子どもが多様な人たちと交流! 年齢・障害・国籍を超えた「寄り合い所」の素敵な日々
シリーズ「地域をつなぐ みんなで育つ」#1‐2 多世代が集う「地域の寄り合い所 また明日」(東京都小金井市)
2022.11.21
編集者・ライター:太田 美由紀
いろんな人がいるから「ちがい」が気にならない
「また明日」にはいろいろな背景をもった多世代の人たちがやってきます。施設の理念には「年齢、性別、障害の有無、国籍の違いを超えて」と明記されています。代表の森田眞希(もりた・まき)さんはこう言います。
「その理念を実現するために、『地域の寄り合い所』をもうけています。いろいろな人が来て、困ったこともみんなで一緒に考え、うれしいときは喜び合える場所になるといいなと思っています」
ダウン症でも、医療的ケアが必要でも、イスラム教徒でハラールの対応が必要でも、「また明日」では分け隔てることはありません。ほかの保育所に、「みんなと同じように対応できないから」と断られてしまった子どもがいれば、進んで迎え入れます。
不思議なことに、多様な人、多世代の人がいる場所では、お互いの「ちがい」がほとんど気になりません。学校は同じ年齢で分けられているため、周りと比べてほんの少しのちがいがとても気になってしまうこともありますが、ここはみんなちがって当たり前。
「みんなに遅れないように」「みんなとちがうことをしないように」なんて、考えなくていいのです。
失敗もみんなで笑って次につなげることができる。誰かが何かアイデアを思いついたら、みんなでどうすれば実現できるかを一緒に考えてみる。すると、楽しいことが次々にはじまるのです。
次回は、「地域の困りごと」からはじまった、いろいろな「お楽しみ」をご紹介します。
〈教育学者・汐見稔幸先生から〉
現代社会では、少年期から青年期の子どもたちが気軽に集まって自由に語り合い、自分が何かの役に立つという体験をする場がほとんどなくなってしまいました。
かつては地域にそのような場があり、地域のお兄さんお姉さんに憧れ、真似をして、地域の役に立つことをさせてもらいながら、少しずつ大人になる練習をしていました。
今の子どもたちは、自分のモデルとなる人を見つけるチャンスもないまま、点数や偏差値で測られる場所で育っていかなければなりません。そして社会に出ると、点数や偏差値がほとんど通じない世界に突然放り込まれてしまうのです。
先日、不登校が過去最高の24万5000人に達したと文部科学省から発表されました。私は、不登校の子どもたちの日常の生活の場が奪われてしまっていることがとても気になっているのですが、学校に居場所がない子や学校に行きたくない子にとっても、「また明日」は必要な場所だと言えます。
自分より年上のお兄さんやお姉さんがいる。さまざまな大人がいる。小さな子どもたちと遊ぶことで子どもたちも大人も喜んでくれる。ここにくると誰かの役に立てるということを誰もが体感できるのです。
さまざまな世代とつながり、支え合って日常を過ごす。これは子どもたちの育ちにとって、とても大切な体験です。
取材・文/太田美由紀
汐見稔幸(しおみ・としゆき)PROFILE
1947年、大阪府生まれ。教育・保育評論家。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。東京大学名誉教授、エコビレッジ「ぐうたら村」村長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所理事、『エデュカーレ』編集長。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。著書に『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出新書)、『これからのこども・子育て支援』(風鳴舎)、『「天才」は学校では育たない』(ポプラ新書)など多数。
太田美由紀(おおた・みゆき)PROFILE
1971年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集部を経て独立。育児、教育、福祉を中心に、誕生から死まで「生きる」を軸に多数の雑誌、書籍に関わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』の番組制作やテキスト制作に関わる(2020年まで)。2011年より新宿区教育委員会・家庭教育ワークシートプロジェクトメンバー。2017年保育士免許取得。子育てコーディネーターとして相談現場でも活動。「人間とは何か」に迫るため取材・執筆を続けている。初の自著『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)重版出来、好評発売中。
太田 美由紀
1971年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集部を経て独立。育児、教育、福祉を中心に、誕生から死まで「生きる」を軸に多数の雑誌、書籍に関わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』の番組制作やテキスト制作に関わる(2020年まで)。 2011年より新宿区教育委員会・家庭教育ワークシートプロジェクトメンバー。2017年保育士免許取得。子育てコーディネーターとして相談現場でも活動。「人間とは何か」に迫るため取材・執筆を続けている。 初の自著『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)重版出来、好評発売中。 ●『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』公式HP
1971年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集部を経て独立。育児、教育、福祉を中心に、誕生から死まで「生きる」を軸に多数の雑誌、書籍に関わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』の番組制作やテキスト制作に関わる(2020年まで)。 2011年より新宿区教育委員会・家庭教育ワークシートプロジェクトメンバー。2017年保育士免許取得。子育てコーディネーターとして相談現場でも活動。「人間とは何か」に迫るため取材・執筆を続けている。 初の自著『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)重版出来、好評発売中。 ●『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』公式HP
汐見 稔幸
1947年、大阪府生まれ。教育・保育評論家。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。東京大学名誉教授、エコビレッジ「ぐうたら村」村長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所理事、『エデュカーレ』編集長。 専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。著書に『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出新書)、『これからのこども・子育て支援』(風鳴舎)、『「天才」は学校では育たない』(ポプラ新書)など多数。
1947年、大阪府生まれ。教育・保育評論家。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。東京大学名誉教授、エコビレッジ「ぐうたら村」村長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所理事、『エデュカーレ』編集長。 専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。著書に『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出新書)、『これからのこども・子育て支援』(風鳴舎)、『「天才」は学校では育たない』(ポプラ新書)など多数。