2日で9時間 「探究学舎」のリアル講座で「元素にハマる子」続出! 子どもが前のめりになる「仕掛け」をスゴ腕講師が明かす
【今こそ学力観のアップデートをするとき】好奇心の種をまく探究学舎の学び#3 探究スペシャル・参加ルポ
2024.07.03
「チャレンジ」に子どもたちが熱中!
ここまで紹介したのは、探究スペシャル「元素編」の最初の1コマの概要です。
空気は元素ではなく、窒素と酸素、二酸化炭素、水素などが含まれる。こう説明してしまえば5分もかからずに終わる内容を、「元素とは何か」という投げかけから始まり、歴史的な経緯を経て、空気が元素かどうかを実際に実験して確かめます。
問いをきっかけに子どもたちが実験やゲーム、「チャレンジ」と呼ばれるお題に取り組み、自分の目で見て、体を動かし学んでいくスタイルは、2日間の講座を通して徹底されています。
そのため、30種類の元素からなる「元素かるた」への挑戦、元素の発見に用いられたボルタ電池作り、ブロックを使った分子の構造の再現などが用意され、子どもたちは次々と繰り出されるチャレンジに、喜んだり悩んだりしながら取り組んでいきます。
2日目に登場する元素周期表の学びでさえも、「表を示して解説する」という一般的なアプローチは取られません。
子どもたちは元素カードを手渡され、周期表を作った「メンデレーエフ」という人物がどのように元素を並べたのかを、自分たちで再現するチャレンジに挑みます。
カードには、ヒントとなる色別の番号(元素の重さや価数など)が振ってあり、これらの数字やこれまで学んできた情報を手掛かりに、カードを並べていきます。「こうじゃない?」「違う、ここはこっちだ」などとグループで相談しながら、時には大人のフォローを受けながら、試行錯誤を繰り返して周期表を完成させていくのです。
自ら考え、手を動かして発見する。こうしたプロセスを経ることで、子どもたちは周期表がなぜ現在の並びになっているのか、深く納得していきます。そして、「元素っておもしろい」とさらに興味を深めていくのです。
ストーリーが「知りたい!」を加速する
探究学舎の授業には、淡々と事実を説明するパートがほとんどありません。実験やチャレンジの前提、振り返り部分は講師の話が中心となりますが、そこには常に「ストーリー」があります。
例えば、前述した周期表を再現するチャレンジには、実は事前説明がありました。周期表を作った「ドミトリー・メンデレーエフ」の物語です。
メンデレーエフの貧しい生い立ちに始まり、寝ずに必死で元素の規則性を考え続けたこと、その結果、夢で見たとおりに元素を並べて周期表が完成したこと、大発見をしたにもかかわらずノーベル賞受賞を逃したことなど、詳細にその内容が語られます。
実験やチャレンジの最中は大騒ぎしながら取り組んでいた子どもたちも、ストーリー部分になるとグッと集中します。時には拍手を送り、時には落胆の声を上げながら、感情移入していきます。
そして、「メンデレーエフが寝ないで発見した元素の順番を自分も発見したい」とチャレンジへの意欲が上がり、終了後も「これを一人で発見したメンデレーエフってすごいな!」と感動します。
自ら行う実験やチャレンジ、そしてストーリー、この二つが絶妙に組み合わさることで、子どもたちの好奇心が刺激され、「もっと知りたい」という意欲が高まっていきます。