子どもが多様な人たちと交流! 年齢・障害・国籍を超えた「寄り合い所」の素敵な日々

シリーズ「地域をつなぐ みんなで育つ」#1‐2 多世代が集う「地域の寄り合い所 また明日」(東京都小金井市)

編集者・ライター:太田 美由紀

ふらりと立ち寄っても「おかえり」「あらこんにちは」とやさしく迎え入れてくれる。  写真提供:藤田浩司
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2020年から続くコロナ禍、小中学生の子どもたちもピリピリと張り詰めた空気の中で長く過ごしてきました。

大人が居酒屋で飲み会を楽しむいま(2022年11月現在)も、学校給食は黙食で、「マスクを外したくない」と話す子どもたちのことがニュースになるほどです。

家と学校、塾や習いごとだけの毎日では、触れ合うことのない多様な人たちとの出会いや、そこで得られる貴重な体験機会。子どもたちのために、これからどのようにつくっていけばいいのでしょうか。

そのヒントがここにありました。東京都小金井市にある「地域の寄り合い所 また明日」(以下「また明日」)は、保育所、認知症のデイホーム、地域の寄り合い所、3つの機能をあわせ持つ施設です。

いつでもだれでも気軽に立ち寄ることができる地域の居場所です。コロナ禍は小中学生が少ない時期もありましたが、最近はコロナ以前のように、夕方になればにぎやかな笑い声が聞こえてきます。

※全4回(#1を読む)

放課後、駆け込んでくる小中学生に「おかえり」の声

午前中は保育所の赤ちゃんや子どもたち、認知症のデイホームを利用しているおじいちゃん、おばあちゃん、そして遊びに来た近所の人がゆったりと過ごしている「また明日」ですが、午後のおやつが終わるころ、放課後の小学生がやってきます。

「ただいま!」とランドセルを背負ったまま駆け込んでくる子、前の公園で遊んでいて「トイレ貸してくださーい」とやってくる子、家で動物を飼えないため「また明日」の犬たちとのふれあいを楽しみにくる子もいます。コロナ以前の夏休みには、「おなかすいた~!」という子どもたちに大きな鍋でそうめんを茹でて食べさせたことも。

スタッフは子どもたちにいつも変わらず声をかけます。

「おかえり」「おなかすいてない?」

その様子はまるで、昭和のご近所さんか、親戚の家のようです。

もちろん、おなかが空いていればおやつが用意されています。おやつは地域の人たちから差し入れられた果物やお菓子。夏はスイカやとうもろこし、秋は栗にさつまいも。

夏休みは小学生のお兄ちゃんが絵本を読んで寝かしつけてくれました。  写真提供:地域の寄り合い所 また明日

保育所の子どもたちは、小学生のお兄ちゃんお姉ちゃんに遊んでもらうのが大好き。泣いている赤ちゃんがいても、小学生も慣れたもの。ヒョイと抱き上げ、背中をトントン。

赤ちゃんもピタリと泣き止みます。それを見て、「あら、上手ねえ」とおばあちゃん。きょうだいはいないけど、「また明日」でみんなの様子を見ながらあやし方を覚えたという子もいます。

夕方の「また明日」はにぎやか。赤ちゃんからお年寄りまで多世代が共に過ごす。  写真提供:地域の寄り合い所 また明日

小さな子どもたちと遊ぶだけでなく、お年寄りと折り紙や編みものを楽しんだり、おじいちゃんの作った草笛にチャレンジし、「フー、フー」「ピー」「プー」と鳴らしたり。

もちろん、宿題をしても、漫画を読んでも、ゴロゴロしてもいい。ひとり静かに本を読んでいれば、みんながそっとしておいてくれる。楽しくなってはしゃぎすぎると、「はいはい、公園で遊んでおいで」と声がかかることもあります。

最近はアルバイトの大学生も増え、小学生たちはあまり出会うことのない大学生に興味津々。「また明日」に集まる人たちの年齢はごちゃまぜで、学校とも家族ともちがう「ナナメの関係」がたくさん生まれています。

「楽しくってラクになれるあったかい場所です」

部活帰りの中学生がやってくるのは、日暮れ前。そのころになると、デイホームのお年寄りや小学生は、ひとり、またひとりと帰っていきます。すると、ふたたびゆったりとした時間が流れます。

小学生から「また明日」によく遊びに来ていたというふたりの中学生は、「また明日」についてこんな感想を抱いていました。

「小さい子がかわいい! お手伝いをしたら『ありがとう』って言ってもらえる。私にとっては第2の家かなあ。楽しくってラクになれるあったかい場所」

「保育士さんみんながやさしくて、子どもたちともすぐに仲良くなれる。どんなときでも歓迎してもらえてうれしい。今までいちばんうれしかったのはね、小さい子に『お姉ちゃん大好き!』って言ってもらったこと」

よく遊びに来ていたこの写真の中学生は、大学合格も一番に報告に来てくれた。  写真提供:藤田浩司(『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』より)

赤ちゃんを抱っこして、学校での勉強や部活の話、恋バナを楽しみながら、「赤ちゃんだってさ、泣きたくなることあるよね」と余裕の発言も。

夕暮れ時、認知症のお年寄りが少し不安になったときには、小学生の女の子が「おばあちゃん、折り紙一緒にしよう」と声をかけたことで、おばあちゃんも落ち着いて子どもたちに折り鶴を教えてくれたこともあるそうです。

自分が親になるまで身近に赤ちゃんがいなかった人、祖父母が遠くに住んでいる人も多い時代です。しかし、「また明日」では、このようにして子どものときからたくさんの人に囲まれ、みんなで笑い合いながら赤ちゃんやお年寄りと自然に触れ合う機会を持つことができます。

彼らが大人になったとき、家族がさまざまに変化したとしても、自然に受け入れることができるのかもしれません。

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