低出生体重児を産んだママの「罪悪感」とは? 「リトルベビーハンドブック」が全国に拡がった理由

小さな赤ちゃんに寄り添う手帳「リトルベビーハンドブック」#2 ~リトルベビーハンドブックができるまで~

静岡県リトルベビーサークル「ポコアポコ」代表:小林 さとみ

リトルベビー親子への思いがあふれる誌面

「制作する中で、一番にこだわったのは、たくさんの先輩ママたちのメッセージを届けたいということ。すべてのページ下欄にメッセージを入れています。

また、産後うつになる方も多いので“出産後のママの気持ち”というページを作って、『こんなふうに思い当たるところはありますか? そんなときには無理せず……』というスタンスで心に寄り添うことを大切にしました」(さとみさん)

産後に落ち込みがちなママの気持ちをフォローするページも。  写真:しずおかリトルベビーハンドブックより

「小さく生まれた赤ちゃんが起こりやすい病気についても入れました。

今はネットで調べればいくらでも情報は取れますが、素人が検索すればするほどマイナスな方向に考えてしまい、怖くなってしまうこともあります。

なので、医師が監修した正しい情報を載せる必要があると考えてページを作りました」(さとみさん)

「発育曲線と成長の記録のページは、母子手帳のように、『できる』か『できない』のYES/NOではなく、あえて書き込みができるものにしました。NOしかない成長の記録は本当に辛いんです。

できたかできないかじゃなくて、何ができるようになったかということを記入できるように、理学療法士の先生にまとめてもらいました」(さとみさん)

発達の記録は、子どもたちの成長を見つけた日を記入する形に。  写真:しずおかリトルベビーハンドブックより

「私の娘たちも小さく生まれたことで、成長過程ではいろいろなことに悩まされました。小さく生まれたっていうのは本当に入り口でしかなくて、その先にいろんな困りごとがあるんです。

それを周りの人たちすべてにわかって寄り添ってもらうことは難しいと思います。でも、同じような経験をしてきた私たちは寄り添うことができると思うので、その気持ちが少しでも届けば嬉しいですね」(さとみさん

全ての人は救えないけれど

2011年に初めて制作してから12年。当初は助成金を受けてまさに手作りだったリトルベビーハンドブック。今では地方自治体の事業として全国38都道府県で発行されています。

ママたちの心がつながってできた素敵なハンドブックですが、さとみさんは常日頃思うことがあるといいます。

「リトルベビーハンドブックについて、いろいろな場所で注目していただくことは本当にありがたいです、ただ、忘れてはいけないこともあります。それは、“リトルベビーハンドブックでさえ救えない親子もいる”ということ。

以前、ある人に『数日しか生きることができない子や脳性まひが重い子、障がいが重い子のママにとってリトルベビーハンドブックは眩しすぎる』と言われたことがあります。

それを聞いたときには、私もとても落ちこみました。でも、同時に『どんな人でも居場所はあるし、寄り添ってくれる人もいるんだということがわかりました』とも言っていただいて……。

どんなことでもそうですが、100%すべての人を救えるものはない、だからこそ自分ができることは全力でしなくてはと覚悟をあらたにしました」(さとみさん)

自らも大変な思いをしながらも、恩返しの心からスタートしたリトルベビーハンドブック。その活動は、全国規模で拡がっています。

次回は、2023年3月に完成したばかりの「とちぎリトルベビーハンドブック」の作成に携わった栃木県のリトルベビーサークル「にちにちらんらん」の代表、小林恵さんにお話を伺います。

取材・文/関口千鶴

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こばやし さとみ

小林 さとみ

Satomi Kobayashi
リトルベビーサークル「ポコアポコ」代表

静岡県のリトルベビーサークル「ポコアポコ」代表。 現役の保育士として日々子どもたちの成長を見守る一方、リトルベビーサークルの代表も務める。 2011年に全国で初めて当事者としてリトルベビーハンドブックを作成し、その内容は後に続くすべてのリトルベビーハンドブックのお手本となっている。 ●ポコアポコBlog

静岡県のリトルベビーサークル「ポコアポコ」代表。 現役の保育士として日々子どもたちの成長を見守る一方、リトルベビーサークルの代表も務める。 2011年に全国で初めて当事者としてリトルベビーハンドブックを作成し、その内容は後に続くすべてのリトルベビーハンドブックのお手本となっている。 ●ポコアポコBlog

せきぐち ちづる

関口 千鶴

Sekiguchi Chizuru
編集者・ライター

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon