムの活用、時差出勤なども視野に入るでしょう。

一方、介護休業でまとまった休みをとる場合は冷静に状況を整理し、計画的にとることが大切です。何も準備しないまま、介護休業に入ってしまうと、目の前の介護に振り回されているだけで時間が過ぎ、何の体制も整えられないまま、休業期間が終わってしまうということにもなりかねません。

もちろん、環境整備は自分ひとりではできません。勇気をもって『わからない』『困った』『助けて』と声を上げていきましょう。発信しなければ、情報も支援も得られません。でも、あきらめずに発信し続ければ、必ず選択肢が見つかります」(和氣さん)

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