本当に気になる子育ての悩み「子どもの夜ふかしは発達にどんな影響があるか知りたい」
子育てお悩みランキング12を多角的に検証! 第3回 瀧靖之先生/高祖常子先生
2023.02.11
ライター:笹間 聖子
げんきの子育てお悩みランキングトップ12を多角的に検証!
悩みの多い育児の中でも、“本当に気になっている悩み”12に絞り、それぞれを多角的に詳細に検証していくシリーズ連載です。
今回のお悩み
「子どもの夜ふかしは発達にどんな影響があるか知りたい」
まずは、瀧先生の回答をご紹介します。
睡眠時間が短い子どもは海馬が小さい
夜更かしが続く、睡眠時間が短い子どもたちは、睡眠時間が長い子どもたちよりも、海馬の体積が萎縮して小さいということが分かっているのです。
なぜそうなるかというと、短時間睡眠が、体に大きなストレスをかけてしまうからだと考えられています。ストレスが、海馬の中で神経細胞が新しく生まれる働きを抑えてしまうのです。
それ以外の脳の領域は基本、生まれてから先は神経細胞が減っていくだけなんです。ただその一方で、ネットワークは誕生後もたくさん作られます。だから、成長と共にさまざまな能力を獲得できるのです。
海馬の機能低下は、記憶力だけでなく将来の学業成績にもマイナス
なぜなら、記憶力は学業の礎の一つだからです。テスト勉強は記憶が中心ですし、思考力だって、いったん記憶しておける量、知識で変わってきます。
人は、知識があるからこそ思考できるのです。その最初のステップである海馬の機能が落ちるということは、非常にマイナスです。可能であれば就学前なら10時間、小学校に上がったら9時間。しっかりと寝ることが望ましいと思います。
昼間の活動量を増やせば、睡眠の質が高まる
今はコロナ禍ではありますが、できるだけ外に出て、たくさん体を動かしてあげることが望ましいです。それが、夜の睡眠の質をより良くしてくれます。
ブルーライトが目に入ると、「今は昼だろう」と脳が勘違いし、眠気を呼び起こすメラトニンというホルモンの分泌が抑えられてしまいます。
ですから、スマホやタブレットをなるべく夜は見せないことが望ましいです。少なくとも寝る直前はブルーライトを浴びない、スマホやタブレットを見せないことを心がけていただければと思います。
徐々に電気を消すなど、眠りに入りやすい工夫を
それはそれで仕方ないのですが、その中においてもやはり、できるだけ睡眠時間をとる工夫をすることが重要です。例えば夕方から夜にかけてだんだん照明を落とすと、眠りに入りやすくなると言われています。
ちょっとした工夫を取り入れて、睡眠の質の向上に取り組まれてみてはいかがでしょうか。
慢性的な短時間睡眠は認知症のリスクも高める
睡眠不足は、将来の認知症リスクを高めてしまうからです。とはいえ、子どもが幼児期の間は難しいですよね。授乳や夜泣きもあり、どうしても短時間睡眠になりがちです。
ですから、その時期は仕方ないと割り切っていただいて大丈夫です。ただ、それが40、50、60代と、ずっと続いて、慢性的な短時間睡眠になることは避けるほうがベターです。
ただ、あまりガッツリ昼寝をしてしまうと夜の睡眠に障りますので、昼寝は明るいところ、リビングのソファや椅子で、15分くらいうたた寝する程度が良いと言われています。
脳の機能は20代後半にピークを迎えると言われるけれど…?
ですが、これはあくまで全体的な傾向です。ある人はすごい勢いで落ちていきますし、ある人はほとんど落ちていきません。
私たちの脳には「可塑性」といって、変化する力があります。何もしなければ20代後半ぐらいをピークに落ちていきますが、普段から頭を使ったり、運動をしっかりしたり、きちんと睡眠をとって生活習慣を整えれば、20代後半以降もそれほど落ちないようになるとも言われているのです。
そして、もし今そうできていなくても、脳には「可塑性」がありますので大丈夫です。ぜひ、思い立ったその日から、少しずつ生活を変えていかれてはいかがでしょうか。
昼間歩く距離を増やすとか、エスカレーターではなく階段にするとか、夜更かししている方は、30分早く寝るように心がけるとか…。そんな小さなことも、積み重ねれば、脳には確実にプラスに働きます。