親がしてはいけないNG対応とは?
次に、子どもの「読解力」を伸ばすために、親がすべきでない対応を紹介しましょう。
まず、親は子どもに正解を押し付けないようにしてください。「読解力」を身につける練習をするうえで、子どもは間違う場合もあります。間違っていたとしても、「これが正解だよ」と真正面から否定しないこと。「主人公は『うなだれた』って書いてあるから、悲しい気持ちなんじゃないかな? 辞書を一緒に引いてみようか」などと、子どものやる気をそがないよう、上手に接しましょう。
また、「これやりなさい」「ここはこうしなさい」など、命令するのもNG。親が行動の指示をすると、子どもは自身で考えなくなり、やがては、意思を示さなくなります。子ども自身が考える余地を残しながら、取り組むようにしてくださいね。
「読解力」を身につけると考える力が育つ
「読解力」を身につける過程で、自主性や探究心など、様々な力も身についていきます。ここでは、実際に私たちの塾で、「読解力」を身につける練習をした子がどのように変化したのかを紹介します。
以前、当塾に通っていた小学生の男の子のケースでは、家族の話をするなかで「お父さんの仕事が好き」と言っていました。その子のお父さんは、消防士をしていたのですが、「なぜ好きなの?」と聞いても、最初ははっきりと説明できませんでした。
具体的にどのような点が好きなのかがわからないうえに、語彙力も追いついていなかったので、理由をしっかりと伝えられなかったんですね。しかし、「読解力」を身につける練習を重ねていくうち、少しずつ自分の感情を細やかにとらえられるようになってきたのです。
そしてある日、「火事現場にも勇敢に立ち向かい、困っている人のことを助ける姿がかっこよくて、尊敬しているから、お父さんの仕事が好きなんだ」と、自身の深いところにある気持ちに気がつき、細やかに表現できるようになりました。
また、「読解力」を身につけた子は、おおむね成績が上がる傾向にあります。たとえば、当塾に通う子たちの、中学受験での第一志望合格率は90%以上。平均は、25%といわれていますから、平均の約3.5倍です。成績だけではなく、小学2年生で発明工夫展や美術展に入賞した子や、小学4年生で英検2級に合格した子など、その子自身の得意分野、つまり個性が伸びることもあります。
見通しのつかない時代に必要な「読解力」
現代は、世の中が目まぐるしく変わっています。さらにAIが進化していくにつれ、10年後はまったく違う環境になっているでしょう。
予測不可能な時代といえる今、これまで当たり前とされてきたことが役に立たなくなっていきます。詰め込み型で知識を蓄え、良い点を取れるだけでは、すぐにAIに取って代わられるでしょう。これからはますます、探究心を持った付加価値の高い人材が社会で求められていきます。
そのためにも、自分の考えを適切な言葉を用いて(=語彙力)、わかりやすくまとめて伝える力(=要約力)を備えた「読解力」を身につけることが大切です。子どもが大人になる10年後を見据え、ゆっくりじっくりと、子どもの成長に向き合っていきましょう。
取材・文:阿部雅美
福島 万莉瑛
慶應義塾大学文学部人文科学科を卒業後、オレゴン大学教育学部にて、小学生向けの教育学や課題解決型学習について専門的に学ぶ。現在は、株式会社らくとの英語コンテンツ制作、カリキュラム開発に携わる。著書に『AI時代の小学生が身につけておきたい一生モノの「読解力」』(実務教育出版)がある。
慶應義塾大学文学部人文科学科を卒業後、オレゴン大学教育学部にて、小学生向けの教育学や課題解決型学習について専門的に学ぶ。現在は、株式会社らくとの英語コンテンツ制作、カリキュラム開発に携わる。著書に『AI時代の小学生が身につけておきたい一生モノの「読解力」』(実務教育出版)がある。
福島 美智子
20年以上、脳科学・心理学をベースにした児童向け教材開発に携わる。ディスカッション(D)、マッピング(M)、速読(S)、高速リスニング(K)といった、オリジナルの教育メソッドDMSK法を開発。独自のカリキュラムにより、第一志望合格率90%以上、難関校へも多くの合格者を輩出している。著書に『最強の子育て』(すばる舎)、『AI時代の小学生が身につけておきたい一生モノの「読解力」』(実務教育出版)がある。
20年以上、脳科学・心理学をベースにした児童向け教材開発に携わる。ディスカッション(D)、マッピング(M)、速読(S)、高速リスニング(K)といった、オリジナルの教育メソッドDMSK法を開発。独自のカリキュラムにより、第一志望合格率90%以上、難関校へも多くの合格者を輩出している。著書に『最強の子育て』(すばる舎)、『AI時代の小学生が身につけておきたい一生モノの「読解力」』(実務教育出版)がある。