障がいのある兄弟姉妹を持つ【きょうだい児】 きょうだい児の弁護士が寂しさや苦しさを明かした
弁護士・藤木和子先生が教える“きょうだい児”の見守り方 #1 きょうだい児の悩み
2024.09.03
弁護士:藤木 和子
“きょうだい児”という言葉を知っていますか。
きょうだい児とは、障がいや重い病気など特別なケアが必要な兄弟姉妹がいる子どものこと。ひらがなで“きょうだい”と表現されることもあります。近年、メディアでも取り上げる機会が多くなりましたが、まだ十分に周知されていないのが現状です。
きょうだい児には「親が障がいのある兄弟姉妹の世話に追われて寂しい」など、障がい児本人とも親ともまた違った、周囲には見えづらい悩みや不安があるといいます。
障がい児ときょうだい児、どちらも幸せになるには、まず親や周りの大人たちが、きょうだい児の感じている思いを正しく理解することが必要なのかもしれません。
きょうだい児の当事者で、2024年3月、法律の視点からきょうだい児の疑問に回答した国内初の本『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと』を刊行した弁護士の藤木和子(ふじき・かずこ)先生に、きょうだい児の現状やきょうだい児が抱える悩み・不安について伺います。
藤木 和子(ふじき・かずこ)PROFILE
弁護士、手話通訳士。東京大学卒業。5歳のときに3歳下の弟の聴覚障害がわかり、“きょうだい児”に。きょうだい児当事者の弁護士として活動し、さまざまな情報発信や相談を行っている。2024年3月、きょうだい児の疑問に法律の視点で回答した書籍『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと』(中央法規出版)を上梓。
きょうだい児の困難は理解されにくい
障がいや重い病気のある子どもの“きょうだい児”。日本にはどれくらいのきょうだい児がいるのか、正確な数字は把握されていませんが、「令和5年版障害者白書」(※1)によると、日本にいる障がい者の総数は約1160万人。その人たちに兄弟姉妹がいることを考えれば、日本には多くのきょうだい児がいると想像できます。
ケアが必要な兄弟姉妹と一緒に育つきょうだい児は「障がいに理解がある」「やさしい」などのイメージを持たれがちですが、実際は幼いうちから特有の悩みや不安を抱えているものの、周囲に理解されていないケースが少なくないといいます。
5歳のときに3歳下の弟の聴覚障害が発覚し、きょうだい児として育った弁護士の藤木和子先生はきょうだい児の現状をどう考えるのでしょうか。
──今まできょうだい児の存在が広く周知されず、悩みや不安が理解されにくかったのは、どのような背景があるのでしょうか。