ハイハイは発達に影響? 卒乳はいつ? 「1歳児の発達」を専門家が解説

【オンラインセミナーレポート】榊原洋一先生「1歳児の発達を知ろう」#3 | Q&A後編

小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一

Q10 習い事や早期教育はやらせたほうがよい?

英語や水泳、幼児教室などの早期教育や習い事は、成長によい影響をもたらしますか?

A10 成長に影響はないけれど、意義はある

1歳児の早期教育や習い事が、その後の成長に何かよい影響を与えるという確固たる科学的事実はありません。やってもやらなくても、あまり差が出ないと思います。IQが上がるということもありませんね。

だからと言ってそのお稽古事に意味がないかというと、そうとも限りません。親は子どもにとって人生を共に歩むパートナーです。親が音楽が好きだから子どもにピアノをやらせたい、スポーツファンだから子どもにサッカーをやらせたいと考えて、早くからその世界に触れさせてあげるのは、悪いことではないと思います。

親がよろこんでくれることをできたら子ども自身もうれしいし、お稽古事を通じて親子で楽しみを共有することは、文化的な価値の面でも意義は大きいと思います。

本日はあくまで1歳児に関しての話をしています。5歳児の場合は、お稽古事の選び方などもまったく変わってきます。親子で文化的価値を共有するために「やってみるのもあり」という話であって、子どもの特殊能力を伸ばすために意味があるということではありません。

Q9でもお話ししたように、1歳児の自由時間はわずかですから、習い事でスケジュールがパンパンになってしまうような忙しい毎日は、ストレスが大きくなってむしろ悪影響を与える恐れもあります。無理のない範囲で、親子の楽しみとしてチャレンジしてみるのは、いいと思います。

Q11 ハイハイは発達にとって大切なの?

ハイハイがその後の発達に大事なのでたくさんさせましょうと聞きます。ハイハイが発達にどのようにつながるのですか?

A11 ハイハイは必須の運動ではありません

ハイハイは赤ちゃんらしい、なんともかわいらしい運動ですよね。でも、医学的にはじつはあまり重要なものではありません。

ハイハイをまったくせずに歩きはじめる子どももいます。  写真:アフロ

冒頭でお見せした「デンバーの発達里程標」(#1を読む)には、「つかまり立ち」や「伝い歩き」などいろんな運動が書き込まれていますが、ハイハイはどこにも見当たりません。

その理由は、一定の割合でハイハイをまったくしない子がいるからなのです。それで何か異常があるかというと、何も問題はなく、普通に育っていきます。ハイハイは発達にとって必須のことではないのです。

一般的に、よくハイハイをすると背筋がどうのとか、歩き方がよくなるなんていう意見もありますが、科学的根拠は一切ありません。

南米やチベットには、赤ちゃんをタオルなどでぐるぐる巻きにして置いておく「スウォドリング」という習慣があります。1歳過ぎまで手足の自由が利かない状態で育つので、ハイハイをする機会すらありません。しかし、それでもちゃんと歩くようになるので、ハイハイが発達に必要なプロセスではないことがわかります。

私はハイハイをすることが悪いと言っているわけではありませんよ。でも、ハイハイが発達にとって大事という根拠のない意見には賛成できません。中にはハイハイが脳によい影響を与えると主張する人もいますが、耳を貸す必要はないと思います。

ちなみに、ハイハイにはいろんなパターンがあります。肘と膝をついてバタバタと進む方法だけでなく、ズリバイをする子もいれば、おしりをずらして移動する子もいます。このようなハイハイのパターンの違いにおいても、発達に差が出ないことがわかっています。

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