「魔の2歳児」惹きつける絵本とは? 絵本ナビ編集長おすすめ人気絵本
絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第3回
2022.05.12
絵本ナビ編集長:磯崎 園子
想像力に驚く
ページをめくる前にはドキドキした顔を見せ、めくると一緒に笑い出す。こんな様子を見ていると、言葉を覚えている子も覚える前の子も、同じように絵本を楽しんでいることがよくわかる。
つまりこの頃になると、確実に自分の中の想像力で絵本の世界を広げていく力がついてきているのだ。
しろぶたくんが食べた果物が、次々に色のついた丸となってお腹にあらわれる。この不思議な現象を、詳しく説明している場面はない。
ところがレビューを読むと、多くの2歳の子どもたちが、素直に理解しているようなのだ。りんごを食べたから、赤い丸。メロンを食べたから緑の丸。石けんを口にしたら、泡がぶくぶくたって……さて、どうなったのだろう。
この絵本には、説明がないかわりに、正確な答えもない。驚くほど余白がたっぷり用意されている。その余白を見ながら、しろぶたくんと一緒に果物を味わったり、驚いたり、次の展開を考えてみたりするのだ。そうやって、少しずつ自分で物語を進めていくことができるようになるのだろう。
私たち大人は、もう少し2歳の子にゆだねてみてもいいのかもしれない。
おばけだから泣き出してしまうのでは? 連れていかれちゃうなんて、トラウマになってしまうのでは? そんな心配をよそに、子どもたちは思い思いに想像をめぐらせ、この絵本を存分に楽しんでいる。
ある子はおばけをお友だちとして、あるいは遊び相手として。おばけは怖いけれど、何回でも読みたがる子もいたりして。「怖いけど、好き」、そんなスリリングな感情の味わい方をすでに覚えているのである。
声が聞こえないように、ちょっと口を押さえたり、しーっと人差し指を立ててみたり。つまり、この子たちはおじさんにバレていないから面白いのだとわかっている。
絵本との共犯関係を、直感で楽しんでしまっているのだ。それは、今までの絵本の読み方とは明らかに変わってきている証拠。大人はそれを見逃さないように察知し、思わず出てきた言葉や反応を丁寧に拾ってあげることが大切になってくる。
彼らはもう、お話の世界の入り口に立っているのだ。
意外と冷静?
そして『ぞうちゃんの いやいや』(三浦太郎作 講談社)という可愛い絵本もある。
イヤイヤ期真っ盛りの子どもたちはこういった絵本とどう触れるのかと思っていると、案外ケタケタ笑いながら読んでいるという話。「いやいや」というセリフを嬉しそうに真似したり、「困った子ね」とでもいうような表情をしてみたり。
他の子の「いやいや」は滑稽に見えるのだろう。
次は3歳。だけれどその前に、次回は「0、1、2歳と絵本」を改めてふりかえり。お楽しみに!
磯崎 園子
1974年、愛知県生まれ。 絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。 大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。 著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。 絵本ナビhttps://www.ehonnavi.net/
1974年、愛知県生まれ。 絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。 大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。 著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。 絵本ナビhttps://www.ehonnavi.net/