「うちの子どもは壁の外」障害児のママがキッズモデル事務所を開いたワケ

障害児キッズモデル事務所「華ひらく」代表 内木美樹さんインタビュー#1 ~起業のきっかけ~

障害児キッズモデル事務所「華ひらく」代表 :内木 美樹

8~10月(2022年)に関東のショッピングモールで写真コンテストを開催。コンテスト用の撮影の様子。  写真提供:華ひらく

息子は息子らしく生きればいい 親子を解き放った入学式

保育園を卒園した尊くんは、特別支援学校へ進みます。ところが2020年のコロナ休校で入学式は延期に。

やっと迎えた入学式が開かれたのは6月。体育館は蒸し暑く、校長先生の話の途中で尊くんはゴロンと横になりました。

「あ、どうしよう。こんなことさせていたら、ダメな親だと思われるかも」

いつもの不安と焦りがよぎった瞬間、担任の先生がそっと尊くんに近づき、やさしく背中をトントンしました。

「疲れちゃうよね。ちょっとお外行こうか」

尊くんは、尊くんらしくいればいい。そう気づかされたシーンだったと内木さんは言います。

「『そっか、こういう場所なんだ!』と気づいたんです。尊が尊として生きることを、尊重されている初めての場。

ここなら大丈夫、と思える場所と出会えたことで、私自身、呪縛から解放された感覚になりました」

入り口は障害を理解してもらいたくて始めたYouTube

同じころ、内木さんは尊くんとYouTubeを始めました。これがキッズモデル事業へとつながる第一歩でした。

「障害のある子のありのままの日常を伝えたい。マイナスだけじゃなく、プラスなこともあるんだってことを伝えたくて、YouTubeを始めました。障害があっても生きやすい世の中になるきっかけになればいいなと思って。

尊はYouTubeのことを理解していないですが、夫は賛成も反対もしませんでした」

順調に再生回数を伸ばしていったYouTube。ところが始めてから1年経ち、内木さんは現状と理想の違いを感じるようになりました。同じ境遇の人たちだけで盛り上がっていたからです。

「障害児の関係者同士、リングの中だけで盛り上がっている状態でした。世の中を変えたいなら、リングの外にいる人にもっと興味を持ってもらわないと! って思ったんです」

そこで浮かんだアイデアが、障害児のキッズモデル事業でした。

◆◆◆◆◆
特別支援学校で解放された心、そして親子で始めたYouTubeがモデル事業へとつながります。次回は、障害児キッズモデル事業で感じた企業の壁についてお届けします。

内木美樹(うちき みき)
2021年に障害のあるキッズモデルのマネージメントを開始。障害者と健常者の間にある「ガラスの壁」を低くして、障害があっても堂々と生きられる社会を目指している。2児の母。長男に自閉症と重度の知的障害あり。

取材・文/大楽眞衣子

障害者キッズモデルたちが参加した「写真コンテスト」
子どもたちの活躍が見られます! 

「華ひらく」では、現在(2022年8月)、クラウドファンディングでカメラマンや審査員を募集した写真コンテストを下記ショッピングモールで開催しています。
詳細はインスタグラム「colorfulkidmodels」にて告知。

●8/13~8/17 ニューコースト新浦安(千葉県浦安市)
●8/27〜8/28 アリオ上尾(埼玉県上尾市)
●9/6~9/11 新宿マルイ アネックス(東京都新宿区)
●9/16~9/25 イオンモール東久留米(東京都東久留米市)
●10/1~10/10 イオンモール日の出(東京都西多摩郡日の出町)
●10/22〜10/30 アトレ川崎(神奈川県川崎市)

17 件
うちき みき

内木 美樹

障害児キッズモデル事務所「華ひらく」代表

障害児キッズモデル事務所「華ひらく」代表。Truckee Meadows Community College(米国)卒。 卒業後、ネバダ州にある国際カジノホテルにウエイトレスとして勤務。日本人が1人もいない環境の中、マネージャーから「No.1ウエイトレス」と称される。 帰国後、2010年に(株)華ひらくを設立。日本で唯一の飲食店に特化した接客英会話レッスンを展開していたが、新型コロナウイルスの影響で経営難に陥る。2021年に同社の新事業として、障害のあるキッズモデルのマネージメントを開始。障害者と健常者の間にある「ガラスの壁」を低くして、障害があっても堂々と生きられる社会を目指している。 2児(長男2013年生まれ・次男2016年生まれ)の母。長男に自閉症と重度の知的障害あり。 オフィシャルHP  華ひらく  Instagram colorfulkidmodels 

障害児キッズモデル事務所「華ひらく」代表。Truckee Meadows Community College(米国)卒。 卒業後、ネバダ州にある国際カジノホテルにウエイトレスとして勤務。日本人が1人もいない環境の中、マネージャーから「No.1ウエイトレス」と称される。 帰国後、2010年に(株)華ひらくを設立。日本で唯一の飲食店に特化した接客英会話レッスンを展開していたが、新型コロナウイルスの影響で経営難に陥る。2021年に同社の新事業として、障害のあるキッズモデルのマネージメントを開始。障害者と健常者の間にある「ガラスの壁」を低くして、障害があっても堂々と生きられる社会を目指している。 2児(長男2013年生まれ・次男2016年生まれ)の母。長男に自閉症と重度の知的障害あり。 オフィシャルHP  華ひらく  Instagram colorfulkidmodels 

だいらく まいこ

大楽 眞衣子

社会派子育てライター

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」