絵本ナビ編集長がおすすめする 6歳の子どもが読むのにぴったりな絵本

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第10回

磯崎 園子

あの子は、わたし

自分の心の中を知ることで、今度は知らない誰かの心の中にも、自分と重なる部分を見つけだすことができるようになっていく。
日常の中で起こる、友達との些細なすれ違いによる気持ちの揺れを描く絵本『むねがちくちく』(長谷川 集平・作 童心社)。どちらが悪いわけでもないけれど、後悔するような言い方をしてしまい、主人公の女の子は自分を責めたり、友達のせいにしてみたり、心が大きく乱れる。その様子を見て、「あやまればすむこと」と答えを出して終わるのか、自分のことのように胸を痛めてしまうのか。その読み方で絵本の印象は大きく変わってくる。
「むねがちくちく」
『ひみつのビクビク』(フランチェスカ・サンナ・作 なかがわ ちひろ・訳 廣済堂あかつき)では、子どもたちの持つ緊張と不安を、ビクビクという生き物として描く。その大きさに呼応してビクビクの体もどんどん大きくなっていく。外に出るのも、誰かと話をするのも邪魔をするようになり、ついに「わたし」はひとりぼっちに。そんな時、クラスの男の子の後ろにもビクビクがいるのを見つけ……。誰もが同じような気持ちを抱えているからこそ、共感できるこのお話。「自分だけじゃない」と思えることで、窮屈な世界が少しだけ広く見えてくる。
「ひみつのビクビク」
『ジェーンとキツネとわたし』(ファニー・ブリット・文 イザベル・アルスノー・絵 河野 万里子・訳 西村書店)の主人公は、どこにも居場所がないと感じている少女エレーヌ。彼女は大好きな本『ジェーン・エア』を読み、その世界の中に閉じこもる。そんな繊細で引っ込み思案な彼女の一日はとても長く、それを細かく丁寧に描いていく。他人を完全に理解することはむずかしいけれど、そのどこかに自分を見つけだすことはできる。「あの子は、わたし」。そうやって読めば、絵本の世界にぐっと深く入りこんでいくことができるのだ。
「ジェーンとキツネとわたし」

外の世界へ

その状況や環境が自分と大きく違ったとしても、想像する力があれば、自分と重ねて読むことができる。そうして、さらに読める絵本の範囲は広がっていく。
想像して考えることができる
「朝、目をさますといつも、ぼくのまわりはことばの音だらけ。 そして、ぼくには、うまくいえない音がある」そう始まるのは、『ぼくは川のように話す』(ジョーダン・スコット・文 シドニー・スミス・絵 原田 勝・訳 偕成社)だ。吃音のある詩人をささえた少年の日の出来事を、圧巻の景色と心情あふれる言葉によって表現するこの絵本。

みんなと違うその喋りにくさが、そのことによる極度の緊張が。そして、彼の発見がどれだけ大きなものだったのか、その発見がどれだけ彼の心を救うことになったかということが。当事者じゃなくとも、しっかりと伝わってくる内容となっている。
「ぼくは川のように話す」
『二平方メートルの世界で』(前田 海音・文 はた こうしろう・絵 小学館)の作者は小学生だ。入退院を繰り返す中で、自分が実際に体験し感じた気持ちを、素直に丁寧に、そして強い想いを込めて描き出す。
「二平方メートルの世界で」
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