自殺した不登校児の「75%は再登校」していた 不登校児の親が「やってはいけない」ことを精神科医が伝授

精神科医・松本俊彦先生に聞く 「不登校と過剰適応」

精神科医:松本 俊彦

もっと気軽に精神科のクリニックの門を叩いてほしい

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松本先生は、日本の薬物依存研究の第一人者でもあります。薬物依存症の患者に対して「罰を与えれば問題が解決するわけではない。同じことを繰り返さないための支援が大切だ」と主張し続けてきました。

「誤解を招く言い方かもしれませんが、不登校と薬物依存は対応の仕方という点では共通する部分があります。不登校に対して『問題行動だから力ずくでやめさせなければならない』という考え方を持っている人が、まだまだ多い。大切なのは当人に寄り添って、苦しみを取り除いてあげることです。

苦しさが理解されないという状態が続いて、高校生ぐらいで市販薬の過量接種(オーバードーズ)をしてしまうケースもあります。それと、学校などでは『早めにSOSを出しなさい。あなたを守ります』と言っているのに、実際にSOSを出したら、自分を否定されて一方的に教育的指導をされたり、内容によってはすぐ警察に連絡されたりする。そんなダブル・スタンダードがまん延しているのも大きな問題ですね」

子ども(と親)の苦しさをやわらげるために、精神科のクリニックが大きな役割を果たすケースもあります。松本先生は精神科医として、長年にわたって幅広い年齢層の不登校の子どもを診察してきました。ただ、親の中には「精神科のクリニックの門を叩く」ということに抵抗を感じる人も、まだまだ少なくないかもしれません。

「精神科医は、あくまで専門家の立場からアドバイスをするのが役割です。診察を受けたからといって状況が劇的に変わるわけではありませんが、話を客観的に聞いたり、出口がないと思える状態に違う道筋を提示したりすることはできる。

子ども自身へのアドバイスより、親御さんへのアドバイスのほうが比重は大きいかもしれない。言ってみれば、悩みの“セカンド・オピニオン”ですね。また、子どもが眠れないとか食事ができないといった深刻な状態になった場合、あらかじめ医療とつながっておくことで早めに手を打つことができます」

松本先生は「子どもの心には自然治癒力がある」と強調します。しかし、無理に学校に行かせようとしたり、学校に行かないことを責めたりするなど、親の言動が子どもの心にさらなるダメージを与えてしまうケースは少なくありません。

「我が子の心の回復力を信じて、待ってあげてください。それが何よりのサポートです」

公式サイト【学校休んだほうがいいよチェックリスト】のトップ画面。ここからLINEに進む。

取材・文/石原 壮一郎

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まつもと としひこ

松本 俊彦

Toshihiko Matsumoto
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部 部長

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部 部長。1993年佐賀医科大学卒業。2015年より現職。2017年より国立精神・神経医療研究センター病院薬物依存症センター センター長を兼務。現在、日本精神科救急学会理事、日本社会精神医学会理事、日本アルコール・アディクション医学会理事、日本学術会議アディクション分科会特任連携委員。 著書に『自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント』(講談社)、『「助けて」が言えない 子ども編』(日本評論社)など多数。

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部 部長。1993年佐賀医科大学卒業。2015年より現職。2017年より国立精神・神経医療研究センター病院薬物依存症センター センター長を兼務。現在、日本精神科救急学会理事、日本社会精神医学会理事、日本アルコール・アディクション医学会理事、日本学術会議アディクション分科会特任連携委員。 著書に『自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント』(講談社)、『「助けて」が言えない 子ども編』(日本評論社)など多数。

いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか