本当に気になる子育ての悩み「子どもがものを投げたりする危険な行為をやめさせたい」

子育てお悩みランキング12を多角的に検証! 第4回 井潤知美先生/高祖常子先生

ライター:笹間 聖子

本当に気になる子育ての悩み

げんきの子育てお悩みランキングトップ12を多角的に検証!

WEBげんきで過去に掲載した「子育てQ&A」のPV数トップ12にランキングした“ママ・パパが本当に気になっているお悩み”に、専門家2名が改めて詳細に回答します。

悩みの多い育児の中でも、“本当に気になっている悩み”を12に絞り、それぞれを多角的に詳細に検証していくシリーズ連載です。
今回のお悩み

「子どもがものを投げたりする危険な行為をやめさせたい」
大正大学心理社会学部臨床心理学科教授で、公認心理士・臨床心理士の井潤知美先生と、子育てアドバイザー&キャリアコンサルタントの高祖常子先生がお答えします。

まずは、大正大学心理社会学部臨床心理学科教授で、公認心理師・臨床心理士の井潤知美先生の回答からご紹介します。
井潤知美先生

ものを投げたらママが来てくれた!

ものを投げる行為、気になりますよね。一時的ではなく、しばらく続いているからお悩みになっていると思うのですが、続いているということは、それが子どもにとって「何らかの役に立っている」可能性があります。

子どもの視点で見ると、ものを投げるという行動が、どういう役割を果たしていますか? 例えば、ものを投げたら親の注意を自分に向けることができた、というものです。ものを投げればママ・パパが、「危ないでしょ!」と声をかけたり、飛んでいったりしていませんか? 

そうなると注意を引きたい子どもは、「ものを投げたらママ・パパが来てくれる」という成果が手に入るので、また同じ行動を繰り返します。ものを投げていないときにこそ、注意を向けましょう!
ものを投げたときにママ・パパが声をかけると、子どもは「成果が手に入った」と感じる
そもそも親は、静かに子どもが遊んでいるときは、あまり声をかけないことが多いものです。でも、悪いことをしたら必ず注意しますよね。

それを反対にして、静かに本を読んだり、ブロックで遊んでいるなど、親がいいなと思う過ごし方をしているときに、「ブロックですごいの作ったね」「面白そうな本を読んでるね」など、声をかけるように心がけてみましょう。

そして、お子さんが、「ものを投げるのはいけないことだ」とわかっていないなら、「ものを投げてはいけないよ」と静かに伝えましょう。

スマホ動画やおしゃべりはなるべく短時間に

それから、ついスマホで動画を長時間見たり、ママ友とのおしゃべりに夢中になってしまうことって誰しもありますよね。でも3歳までの子どもは、そんなに長時間は待てません。

退屈になって、親御さんの注意を引こうとするのかもしれません。その時、悪いことをしてママ・パパの気を引こうとしているならば、スマホやおしゃべりの時間を短めにすることも必要でしょう。

もちろんママ・パパが365日見なければならないというわけではありません。時にはご実家に預けたり、一時保育を使って、自分の時間を持つことも大切です。
スマホの動画視聴はつい長時間になってしまいがち

おもちゃを貸したくないとき、誰かのおもちゃを欲しいとき

子ども同士の関わりの中でものを投げる子もいます。「自分が使いたいおもちゃを誰かに貸したくないとき」や、「使いたいおもちゃを誰かが使っていて、欲しいから奪いとりたい」といった時に起こる場合で考えてみましょう。

それはまだ「貸してあげる」「借りる」という行為がまだ十分に理解できていないときに起こります。もちろん投げてはダメですから、「待とうね」「貸してあげようね」などと口で伝えて、教えてあげるのも1つの手段です。
子ども同士が関わる中で、ものを投げる子も
貸し借りできたらしっかり褒めましょう。「貸し借りをすることで楽しくお友達と遊べる」ということが学べます。

ただ、口で伝えてもまだよく理解できなかったり、なんのために貸し借りを我慢するのか分からず、ママ・パパの言うことを聞いてくれない発達段階の子もいるでしょう。

そういった場合は、あまり子どもがたくさんいるところには連れていかないとか、少人数で遊べるところに行くなど、安心して遊べる場所を親御さんが選んであげましょう。
ほかの子どもに危険が及ばない遊び場所を選ぶことも1つの方法
2歳くらいでバランスよく発達していれば、好きなおもちゃが独占できなくても友達と遊びたくなるものです。

でも、なかには「友達と遊びたい」という気持ちがまだあまり育っていなくて、「自分が好きなように遊びたい」という気持ちの方が強い子もいるのです。

「将来の園生活のためにお友達と遊ばないと」と思われるかもしれませんが、それは子どものタイプやその日の気分によっても変わるもの。様子を見て、選んであげてくださいね。

ものを投げないで要求を伝える「代替行動」を用意する

言葉でうまく言えないから癇癪を起こしてものを投げたり、なんらかの要求を叶えたくてものを投げている場合は、「ものを投げないで要求を伝える方法」を教えてあげるのも1つです。

よく観察して、子どもが何を要求しているのか考えてみてください。それが分かったら、要求の内容を写真やイラストにして、カードを作るのもおすすめです。

よくある要求のカードを用意しておいて、それを決まった場所に置いておくのです。そして子どもに、「欲しいときにこれ持っておいで」と伝えて、要求の代わりに取る行動を教えます。これを、「代替行動」と言います。
投げて要求することを「代替行動」で行えるようにする
お菓子やぬいぐるみなど、カードを複数用意して、「どれが欲しいの?」と聞いてあげるのもおすすめです。そして、お子さんがカードを持ってきたら、「○○が欲しいのね」と言葉を添えて要求を叶えましょう。

カードを使ったコミュニケーションは、言葉の発達も促します。
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