我が子の不登校「学校を休ませるかLINEで判定」 精神科医や不登校専門家が開発した「チェックリスト」
LINE「学校休んだほうがいいよチェックリスト」が8月に無料リリース
2023.09.01
ライター:石原 壮一郎
登校を嫌がる子どもは、何とか学校へ行かせるべきか、休ませるべきなのか。
判断に迷う保護者のためのチェックリストが8月23日(2023年)リリースされました。公開8日後の8月31日時点ですでに約35000人が登録するほど注目されています。
開発したのは、精神科医と不登校支援をする3団体です。“不登校の専門家”たちが共同開発した「学校休んだほうがいいよチェックリスト」の中身とは?
不登校より問題は『過剰適応』
「最近、我が子の様子がおかしい。学校に行くのがつらいようだ。休ませたほうがいいのか、もう少し様子を見たほうがいいのか……」
こんな悩みを抱いている保護者がたくさんいます。実際に、子どもが「学校に行きたくない」と言ったときも、ほとんどの親はどうしていいのかわかりません。
「子どもが休みたいと言ったときはもちろん、言わなくても学校に行くことをつらいと感じている様子なら、迷わず休ませてあげてほしいと私たちは考えます。
不登校は問題行動ではありません。人生からのドロップアウトでもありません。その子が命がけで切実に必要としている避難先です。
本当に深刻なのは不登校じゃない。問題なのは、休みが必要なのに親や教員が無理に学校に行かせることによって引き起こされる『過剰適応』です」
そう語るのは、長年にわって不登校の子どもや親の支援を続けている『不登校新聞』代表の石井しこうさん。過剰適応を起こした子どもたちは、心理的な無理がたたって、うつ病や自殺未遂などに発展するリスクが高まると言います。
公開たちまち大反響! 8日間で約35000人が登録
「子どもを適切に休ませてあげてほしい」「子どもを追い詰めないでほしい」──。
そんな願いを込めて8月23日(2023年)に公開されたのが、通信アプリ・LINEの「学校休んだほうがいいよチェックリスト」です。不登校を支援する3団体「不登校新聞」「Branch(ブランチ)」「キズキ共育塾」が作成・運営し、精神科医の松本俊彦氏が監修しました。
まずはチェックリストの公式サイトにアクセスし、LINEで友だち登録をすると使用可能に。使用料はかからず、無料利用できます。
チェック項目は〈不安を訴えたり、「死にたい」「消えたい」などと話したりする〉〈週に一回程度は、遅刻や早退がある〉〈友だちと会ったり、遊んだりすることを避けることがある〉〈朝食、身じたく、トイレ等に時間がかかりすぎて遅刻することがある〉など20個。どれも不登校の予兆となる事象で、それぞれに「はい・いいえ」で答えます。
すべての項目に答えると、監修の松本先生による回答が表示されます。回答は「休ませましょう」「対話の機会を作りましょう」「問題なさそうです」など全部で5種類。それぞれにひと言アドバイスが付いています。診断の結果だけでなく、状況に応じた相談先や体験談のページにもつながっているのが大きなポイント。
8月23日に公開してたちまち大きな反響を呼び、8日後の31日の時点で約35000人が登録しました。窓口には「無理に学校に行かせ続け後悔しています。これでよりよい判断ができるようになりたい」「再登校を始めたが子どもも親も幸せになれない。このチェックリストが客観的に子どもの状態を見る助けになれば」といった親たちからの声が届いています。
「反響の大きさは、悩んでいる親御さん、苦しんでいる親御さんがいかに多いかということだと思います。誰に相談していいかもわからない。このチェックリストは、子どもも親も前に向けての大きな一歩を踏み出すきっかけになるはずです」(石井さん)
自殺者の75%が無理に再登校をしていた事実
夏休みが明けてしばらくのあいだは、学校に対して心や体が拒否反応を示している子どもにとって、一段と苦しい時期だと言われています。過去のデータで、一年のうち9月1日に子どもの自殺がもっとも多いことから、「9月1日問題」という言葉も生まれました。
「今年は8月28日や29日から2学期が始まる学校も多いようですが、最初の日を乗りきれば大丈夫という話ではありません。しばらくの間は危険な状況が続きます。夏休み明けだけでなく、常に子どもが発するSOSを見逃さないであげてほしい」(石井さん)
監修の松本先生も「不登校は子どもの防衛反応。無理に行かせ続けていいことはひとつもありません」と断言します。
松本先生が若年者の自殺について分析したところ、なんと75%が不登校を経験したのちに再登校をしていました。「無理して学校に戻すことで、最悪の結果を招いてしまう。過剰適応を起こすと心が疲れ切ってしまうんです」(松本先生)
石井さんも松本先生も、このチェックリストは「迷っている親の背中を押すためのもの」だと強調します。根底にあるのは、休ませるべきなのに休ませることができない親が多いことへの危機感。
さらに、無理に学校に行かせることがいかに危険か、いかに子どもを苦しめているか、多くの親に気が付いてほしいという願いが込められています。