発達障害グレーゾーンの子の困りごと 「これも個性、もう少し様子見」が「よくない」理由
#1 グレーゾーンの子どもたちには「失敗を避ける」「フルサポートをする」ことが何より大事なワケ
2024.01.10
発達障害の特性がみられるものの、そこまでくっきりとは際立っていない、いわゆる“グレーゾーン”の子どもたち。発達障害の診断項目を満たすほど特徴的ではなくても、発達に“でこぼこ”があり、そのために日常生活で困りごとがある状態です。
発達のでこぼこを単なる「個性」と捉えて見過ごしてしまうと、やがて周囲の環境とのミスマッチが高じて、本人が傷つき、結果として、発達の遅れや二次障害につながることがあります。毎日の生活では、理解と配慮、そして工夫が不可欠です。
そんなグレーゾーンの子どもたちの“困りごと”に寄り添った書籍『発達障害グレーゾーンの子の育て方がわかる本』(横須賀市療育相談センター所長・広瀬宏之先生監修)から、今回は支援する周囲の大人たちの意識について紹介します。
広瀬宏之(ひろせ ひろゆき)
横須賀市療育相談センター所長。小児精神・神経科医、医学博士。専門は発達障害の支援。1995年東京大学医学部卒業。同附属病院小児科、同大学院、国立成育医療センターこころの診療部発達心理科、米国フィラデルフィア小児病院児童精神科を経て、2008年より現職。
目次
発達支援は「理解」「配慮」「工夫」の三本柱
今と昔とでは、発達障害の捉え方や支援モデルが変わってきています。現在は、発達のでこぼこが目立つ“少数派”の人も、“多数派”の定型発達の人も、全員が社会参加できるような環境づくりが大事だとされています。
支援の基本となるのが、理解、配慮、工夫の三本柱です。たとえば、音に敏感な子どもは、音を遮断するために自分の耳をふさぐことがあります。それが「音に敏感」という感覚のでこぼこからくる行動だと理解し、刺激を減らすための配慮や、具体的な工夫を考えます。困りごとに対して作戦を練って解決していくイメージです。
失敗は成功のもとではなく、二次障害のもと
定型発達の子のなかには、失敗した経験を糧に成長する子もいるでしょう。けれども、グレーゾーンの子の場合、でこぼこゆえにうまくいかないことが多く、ダメ出しをされがちです。それなのに、親が「ダメでもいいからやってみよう」というスタンスだったり、アフターケアをしないでいたりすると、子どもは失敗続きで自己肯定感が下がってしまいます。
でこぼこに合った環境がつくられないことで生じる困難を「二次障害」といいます。アフターケアなしの失敗体験は二次障害のもとになりかねず、注意が必要です。
失敗への𠮟責は逆効果
でこぼこのある子は「どうしてそんなことをしたの?」と𠮟られることが多くなりがち。しかし、失敗するのは本人の努力不足ではないため、𠮟っても自尊心を傷つけるだけです。
起こりえる二次障害って…?
■不眠 ストレスなどで脳が休まらず、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりして、十分に眠れない
■適応障害(不登校など) 自分の置かれた環境にうまく適応できない。子どもの場合、登園しぶりや不登校などとして表れることが多い
■うつ症状 心身ともにエネルギー切れの状態。気分が落ち込み、気持ちが晴れない。不安や体の疲れ、体の痛みなどとして表れることもある