「離乳食」 固さの目安は月齢ではなく「歯の本数」 小児歯科のポイント

小児歯科専門医・唐木先生ご夫妻インタビュー #1 0~1歳半頃の歯のチェックポイント

小児歯科専門医:唐木 隆史

離乳食の食べ方も口内発達と深い関りが

すべての画像を見る(全4枚)

美弥先生「離乳食の食べ方にもポイントがあります。親がスプーンを運ぶとき、子どもの上あごになすりつけるようにして食べさせていると、自分の唇を閉じて食べ物を取り込むという動きの習得が難しくなることもあります。必ず下唇の真ん中にスプーンを乗せ、あごと唇が閉じるのを待ってから水平にスプーンを引き抜くようにしてください。

9ヵ月くらいになると、自分で食べる動きが始まります。前歯が生えたら、手づかみ食べができる食事も用意してあげるといいですね。そうすることで食材の固さが分かり、かじるという行為や、自分の食べられる量を覚えることができるようになります。

食材を切る際は、ただ細かくするのではなく、棒状にするとか、つかめるように工夫されたものもあるといいですね。奥歯が生えてきたら噛む回数を増やすためにも、食事やおやつに噛みごたえのある食べ物を取り入れることもおすすめです」

隆史先生「手づかみ食べによって、こぼしたり汚したりしますが、手と口の協調運動(手と足、目と手など別々に動く機能をまとめてひとつにして動かす運動のこと)の基本となる大切な動作ですので、せめておうちでは温かく見守ってあげてください」

美弥先生「さらに食事のときの姿勢も大切です。背筋を真っ直ぐにして座るのではなく、上半身がやや前傾した姿勢が理想とされています。腰がすわる前の赤ちゃんでもひとりで座れる柔らかい椅子がありますが、胃を締め付けてしまう点であまりおすすめはしません。むしろ手づかみ食べをするまでは、抱っこや膝に座らせて食べさせてあげるのでもいいくらいです。

ひとりで安定して座れるようになったら、自分の足でしっかり踏ん張れる椅子を用意してあげてください。正しい姿勢で食事をすることが、口腔内の発達に密接に関わってくるのです」

歯磨きは1日2回、ガーゼで汚れをふき取ることを毎日の習慣に

美弥先生「前歯しか生えていない時期は、ガーゼで拭いてあげるだけで十分です。その方が汚れもキレイに取れますよ。歯磨きのリズムを習慣づける意味でも、できれば朝夕と2回ふき取るようにしてあげられると理想的です。
歯ブラシによる仕上げ磨きは、奥歯が生えてきたらスタートしてください。
歯ブラシは、色々な種類がありますが、形状や大きさによっては磨きにくいものもありますので、歯科医師にご相談ください」

隆史先生「歯の生え始めの時期には、親御さんの指で子どもの顔や口の中をよく触ってあげてくださいとお伝えしています。そのように感覚的刺激を養ってあげることがこの頃は特に大事です。ガーゼで歯を磨く際は、口の中に刺激を与えるように触ってあげてください。

また、この時期の口腔内はむし歯菌に感染していないと言われていますが、一般的には眠っている間に菌が増えますから、夜は食べカスが残らないようにしっかり磨いてあげてください。

特に離乳食が始まってからの授乳で気をつけていただきたいのが、夜、授乳しながら寝かしつけたりしますよね。その際、口の中に離乳食の残りカスがあったりすると、食べ物に含まれる糖分をエサとして菌が繁殖することで、むし歯の原因になることもあります。

最近のお子さんは授乳期間が長い傾向にありますが、歯の表面が溶けてしまっている(脱灰)方や、歯磨きが上手くされておらず、汚れが目立ったり、ジュースなど甘いものを早くから摂取していたり、上の兄弟にむし歯があるなどのむし歯のリスクが高いような方には、卒乳を促すようにしています」

さらに授乳期間が長くなることで、歯並びが悪くなることもあるのでしょうか。

隆史先生「諸説あるのですが、僕自身は影響があるかなと思っています。強く吸う力が長く続くことによって、顎の形が悪くなったり、授乳時の姿勢も歯並びに影響を与えると唱えている歯科医師もいます」

美弥先生「赤ちゃんは吸うときに舌を使いますが、ストロー飲みをずっと続けていくと舌の前の方を使わないままになってしまい、うまく食べ物を取りこんだり、飲み込んだりができなくなります。さらに唇を閉じる力が弱いと、お口がずっと開いたままの状態になり、口呼吸の原因になることもあるので注意が必要です」

1歳半までは人間の基本的な動きの多くを習得する大事な時期だけに、歯だけでなく食べ方や口周りの筋力にも目を向ける必要があることがよくわかりました。

第2回は、1歳半~3歳までの歯の悩みについてお聞きします。

取材・文 有元えり

唐木隆史
からき たかし

日本小児歯科学会専門医、日本障害者歯科学会認定医。
鶴見大学歯学部卒業後、鶴見大学歯学部小児歯科学講座をはじめ都内・神奈川県の小児歯科、矯正歯科、大型医療法人などでさまざまな症例を経験。
2018年には、日本小児歯科学会で、小児歯科学雑誌優秀論文賞を受賞。
2020年7月に「等々力ぞうのはな小児・矯正歯科」の院長に就任。
専門的知識と技術をもとに、1人、1人の子どもの成長に合わせた丁寧な治療で、東京・城南エリアの地域医療に貢献する。

唐木美弥
からき みや

日本小児歯科学会専門医。鶴見大学歯学部卒業。
鶴見大学歯学部小児歯科学講座に入局する傍らで、昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座口腔衛生学部門にて研修。
都内の小児歯科・矯正歯科で研鑽を積んだ後、夫の隆史氏とともに0歳から通える「等々力ぞうのはな小児・矯正歯科」を開院。
NPO日本食育インストラクターの資格も持ち、食育にも精通。歯についてはもちろん、食事に関する相談にも親身に応じてくれる。一児の母。

この記事の画像をもっと見る(全4枚)
25 件
からき たかし

唐木 隆史

Takashi Karaki
歯科医

日本小児歯科学会専門医、日本障害者歯科学会認定医。 鶴見大学歯学部卒業後、鶴見大学歯学部小児歯科学講座をはじめ都内・神奈川県の小児歯科、矯正歯科、大型医療法人などでさまざまな症例を経験。2018年には、日本小児歯科学会で、小児歯科学雑誌優秀論文賞を受賞。 2020年7月に「等々力ぞうのはな小児・矯正歯科」の院長に就任。専門的知識と技術をもとに、1人、1人の子どもの成長に合わせた丁寧な治療で、東京・城南エリアの地域医療に貢献する。

日本小児歯科学会専門医、日本障害者歯科学会認定医。 鶴見大学歯学部卒業後、鶴見大学歯学部小児歯科学講座をはじめ都内・神奈川県の小児歯科、矯正歯科、大型医療法人などでさまざまな症例を経験。2018年には、日本小児歯科学会で、小児歯科学雑誌優秀論文賞を受賞。 2020年7月に「等々力ぞうのはな小児・矯正歯科」の院長に就任。専門的知識と技術をもとに、1人、1人の子どもの成長に合わせた丁寧な治療で、東京・城南エリアの地域医療に貢献する。