「大量絶滅」実は5回も起きていた…恐竜だけじゃなかった 専門家に聞く五大絶滅事変「ビッグファイブ」とは

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▲ディメトロドン 約2億8000万年前に生息していた大型の捕食者。恐竜ではなく哺乳類に近い仲間。
▲ディメトロドン 約2億8000万年前に生息していた大型の捕食者。恐竜ではなく哺乳類に近い仲間。
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矢部さん:3回目の絶滅は約2億5000万年前のベルム紀末、シベリアで起こった大規模火山活動に起因するもので、「史上最大の絶滅」と言われています。

この火山活動は規模が非常に大きく、富士山の1万倍ぐらいの規模の噴出物が生じ、その活動は100万年ほど続きました。

これだけひどいことが起こった結果、陸も海も多くの生き物が絶滅し、一方で恐竜や魚竜、哺乳類に繫がる生き物は生き残りました。ただしこの影響は大きく、絶滅事変後も500万年ほどは生き物が非常に乏しい環境が続いたようです。

【エピソード4】恐竜時代への大変革

▲レドンダサウルス ワニ類に似た大型の肉食性爬虫類
▲レドンダサウルス ワニ類に似た大型の肉食性爬虫類

矢部さん:3回目の絶滅後、生き残った爬虫類の仲間が台頭します。北アメリカ大陸に生息していた大型の肉食性爬虫類、レドンダサウルスがそのひとつの例です。

身体全体がワニ類に似ていて、全長は6mほどあったようです。レドンダサウルスとその仲間(フィトサウルス類)は大いに繁栄しましたが、約2億100万年前の三畳紀後期、超大陸パンゲア(※)の分裂を引き起こした火山活動が原因で4回目の大絶滅が起こります。

(※超大陸パンゲア:3億~2億年前ごろに存在した巨大な大陸。大陸地殻のほとんどが集まって超大陸を形成していた)

この4回目の大絶滅でレドンダサウルスとその仲間が絶滅。代わって生き物の中心になったのが、皆さんもよくご存じの恐竜です。

【エピソード5】小惑星の衝突

▲ティラノサウルス 白亜紀末期に北アメリカ大陸に生息していた大型の肉食性恐竜。
▲ティラノサウルス 白亜紀末期に北アメリカ大陸に生息していた大型の肉食性恐竜。

矢部さん:ジュラ紀、白亜紀にかけて繁栄した恐竜たちが滅びたのが、約6600万年前の白亜紀末に起きた5回目の大絶滅です。

これはよく知られているとおり、直径約10kmの小惑星の衝突によるもので、現在のメキシコ・ユカタン半島にそのクレーターが現存しています。この小惑星衝突により、中生代型生物が絶滅しました。そしてここから、哺乳類が変化していく新生代となります。

絶滅と進化は、非常に“近しい”

矢部さん:ビッグファイブを辿っていくとお気づきかと思いますが、「大絶滅」があっても全部の生命が地球上からいなくなるというわけではありません。わずかに生き残った者が、その後の世界で繁栄するという繰り返しなのです。

こう考えていくと、我々が今生きている世界というのは、このビッグファイブを経て生き残った者たちが作った世界であり、ビッグファイブが起こらなければ、今の世界もなかったということが言えると思います。

▲「ティエテア」の幹断面を手にした矢部さん
▲「ティエテア」の幹断面を手にした矢部さん

──「絶滅」と「進化」は、密接な関わりがあるのですね。

矢部さん:
生態系をピラミッドに例えると、より頂点に近いところにいる生き物のほうが、環境の変化を受けやすいと言われています。

生き残りには環境への適応力が関係していて、あるものは絶滅し、あるものは生き残る。絶滅した生物が占めていた空間(生態的な地位)がぽっかりと空くと、そこに入り込むものが出てくる。

新しい場所ができることで、進化の機会が生まれます。

ですから絶滅と進化は、非常に“近しい”現象だと言えるでしょう。「大量絶滅があるから、進化が促される」と考えることもできますね。

【特別展『大絶滅展』総合監修の矢部淳さん(国立科学博物館 生命史研究部 進化古生物研究グループ長)に、お話を伺う連載は前後編。今回の前編に続き、次回の後編では、展覧会の見どころや、現在起こっている絶滅についてお聞きします】

※後編記事は2025年10月31日より配信開始

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