絵本ナビ編集長がおすすめする 6歳の子どもが読むのにぴったりな絵本

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第10回

磯崎 園子

『ランカ にほんにやってきたおんなのこ』(野呂 きくえ・作 松成 真理子・絵 偕成社)の主人公は、遠い国から日本の小学校に転校してきた10歳の女の子。
「ランカ にほんにやってきたおんなのこ」
日本の言葉も習慣も文化もわからずに教室に座っている彼女のその不安は、想像すればすぐに痛いほど感じることができる。『せんそうがやってきた日』(ニコラ・デイビス・作 レベッカ・コッブ・絵 長友 恵子・訳 鈴木出版)が描くのは、ある日突然戦争がやってきて、何もかもを吹き飛ばし、難民となってしまった女の子の話。「あなたの場所はありません」と言われるほんの少し前までは、学校に通い、好きな絵を描き、歌をうたっていたのだ。
「せんそうがやってきた日」
たとえ話は短かったとしても、背景や感情や表情としっかり向き合い、読み解いていく。そうして自分なりに解釈し、考えを広げていく。年齢を経て、自分の外の世界を理解していこうとしている子どもたちの背中を、絵本はしっかりと支えてくれている。

それはいつでも近くて遠い話

想像力をもってしても、実際にはどうしてもわからなくなってしまうテーマがある。

『キツネ 命はめぐる』(イザベル・トーマス・文 ダニエル・イグヌス・絵 青山 南・訳 化学同人)は、科学的根拠に基づきながら「生きものは死んだらどうなるの?」という素朴な疑問に、物語の中でしっかりと答えてくれる。
「キツネ 命はめぐる」
『100万回生きたねこ』(佐野 洋子・作・絵 講談社)では、「生きること」と「死ぬこと」を哲学的に考える経験ができる。
「100万回生きたねこ」
『ずーっとずっとだいすきだよ』(ハンス・ウィルヘルム・作・絵 久山 太市・訳 評論社)のように、実際に大切な家族を失った時のための心のケアの方法が明確に優しく描かれている絵本の存在もある。どれもが「死」というむずかしいテーマを扱いながら、アプローチの方向はさまざま。その出会いのタイミングで受けとめ方は変わってくる。
「ずーっとずっとだいすきだよ」
小学生になったからといって、意味のある絵本ばかりを読まなければならないわけではない。中学生になったって、大人になったって、絵本を読む時は、ただ楽しめばいいのだ。それも含めて変わらず多くの絵本に触れていってもらいたいと思うのは、その時にしか感じられない感情があるから。衝撃を受けるほどの出会いが待っているかもしれないからだ。大人と一緒になって頭の中をぐるぐるさせる、そんな時間はとても短くとも貴重なものなのだ。
※この記事は、「こどもの本」2021年5月号~2022年6月号に連載された「絵本と年齢をあれこれ考える」のWeb記事版です。
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いそざき そのこ

磯崎 園子

絵本ナビ編集長

1974年、愛知県生まれ。 絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。 大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。 著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。 絵本ナビhttps://www.ehonnavi.net/

1974年、愛知県生まれ。 絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。 大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。 著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。 絵本ナビhttps://www.ehonnavi.net/

げんきへんしゅうぶ

げんき編集部

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki

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