「魔の2歳児」惹きつける絵本とは? 絵本ナビ編集長おすすめ人気絵本

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第3回

絵本ナビ編集長:磯崎 園子

注意をひく、夢中にさせる、解放していく

何とか平和な時間を取り戻したい。どうにか絵本に注意を向けさせたい。

そんな時に即効性があるのが「あれっ、これなんだろう?」の声かけ。

こちらを振り向いた瞬間、すかさず絵本『やさいのおなか』(きうちかつ作・絵 福音館書店)を差し出す。

もう一度「これ なあに」。​見れば不思議な形のシルエット。見たことあるような、ないような。

それもそのはず、正解はすべて野菜の断面図。なんて面白い形なのだろう。読んでいる大人にだってなかなかわからない。

そこで一緒に答えを考える。「ピーマンかな、たけのこかな」「ピーマン知らない? じゃあ本物見てみようか」。そうやって、好奇心に直接訴えかけていく作戦である。
「やさいのおなか」
多くの子どもたちの心を惹きつける「のりもの」。

けれど『せんろはつづく』(竹下文子文 鈴木まもる絵 金の星社)の主役は線路。広い野原の真ん中で、線路と線路をつなげていく静かな始まり。

ところが子どもの目はすでに輝いている。山があればトンネルを掘り、川があれば橋をかけ、池があれば線路もぐるりと遠回り。

やがてつなげた線路の向こうから、煙をはきだしてやってくるのは……? そうか、子どもたちはこの遊びが大好きなのだ。

絵本を読みながら、自分の頭の中でも線路をつなげ、広げ、考え、そして走らせる。夢中になるものが重なれば、それはもう一目散に絵本の中の世界へ駆け出していってしまうはず。
「せんろはつづく」
雨が降ろうが風が吹こうが、とにかくお散歩したいお年頃。

彼らはとにかくよく歩く。そして、絶えず何かを「発見する」。視点が低いからだろう、地面に動くものがあればすぐに立ち止まって手をのばす。

だからなかなか前に進まない。これじゃあ、時間がいくらあっても足りない。家の中ではうずうずするばかり。外に出たい、もっと歩きたい、なんで自分はここにいなきゃいけないの……なんて気持ちになる前に差し出したいのがこの絵本。

『14ひきのぴくにっく』(いわむらかずお作 童心社)。だって、そこには大好きな散歩の景色がそのまま広がっている。
「14ひきのぴくにっく」
駆け出したくなるような解放感は、何も外だけにあるとは限らない。

それを言っちゃおしまいよ、と世のお母様方からはお叱りの声も聞こえてきそうな絵本が『すっぽんぽんのすけ』(もとしたいづみ作 荒井良二絵 鈴木出版)。

なにしろ絵本の中のヒーローはこう断言するのだ。

「お風呂あがりは裸がいちばん」。説得力がすごい。確かにそうかもしれない……いやいや、パンツははきなさい。でも、この満足感は大事だよね。
「すっぽんぽんのすけ」

できることが増えていく

止まらないのは好奇心だけではない。とにかく「自分でやりたい」という気持ちが芽生え、実際にできることもどんどん増えていく。

体だって全身上手に動かせるようになる。

「『できるかな?』と言われて『できるよ、ほらっ!』と嬉しそうにポーズをする」という可愛いレビューが沢山寄せられているのは『できるかな? あたまからつまさきまで』(エリック・カール作 くどうなおこ訳 偕成社)。

できる喜びをあらわすところまでがセットになっている。
「できるかな? あたまからつまさきまで」
もうちょっと高度なことにも挑戦する。読んだ後、思わずお手伝いをさせてあげたくなっちゃう絵本は『そおっとそおっとね』(たんじあきこ作 ほるぷ出版)。

女の子が大事に大事にショートケーキを運ぶ危なっかしさと、真剣な様子は、2歳の子の愛らしさそのものだ。そのやる気、失敗込みで見守ってあげなくてはね。
「そおっとそおっとね」
ぬいぐるみやおもちゃにお布団をかけてあげることができるのは、しかけ絵本『おやすみなさい』(新井洋行作 童心社)。案外、お世話も上手にこなす2歳。ここでも大事なのは満足感だ。
「おやすみなさい」
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