7割が“アウェイ子育て”! 頼る人がいないママを救う“子育てひろば”とは?

NPO法人せたがや子育てネット代表理事 松田妙子氏に聞く「子育てひろば活用術」#1 ~入門編~

NPO法人せたがや子育てネット代表理事:松田 妙子

ベランダでみんなで水遊び♪  写真提供:NPO法人せたがや子育てネット

ネットではわからない気づきもある

また、子育ての悩みを自分ですべて解決しようとする保護者の多さに松田さんは不安をいだいているとも続けます。

「最近、わからないことは何でも自分で調べなくちゃと思う保護者さんが多いんですよ。今の時代はネットで検索すれば、ある程度、答えを見つけることはできるかもしれません。

でも、育児に関していえば、わからないことは人に聞いてみたほうが良いことも多いと思うんです。

とくに初めての子育ての場合は、悩みにぶつかることはしょっちゅうだし、ましてや『自分で何がわかってないのかすら、わからない』という保護者さんも多いんですよ」

自分ですらわからないことは、調べようもありません。でも、ひろばで同じようにリアルタイムで育児をしている人たちと出会えると答えが見えてくることがあると言います。

「ガチで悩み相談をしなくたって、何気ない会話をしていたりするだけでも『ああ、こういうことがあるんだ』『私は、ここが違っていたんだ』『あの人のやり方がいいな』と、ふと気づけることも多いんですよね。

こういうことって、昔はご近所で当たり前に行われてきたことかもしれないけれど、アウェイ育児の現代では少し難しいことだったりもします。

だからこそ、ぜひひろばという場所をつかって、そんなふうに、『なんでも自分でやらなくちゃ! 調べなくちゃ! 解決しなくちゃ!』ということから、自分を少し解放してあげてほしいんです」

自治体などの育児支援プログラムや制度の情報がずらり。  写真:関口千鶴

ひろばは保護者のための場でもある

ひろばは、自分と同じように育児をし、悩んだり喜んだりしている人たちとリアルで対面できる場所。だからこそ「自分のためにも足を踏み入れて」と松田さん。

「以前、利用者さんに『ひろばを利用してよかったこと』というアンケートをとったことがあって、その結果『子どもの遊び場ができた』『子どもの友だちができた』など、子どもに関することが1位から4位を占めたんですね。

そして、5位にようやく『なんでもない日常会話ができた』という保護者さん自身のことがあがったんです。それを見たときに、なんてみんなつつましくて、真面目に子育てしているのだろうと感心しましたが、同時に少し心配にもなりました。

子どもを守り、幸せに豊かに育つことを願うのは当たり前のことです。でも、保護者さんだって、幸せに豊かに暮らせるように守られるべきなんです。

そうでないと、子どもを豊かに育てる環境を作ることが難しくなってしまう。

だからこそ、ひろばでなんでもない日常会話をしてほしいし、リスク管理ばかりの日常から少しだけ心を解放してほしいんです。ひろばには、それができるような環境があるんですよね」

子どものための施設というイメージが強いひろばですが、松田さんは「保護者さんのための施設でもある!」と力強く語ります。

でも実際、初めての場所に足を踏み入れるには、つい躊躇(ちゅうちょ)してしまう人も多いはず。次回は、そんな人のために松田さんに「はじめてのひろばガイド」を語っていただきます。

取材・文/関口千鶴

※1=地域子育て支援拠点事業に関するアンケート調査2015
※2=各地のひろば・会員ネットワーク

16 件
まつだ たえこ

松田 妙子

Taeko Matsuda
NPO法人せたがや子育てネット代表理事

NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事。1998年、自身の子育て中に赤ちゃんサロンを開催したのをきっかけに、2004年にNPO法人「せたがや子育てネット」を設立。 以後世田谷区を中心に子育て支援活動を行い、その活動は全国に及び、現在は、子育てひろばの全国組織「NPO法人子育てひろば全国連絡協議会」の理事も務める。せたがや子育てネットが主宰する「ぶりっじ@roka」は、子育てひろばのモデルケースとして全国から多くの視察者が訪れている。 ●NPO法人せたがや子育てネット

NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事。1998年、自身の子育て中に赤ちゃんサロンを開催したのをきっかけに、2004年にNPO法人「せたがや子育てネット」を設立。 以後世田谷区を中心に子育て支援活動を行い、その活動は全国に及び、現在は、子育てひろばの全国組織「NPO法人子育てひろば全国連絡協議会」の理事も務める。せたがや子育てネットが主宰する「ぶりっじ@roka」は、子育てひろばのモデルケースとして全国から多くの視察者が訪れている。 ●NPO法人せたがや子育てネット

せきぐち ちづる

関口 千鶴

Sekiguchi Chizuru
編集者・ライター

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon