味覚の基礎をつくる時期といわれる幼少期。多様な味を経験し、味のストックを増やしていくことが、繊細な味覚をつくるコツだと、とけいじ千絵先生は言います。
離乳期が終わり、食べられるものが増える幼児期は、外食や昼食なども楽しめるようになります。豊かな食経験ができる一方、気をつけるべき点も増えるようです。第3回では、1歳半〜6歳頃の幼児期における食事づくりのポイントを具体的に紹介していきます。(全4回の3回目。#1、#2を読む)
自我の芽生えで好き嫌いが始まる?
離乳食から幼児食に切り替わる1歳半〜2歳頃は、子どもの味覚にも変化が出てきます。離乳期は、どんな味でも受け入れてくれる時期でしたが、幼児期になると、五味をしっかりと区別できるようになり、味の好みが生まれます。
好き嫌いは2歳頃から出始め、4歳頃にピークに。その後は、「嫌いでも食べてみる」といった気持ちも出てきて、嫌いな食べ物も少しずつ食べてくれるようになります。
また、幼児期は、自我が少しずつ芽生えていくため、気分によって食べたり食べなかったりする「ムラ食い」も多くなる時期です。そのほかにも、「白いものは食べたくない」「柔らかい食感のものは嫌だ」など、特定の色や食感に敏感になることも。
自我の芽生えは成長の証ではありますが、幼児期は親にとっては少々大変な時期かもしれません。
幼児期に気をつけたい食事づくりのコツ3つ
幼児期は好き嫌いが生まれてくることに加え、環境的にも外食が増える時期でもあるので、気をつけるべきポイントが幅広くなります。幼児期の食事づくりのポイントを3つ紹介しましょう。
1:いろいろな味を経験させる
離乳期と同様に、たくさんの味の経験をさせてあげることが大切です。
離乳期の食事のポイントは、「いろいろな“食材”を経験すること」でしたが、幼児期は、「いろいろな“味”を経験すること」。離乳期に比べて、食べられるものが増えるので、「甘味」「塩味」「苦味」「酸味」「うま味」の五味を意識して食事を作ってあげましょう。
たとえば、肉じゃがで「甘味」「塩味」、お魚の南蛮漬けで「酸味」、出汁の「うま味」がきいたお味噌汁、ほうれん草のお浸しで「苦味」など、一度の食事で、五味をカバーできるとベストです。さまざまな味を食べられると、満腹感も得られるので、食べ過ぎも防げます。食事をつくるのが負担になるようであれば、市販のお惣菜などを活用してもいいでしょう。
ただし、市販のお惣菜を使うときには注意も必要です。詳しくは3番目のポイントとして解説しています。
2:好きなものばかり与えない
好き嫌いが生まれてくる幼児期。親は、嫌いな食べ物は食べてくれないので、好きなものばかり与えてしまいがちですが、それはNG。この時期の好き嫌いは移ろいやすく、2歳の頃には嫌いだったものが、4歳になったら食べられるようになることもあります。
また、食べたことのないものに対する「新奇恐怖」が原因の場合も多いです。食べてくれないからといって出さないようにするのではなく、継続して食卓に出すことで、やがて食べてくれるようになります。
嫌いなものを食卓からなくさないことが大切です。離乳期同様、全部食べなくてもいいので、ひと口だけ食べてもらうのでも構いません。その味に触れる経験を、親が奪わないようにしましょう。
3:外食や中食を楽しみつつも「薄味」を特に意識する
幼児期は、子どもと外食に行けるようになります。また、買ってきたお惣菜を自宅で食べる中食を楽しむ方もいるでしょう。外食や中食は、悪いものではなく、むしろ新しい味に出会えるので、豊かな食経験を積める良い機会でもあります。そのため、私は積極的におすすめしています。
ただし、味付けが濃い点には注意しておきたいもの。幼児に適した塩分濃度は、0.6〜0.7%ですが、外食や中食は、わかりやすい味付けをしているため、塩分濃度が1.1〜1.3%と高め。そのため、すこし手を加えて、薄味にするようにしましょう。
中食には、材料に混ぜ合わせて調味する食材「和え衣」を使うことをおすすめします。たとえば、ポテトサラダにヨーグルトをすこし混ぜたり、野菜炒めに大根おろしを混ぜてみたりするのでOKです。
外食の場合は、できればお店の方に、「油や塩を控えめにつくってください」「薬味は別のお皿に盛り付けていただけますか」などとお願いできるといいですね。難しい場合は、スープ類には水を足したり、味付けが濃いキッズメニューではなく大人向けのメニューを選んだりするようにしましょう。