部屋の広さより刺激‼ 脳科学者が明かす、「子どもの脳」を伸ばす住環境

脳科学者・細田千尋先生に聞く「子どもの脳」が伸びる家庭環境の整え方 #1 「子どもの脳」が家でのびのび成長する環境はどう作る?

医学博士・認知科学者・脳科学者:細田 千尋

家の本棚にたくさん本が並んでいれば子どもの脳の発達によいのか?

これまで、子育てに適した環境の整え方についてお話してきました。

最初に紹介しました、「脳の刺激になるようなものを、子どもの周りに配置する」ということにも関連することですが、子育て中のママパパなら一度は耳にしたことがある、「家の中に本がたくさんあると頭の良い子に育つ」。これについても脳科学的に説明したいと思います。

海外では、「芸術に触れさせる機会が多い」、「本に触れさせる機会が多い」ほうが、子どもの認知能力の発達に効果的である、と発表している研究者がいます。しかし一方で、全く逆のことを言っている研究者もいます。総合すると「どちらとも言えない」というのが、現在の科学では妥当なところでしょうか。

「本棚に並んでいる本の数よりも、そこに興味を持たせ、アクセスさせるかのほうが重要です」(細田先生)  撮影:森﨑一寿美

そしてここからは、検証されているわけではありませんが、おそらくという前提でお話しします。

例えば、AEDや消火栓についてですが、これらの設備には必ずルールがあって、街中や施設内の決まったところに設置されています。必ず身近な場所にあるはずですが、「あなたの職場や生活圏で一番近くにあるのはどこですか?」と聞かれたら、すぐに答えられるでしょうか?

人間は注意を向けないと存在にすら気が付かないことがあるのです。「毎日見ているもの」のはずでも、それに意識を向けていない限り、あってもないのと同然です。

だから結局、そこに本が並べられていても、自分の意識が向かっていなければ、それは単なる壁紙や家具と一緒なのです。

ですので、本をよく読む子に育てたいのであれば、本棚に並んでいる本の数よりも、そこに興味を持たせ、どうやってアクセスさせるかのほうが重要です。そして子どもがアクセスする最初のきっかけとなるのは、「親の行動」です。

親が本へどうやってアクセスしているか。親が本を使っている姿をどれだけ子どもが見ているか、という点が重要なのです。

特に小さい子どもは、訳も分からず親の真似をすることがありませんか? それが最初のきっかけとなり、本を読んで面白かったら自分で興味を持って読み始めるようになるでしょう。

子どもが最初から一人で本を見つけて読むことに到達できなければ、親が態度で見せて、きっかけを作ってあげること。一緒に選んで一緒に読む、ということを続け、そのうち自分でもできるようになるところまで持っていってあげることが親の役目なのです。

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住空間や家の周囲の環境など、ハード面を整えてあげるとともに、親の働きかけが子ども脳の発達には重要になってくると言えますね。

第2回は、子どもの発達を促す親の働きかけや、関わり方についてお話しいただきます。

取材・文/山田祥子

※脳科学者・細田千尋先生に聞く「家庭環境の整え方」は全3回。第2回は22年10月21日、第3回は10月22日公開予定です(公開日までリンク無効)
2回目 親必見! 「子どもの脳」を伸ばすシンプルで効果的な声かけ方法
3回目 コロナ禍で子どもの認知能力が低下? 脳科学的な家庭環境づくりとは?

細田千尋(ほそだ・ちひろ)
東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院 情報科学研究科准教授。内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。
内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。

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ほそだ ちひろ

細田 千尋

医学博士・認知科学者・脳科学者

東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院情報科学研究科准教授。 内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。 内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。 脳科学から子どもの非認知能力を育てる研究の親子モニター募集 https://gritbrain.wixsite.com/experiment2022-04 東北大学加齢医学研究所 https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/ 細田千尋研究室㏋​ https://neurocog.is.tohoku.ac.jp/

東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院情報科学研究科准教授。 内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。 内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。 脳科学から子どもの非認知能力を育てる研究の親子モニター募集 https://gritbrain.wixsite.com/experiment2022-04 東北大学加齢医学研究所 https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/ 細田千尋研究室㏋​ https://neurocog.is.tohoku.ac.jp/